橋詩(3)

「橋詩」

橋詩(きょうし)の世界は三行詩
五や七 単位のブロックで
色んなものを橋渡し


<橋詩 南陽彰悟 ('02年10月18日から)>
 
 
 
 
「十月ヒバリ」
 
一面雲の十月ヒバリ
歌い続けてもう半年も
声の若さは春のもの
 
 
「そのうち無くなるグラウンド」
 
マラソンゴールも覚えてる
騎馬戦 綱引き 盆踊り
今は出来たよマンホール
 
 
「日光霧降高原」
 
屋上ホテルの露天風呂
高原の霧雨煙り紅葉隠れ
温(ぬる)めの温泉長湯が嬉(うれ)しく
 
 
「東照宮」
 
雨降りにぎわう修学旅行
陽明門 昇り竜 眠り猫
変わった物はひょうし木だけの鳴き竜の
 
 
「朝夕バイキング」
 
和食中華に洋食もたっぷり食べた牛肉を
二回も続いたバイキング
後々かなり苦しくて
 
 
「鴨(かも)」
 
餌(えさ)のパンくず播(ま)く人に
アヒルに紛(まぎ)れて鴨さわぐ
冬鳥来たかと秋の深まり
 
 
「祭りの便(たよ)り」
 
母から届く祭りの便り
子供の頃の行列を
電話で語って気分は祭り
 
 
「体芸棟」
 
まだまだ開学する前に
走ってみたよアンツーカー
今もそのまま若い人
 
テニスの試合の七面コート
雨上がりには
人影無くて
 
体育館もそのままの
水銀灯の光の中に
響くボールと身のこなし
 
お客さん来たときは
いつもいっしょに案内してた
二十数年いつの間に
 
 
「散歩」
 
朝の散歩の空気が教え
昼の散歩の木陰の空気
秋の静けさ体に染(し)み込(こ)む
 
 
「紅葉の始まりは」
 
楓(かえで)の赤みはまとまって
緑の葉っぱの塊(かたまり)と
境界くっきり同じ幹(みき)でも
 
 
「スピード」
 
寒風吹けば
知らず知らずに
スピード上がり
 
 
「夜空の雲」
 
十月末日ひんやりと
夜空の雲は赤み帯び
暖かそうな雲世界
 
 
「晩秋の農林技術センター」
 
背高い乳牛こちらを見つめ
裏返された落花生サツマの葉っぱは霜黒く筑波はくっきりロープウェイの
 
 
「十六度」
 
散歩のスピード気づかず上がり
橙(だいだい)色のストーブを
初めて点(つ)けた十六度
 
 
「今の林は」
 
今の林は様(さま)変わり
黄色に赤にしだいに移り
地面はかさこそ転がる落ち葉
 
 
「子供の絵」
 
良い歯(11ー8)の記念日展覧会は
子供の発想 束縛無くて
大人の絵よりも浮き出て見える
 
 
「インターネットカフェ」
 
薄いコーラで薄暗く
MO(エムオー)もフロッピーも使えます
教えてくれる女店員
 
 
「蚕影山(こかげさん)神社」
 
蚕(かいこ)が時代に忘れられ
長い石段そのままに旅籠は店を閉めたまま
最後の額(がく)は昭和時代の五十三年
 
 
「家光が造った道(日本の道百選)」
 
筑波神社をまっすぐ目指す
まっすぐまっすぐ急斜面
道沿い民家は北風止まる
 
一の鳥居は老婆が二人
すっぽり収める女体山
深い石碑(ひ)は江戸時代
 
広い農地はここには無くて
閉めた酒屋があるばかり
見下ろす景色は三井ビル
 
脇道入(は)れば細い道
月水石神社
筑波山から沢水流れ回しを着けた巨石あり
 
歌にも詠まれた男女川(みなのがわ)
これは地酒で御神酒で
造り酒屋のギャラリーを
 
地元の人に話しかけられ
君話し私も尋ね
三人歩く神郡(かんごおり)
 
振り返り見上げる筑波は
秋模様
遠く眺める奥日光の
 
 
「取り壊(こわ)される野球場」
 
バックネットも壊された
周りのフェンスも取り外(はず)されて
三十年の思い出だけが
 
 
「メタセコイアも」
 
十一月の中旬は
他(ほか)の紅葉追いかけながら
メタセコイアもほんのり色づく
 
 
「銀杏(いちょう)の木」
 
色づいて
初めて気づいた
公園の
 
 
「鴨(かも)」
 
水面に降たつ鴨は
水を飛ばして二メートル
すぐに平静ぽつんと浮かぶ
 
 
「インドの娘さん」
 
紅葉盛りの公園通り
シャッター頼まれジーンズ娘
珍しかろう色変わり
 
 
「柿の実」
 
鈴なり色づく柿を見て
渋柿甘柿どちらかと
思いをはせる秋空は
 
 
「若森県庁跡」
 
田圃(たんぼ)を見下ろす丘の上
土塁(どるい)だけ当時を語り
桜並木の坂道下り君島橋へと続く道
 
 
「夕暮れの薬王院」
 
古びた石段夕暮れの
まだまだ紅葉見えていて
重みを増しての三重の塔
 
 
「ステンレス鍋」
 
ディスカウントには置いて無く
フタ付きの14センチの片手鍋
18センチの両手鍋置いてある店少なくて
 
 
「落ち葉の上を」
 
風の無いシンとした朝
静かな落ち葉を歩いて見つめ
色とりどりのひっそり音を
 
 
「銀杏(いちょう)と紅葉(もみじ)」
 
それぞれ落ち葉が敷き詰められた
銀杏は華(はな)やか
紅葉は地味な
 
 
「寒さは」
 
昨日の夕暮れ寒風(さむかぜ)が
木や草や人まで慣らして
軍進め
 
 
「秋の山道」
 
汗は出ないが息切らし
小さな沢に巨岩あり
たまに出会えるイチョウと楓(かえで)
 
 
「筑波蜜柑(みかん)」
 
万葉の古いときから
山肌飾る
筑波の蜜柑は小さく黄色
 
 
「小さなコンクリート社(やしろ)」
 
舗装道路の林道に
小さな社が置いてある
置いた人 気持を色々巡(めぐ)らして
 
 
「加波山(かばさん)」
 
山伏(やまぶし)の山 加波山は
近くに何度も行ったけど
なかなか登れぬ信仰の山
 
西の中腹 石切場
花崗岩(かこうがん)見事さのため
昔の道は途絶えがち
 
今は人気の尾根沿いの道
筑波山から続く道
キノコ山 足尾山
 
途中は若者群がるところ
パラグライダー ハンググライダー
飛び立つ基地が東西に
 
以前も来たよ一本杉峠(とうげ)
杉はどこかと見渡せど
立派な地名は石造り
 
明治のはじめの加波山事件
自由民権ふさわしい
大きな記念碑石造り
 
加波山神社は新築されて
だーれもいない石段は
ユースホステル社務所も兼ねる
 
鳴らした鐘(かね)は
二つとも
山びこ作らず吸い込まれ
 
 
「虚無僧(こむそう)と山伏(やまぶし)」
 
かすかに見たことあるけれど
どんなものかは分からずじまい
インターネットで検索かけて
 
 
「夕焼けの下で」
 
夕焼けの下 ショベルカー
三台黙々掘り返す 姿を消した野球場
黒土にみんなの汗は見えないけれど
 
 
「今日は」
 
風はなく
曇り空
今日は君との山登り
 
 
「ユースホステル跡 登山口」
 
建物消えて駐車場
三つのベンチは花崗岩(かこうがん)
もっとも短距離 筑波山
 
下山の数組 挨拶(あいさつ)交わし
枝だけ林は木漏(こも)れ日の
ステッキが落ち葉も運ぶ登山道
 
風もなく静かそのもの
足音だけが 時々とまって見渡せど
下界は見えず山懐(やまふところ)に
 
丸太半分休憩(けい)の
置いた場所
息切れしたとこぴったりと
 
御幸(みゆき)ヶ原に近くなり
溶けてぬれてる霜柱
中高年が多い道
 
双峰の片方の峰 男体山が
間近に見えて昇り出す
今までと違って多い岩の道
 
戦前からの測候所
今は無人の通信所
山頂社(やしろ)は関東平野を見渡せて
 
甘酒はゆっくり回る展望台で
屋上は裏も表も見渡せて
寒さ感じぬ十一月末
 
出発点に戻ってみれば
他(ほか)の車はもう帰途に
魔法瓶お湯より冷水欲しくなり
 
夕方に登ってきたよ一台が
アベック車輪を持ち出して
組み立て始めたマウンテンバイク
 
車で下る林道を
気が付けば
先ほどの自転車ぴったり付いてきた
 
登山の後のアクセルは
ほのかな疲れの
夕暮れの道
 
 
「登山の後」
 
足と手と
違和感残るは
登山の印(しるし)
 
 
「手術」
 
手術を受ける身にとって
若い女医さん
その手頼もしく
 
 
「葉が落ちて」
 
葉が落ちて
梢(こずえ)も高い
シジュウカラ
 
 
「楓(かえで)の」
 
楓の葉っぱが三枚落ちた
続けてひらひら
十二月
 
 
「キジバト数羽」
 
朝の舗装(ほそう)の駐車場
キジバト数羽の餌(えさ)探し
幸せそこから輪を描く
 
 
「閑居山 百体仏」
 
冬の雨でも大粒の
ここから歩きの所まで
今度仏に会える日を
 
 
「妙向寺」
 
小ぎれい目立って列車から
行く道なかなか分からずに
植木も選定さっぱりお参り
 
 
「雪の芝生(しばふ)」
 
雪の芝生は池辺(いけほとり)
鴨(かも)は腹付けうずくまる
枝飛び移るジジュウカラ
 
 
「白になり」
 
確率三割皮膚ガンの
検査の結果は良性で
命拾(びろ)いの師走(しわす)時
 
 
「池の氷は」
 
赤塚公園 池凍り
背黒セキレイ軽やかに
氷の上を走り抜け
 
 
「便器でも」
 
三十年慣れた便器がトラックに
TOYOTOKIと書かれてあった
便器でさえも思い出載せて
 
 
「柿とカラス」
 
梢(こずえ)に残った甘柿に
黒いカラスはよく似合う
お辞儀しながら朝ご飯
 
 
「十円硬貨」
 
古いソファが吐(は)き出した
昭和の時代の49年
財布を見れば48年ものも現役
 
 
「百個のクリスマスツリー」
 
暗闇(やみ)電飾百個も並び
驚き食べたソバの味
ホッケと飲んだ梅サワー
 
 
「古い写真を」
 
大正時代の筑波の山の
御幸(みゆき)ヶ原の茶店の写真
今より立派な瓦葺(かわらぶ)き
 
 
「ディジタル電波時計」
 
大きな数字で安心で
時計合わせも電波がやって
おまけにディジタル寒暖計も
 
 
「インフルエンザのワクチン注射」
 
生まれて初めて受けてみた
針の細さに驚いた
思い出したよ注射の痛さ
 
 
「お稲荷(いなり)様」
 
古い鳥居(とりい)は江戸時代
石の階段真新しくて
寄贈者なじみのパン屋さん
 
 
「年末のお月様」
 
黒い墨(すみ)絵の松の上
三つの飛行機チカチカと
まあるい月を引き立たす
 
 
「駐車場の白線」
 
塗り替え二度目は素人(しろうと)の
それでもくっきり
月照(て)らす
 
 
「雨引(あまびき)観音」
 
冬の雨ぱらぱらと
二重の塔の中程に
南国クジャクも寒かろう
 
 
「伝正寺」
 
茅葺(かやぶ)き屋根のお寺さん
古い温泉周りに持って
四十七士の人形も
 
 
「クリスマス」
 
イブの食事の音楽に
カラヤン ワルツをかけようと
買ったショップは百円の
 
 
「電飾のランプ」
 
初めて見たよ電飾ランプ
細いガラスの電球で
しっかり防水 連(つら)なって
 
 
「今年も」
 
旅行数回 手術も二回
今年もいろいろあったけど
無事に越せそう年の暮れ
 
 
「サブウーハー」
 
ぼーぼーと地の底からの
ほえ声が
ベース ティンパニー 男の声まで
 
 
「餅つき」
 
もち米とぐのは二度目の今年
きゅっきゅっきゅっと
今年の垢(あか)をも磨き去り
 
 
「お正月」
 
東京湾の上空は
筑波山  右手に加波山従えて
まれな構図の薄霞(がすみ)
 
 
「風も静かな」
 
音もなく
風も静かな
正月三日(みっか)
 
 
「結婚祝い」
 
兄にはアナログ掛け時計
今度はディジタル電波の時計
刻々変わる波に乗り
 
 
「御神水」
 
筑波神社の御神水
味はまろやか暖かく
モクモク湧(わ)き出す元気の良さよ
 
 
「ケーブルカーに沿って」
 
この道 筑波の人気道
一番急な登山道
双峰の鞍部(あんぶ)を目指す直登の
 
茶店の跡 敷石の
ちょうど見所
ケーブルカーのすれ違う
 
線路のトンネルその上は
ごつごつ岩場の
迷う道
 
雪のしずくを吸い込んで
ちょろちょろ顔出す湧(わ)き水は
源流知られた男女川(みなのがわ)
 
さっとお空が開けたところ
ここは名所の御幸(みゆき)ヶ原で
風は正月 風花(かぜばな)の
 
 
「氷とセキレイ」
 
氷の上のセキレイは
ちょこちょこちょこと
滑らず歩く
 
 
「軽登山靴」
 
くるぶし隠れるほど高く
見た目よりずっと柔らか履(は)き心地
重さは片方500グラムの
 
 
「アトリ」
 
群れなし派手派手きつね色
冬鳥元気な公園の
池は凍って静まって
 
 
「山道」
 
見通しきかない檜(ひのき)の山は
下界の音と
鳥のつぶやき
 
 
「つつじヶ丘」
 
この山道の終わりはどこか
まずは見えたよロープウェーの下の駅
三角屋根の茶店の裏庭
 
 
「青空」
 
この正月の青空は
明るく深く
何を吸い込みたいのかな
 
 
「女(め)の川」
 
君と歩く檜(ひのき)の山道
初めて見たよ女の川の沢
遠くの水音浸みだし広がる
 
 
「横瀬夜雨の詩碑(しひ)」
 
メインの道から脇(わき)道へ
石は黒びて文字薄れ
生まれの下妻(しもつま)見下ろすところ
 
 
「回転展望台」
 
十数分で一回り
寒さこらえてベンチに座(すわ)る
南はかすんで北は澄(す)み
 
 
「山陰の」
 
山陰の道は凍った雪残り
歩けば転ぶ
封鎖道(みち)
 
 
「マガモ」
 
小さな池も氷張り
マガモは遊ぶ
隅(すみ)の水面
 
 
「アオジ」
 
姿を見せない小鳥のアオジ
冬枯れの枝の林で
冬の日浴(あ)びる
 
 
「閉店セール」
 
電気街 出来てもう早十数年か
残り少ないMD買って
またも一軒姿消す
 
 
「真壁(まかべ)城跡」
 
裏筑波シルエット
堀深く加波山(かばさん)そびえ
蔵の町そのまま残り
 
 
「雨引(あまびき)観音」
 
クジャクやホロホロ鳥たちと
うっすら夕闇(ゆうやみ)染めてきて
鐘(かね)の音転がる山から里へ
 
 
「朝雪」
 
朝雪は
車の屋根のみ
残り雪
 
 
「散歩」
 
左見右見
耳を澄まして鳥を聞く
ゆっくり歩く散歩がいいな
 
 
「引き伸ばし」
 
四つ切りワイドのプリントも
半額以下と手軽になった
思い出写真は大伸ばし
 
 
「水たまり」
 
冬 水たまり
乾いた寒風
集めつつ
 
 
「冬の杉」
 
杉の葉が赤みを帯(お)びた
ゆらゆら揺れる朝風に
ここから始まる花粉症
 
 
「伝正(でんしょう)寺」
 
左の奥にずらりと並ぶ
四十七士の気合い込め
浅野の菩提(ぼだい)寺茅葺(ぶき)きの
 
芥川龍之介ゆるりと泊まった桜井館に
時代は大正古き世の
ここは温泉慶応からの
 
 
「冬の百円ショップ」
 
外風(そとかぜ)冷えた体には
むっとするほど暖房効(き)いて
ほのぼのムードの百円ショップ
 
 
「カセットテープからMDへ」
 
カセットテープをダビングMD
テープはすべて箱ごと処分
部屋はすっきりコンパクト
 
 
「ムクドリとカラス」
 
広々枯れ草ムクドリ集(つど)う
一羽のカラスも餌(えさ)探す
仲良し暖か寒風の中
 
 
「公園の小鳥には」
 
昼休み
過ぎれば小鳥
楽しそう
 
 
「メジロ」
 
メジロは高い裸(はだか)枝
着物はいつも春の色
梅の香まだかと低く鳴く
 
 
「丸々と」
 
冬の朝ツグミは丸々暖かそうで
日向(ひなた)の芝を
小走りに
 
 
「キツツキ」
 
キツツキ コゲラはこつこつこつと
たまにはどけどけ
シジュウガラ
 
 
「山懐(ふところ)に」
 
北風止まる山懐に
古い農家と新住民の
ちらほら混じる日だまりに
 
 
「山の上のゴルフ場」
 
遠くに見える山の上
看板少なく入り口どこか
登れば見晴らし北も南も
 
 
「ローラー付きスニーカー」
 
この冬見たよ滑る靴
子供が遊ぶ飛行場
手にとりゃ二つの車輪付き
 
 
「冬の森」
 
冬の森 裸森
小鳥がすっきり姿見せ
葉っぱの代わりに生き生きと
 
 
「春日差(ひざ)し」
 
風もなく春日差し
さえずり覚えた
シジュウガラ
 
 
「朝のオナガ」
 
朝のオナガは松の陰
長くてきれいなシッポだけ
縦に留(と)まって何してる
 
 
「白い太陽」
 
雲を通して真っ白け
春を生み出す太陽の
明るくまぶしい真っ白け
 
 
「ガソリンスタンド」
 
ぐっと値上がりガソリンスタンド
遠くの湾岸
身近に迫(せま)る
 
 
「ヒヨドリの水浴(あ)び」
 
真冬でも
水浴びヒヨドリ
さっぱり顔で
 
 
「ツグミ」
 
枯れ野原ツグミの姿はよく似合う
つつっと走り
胸そらす
 
 
「コハクチョウの足」
 
小島に上がったコハクチョウ
大きな水かき黒々と
羽の白さにたくましく
 
 
「鳥見」
 
鳥見鳥見の散歩道
枯れ木見上げる散歩道
チチチと鳴けば立ち止まる
 
 
「白梅」
 
青空にぽっと浮き出る梅の花
雀(すずめ)も騒ぐ
風もなく
 
 
「東筑波ユートピア」
 
山の斜面のユートピア
自然を生かした南向き
猿熊ライオン杖(つえ)突ながら
 
 
「小判岩」
 
坂道下り折れ曲がり
鉄の階段木の茂み
苔(こけ)むす巨岩に丸い穴
 
 
「ふじがみ旅館」
 
神立(かんだつ) 土浦 つくば市の
夜景はくっきり遠からず
赤い点滅 高層ビルの
 
 
「ゲートボール」
 
おじいさんおばあさん七人そろって
木漏(こも)れ日の
幼なじみのお友達?
 
 
「野鳥のシメ」
 
ツグミとそばでも気にせずに
太いくちばしご愛敬
せっせせっせと餌(えさ)探し
 
 
「合格祝い」
 
合格祝いはカメラです
フィルム式のカメラです
スーパーワイドのズームです
 
 
「初ヒバリ」
 
小雨の中でピーチクと
急降下まで見せてくれ
10日も早い初ヒバリ遠くの山は雪化粧
 
 
「野鳥のジョウビタキ」
 
枯れ野の中のジョウビタキ
羽の白紋(もん)目立たせて
明るい橙(だいだい)春を呼ぶ
 
 
「ホオジロ」
 
たどたどしくも
さえずり始めたホオジロの
空はどんより朝風かすか
 
 
「愛車の底面」
 
愛車のお腹(なか)は意外ときれい
十二年目の車でも
初めて見れば新鮮で
 
 
「筑波サーキット」
 
ピットのそばまで行ってみた
エンジン爆音うなってた
筑波おろしは曇り空
 
若者たちの空間は
マシンとコースとタイヤのゲート
タイヤの悲鳴にタイヤの煙ジムカーナ
 
昔の森は工場に
スタンドきれいにお化粧し
コースの内の池作り
 
カーブの傾き左右(ひだりみぎ)
直線コースのスピードうなり
見てる私も力湧(わ)く
 
 
「大洗(おおあらい)水族館」
 
大改築を終わってまだまだ一年足らず
冬の荒海背景に
他県の車が駐車場
 
円筒水槽(そう)鯵(あじ)光る
鰯(いわし)もはえるタレントとして
ゆらゆら揺れる海草の
 
鮫(さめ)タコ ウミガメ 青い水
魚の餌(えさ)の台所
大きな蛤(はまぐり)ラッコのための
 
マンボー私のお気に入り
のんびり浮かぶ癒(いやし)し系
口を真上に昼寝かな
 
ピリカの名前は知床(しれとこ)の歌
大きなくちばし黒い羽
下から見上げる水かきの足
 
丸い別館 海の窓
アシカとイルカのショータイム
作ってくれたシャッターチャンス
 
アベックさんと小さな子連(づ)れ
これが目立ったお客さん
アクアワールド大洗
 
 
「霧か湯気か」
 
夜の雪 朝はあがって
黒土は日差しを浴びて吐(は)き出した
ふわふわ漂(ただよ)う白い霧
 
 
「野鳥のシロハラ」
 
ツグミとうっかり間違える
体の側面茶色かどうか
これを確かめシロハラさんと
 
 
「二人目の合格祝い」
 
ディジカメかフィルム式か合格祝い
三十年後を考えてメディアの変遷考えて
やっぱりしましたフィルム式に
 
 
「田舎(いなか)の店」
 
小さなひなびた食料品の
値段は少々高くても
何とも言えぬ安らぎあって
 
 
「松かさ」
 
夕日は山を紫染めて
乾いた音して落ちたもの
大きく開いた松かさの
 
 
「三月一日」
 
曇り朝にもかかわらず
外を歩けば
三月香る
 
 
「岩瀬町の桜」
 
世阿弥(ぜあみ)の謡曲 桜川
時流れ川岸桜は消えたけど
磯部神社の参道に春待つ枝はつぼみ付き
 
 
「霞ヶ浦ふれあいランド」
 
岸辺に高く虹の塔
周りは湖面 陸より多く
光異なる東西南北
 
 
「野鳥のハクセキレイ」
 
黒土のぬかるみで
遊ぶセキレイ
白羽汚(よご)さず
 
 
「セルフガソリンスタンド」
 
セルフが次第に増えてきた
老舗(しにせ)の大きな店までも
自分で入れるガソリンを
 
 
「春の道」
 
ヒバリの歌は聞こえぬが
春がしみこむ
畑道(はたけみち)
 
 
「キツツキのコゲラ」
 
木の幹(みき)縦にとまりつつ
間近な姿は珍しく
頭の羽毛は立っていた
 
 
「雀のお宿」
 
三月雨の竹林
雀はその中 雨宿りざわざわざわと
これが童話の雀のお宿か
 
 
「合格祝い」
 
国立医学部通った君に
朝の電話は
春の若草
 
 
「筑波梅林」
 
新しい道作られて
たどれば廃墟の宿泊所
ペットの弔(とむら)い観音様も
 
 
「つつじヶ丘」
 
大きな三軒 土産物(みやげもの)屋が
京成ホテルに猿の芸ロープウェーの下の駅
三月上旬 寒風流れ
 
 
「パープルライン」
 
閉鎖が目立つ駐車場 通る車も少なくて
電波出し 彗(すい)星眺めた尾根の道
どうなっただろう万博の森
 
 
「鏡用スツール」
 
毎日毎日 君を支えて
水色柔らか丸いスツール
名残惜しくてありがとう
 
 
「野鳥のシロハラ」
 
ちょちょちょと進んで立ち止まり
動作はツグミにそっくりで
体の色は穏(おだ)やかな
 
 
「田圃(たんぼ)に面したフランス料理店」
 
ドアしまり田圃はまだまだ冬景色
料理の匂いが流れ出て
今日のオープン6時です
 
 
「定年送別会」
 
固形物は何一つ
食べずにビールたらふく飲んで
昔話に話し込む
 
 
「夕の月」
 
青空残る黄色月
双眼鏡で見てみれば
ふくらみ見えて浮かぶクラゲの
 
 
「野鳥のジョウビタキ」
 
雌(めす)がとまったジョウビタキ
シッポをぴりぴり動かして
羽が逆(さか)立つ朝風に
 
 
「白クローバー」
 
春雨の
歩いた足跡
白クローバー
 
 
「駅前広場」
 
ギターで歌う若者は
イラク戦争反対署名
三十年前顔出す広場
 
 
「西光院」
 
巨岩を囲いお寺建ち
険(けわ)しい崖の高柱(たかばしら)
東の国の清水舞台
 
 
「ツグミと雄キジ」
 
雄キジ走る広っぱら
ツグミも一緒に走りだし
追われる気分か青空の下
 
 
「水鳥と子犬」
 
イラクで戦争始まれど
オナガはまっすぐ沼の水
子犬転(ころ)げる冬の芝
 
 
「春分の日」
 
新芝光る白っぽく
ツグミとセキレイ広々と
春の空気を身にまとい
 
 
「春曇り」
 
冬戻り
梅は満開
春曇り
 
 
「ウグイスの初鳴き」
 
雨上がり朝青空の
艶(つや)声短く初鳴きの
伴奏キジバトどでっぽっぽー
 
 
「筑波山の弁慶茶屋」
 
白蛇弁天 左手眺め急な山道上りつめ
話し上手な八代目 壁にずらっと何回記念
共に撮(と)ったよ道しるべ
 
 
「山道」
 
下界が見えぬ山道は苔むす杉の大木の
弾む息 遙(はる)か下まで見渡せて
そこでは多めに小休止
 
 
「山登りとビール」
 
登った後のビールのうまさ
汗を補うビールのうまさ
値段は少々高くても
 
 
「ジンチョウゲ」
 
強風に
負けずに香る
ジンチョウゲ
 
 
「強風」
 
うなる強風
それでも揺(ゆ)れない
クレーンの驚き
 
 
「水の中にも春が」
 
葦(あし)生えた水面に
のっこみ鮒(ふな)の大騒ぎ
水の中にも春しみこんで
 
 
「双葉(ふたば)」
 
小さな双葉が線状に
でこぼこ土に春の色
いつになったら三枚葉
 
 
「更地(さらち)」
 
更地に初めに顔出す葉
ヨモギにタンポポ
早目覚め
 
 
「春の山登り」
 
連(つら)なる急坂大汗かいて
休めば吐く息白い息
みるみるうちに肌寒く
 
 
「筑波山の男女川(みなのがわ)」
 
南と北と二つもあった男女(みなの)川
本家争いそこには無くて
むしろ筑波に二つ花
 
 
「若い母親山登り」
 
赤ちゃん背負って急登を
おまけに片手は荷物提(さ)げ
聞けば以前は走って登る
 
 
「源流」
 
川の源流岩の下
備え付け緑のコップ
汗を忘れるまろやかさ
 
 
「片栗(かたくり)の里」
 
分厚く広めの葉っぱの上に
ピンクのつぼみが頭垂(た)れ
山の寒風通り抜け
 
 
「登山口の石碑(ひ)」
 
是(これ)よりの文字はくっきり
時代を見れば
安政これは江戸末期
 
 
「雨の百年桜」
 
寒風(さむかぜ)の雨の中
百年桜はまだ散らなくて
熱々(あつあつ)サービス桜の茶
 
 
「戦車と桜」
 
戦車の上は桜の枝の
そこには確かに美があった
子供が上で遊んでた
 
 
「桜の花びら」
 
横断歩道で立ち止まり
目の間近 花びら昇(のぼ)る
町の風
 
 
「都庁のツウィンタワー」
 
近くに見えても遠かった
昇(のぼ)ればまあるく何もかも
森がいくつか見えて嬉(うれ)しく
 
 
「KONNE」
 
南西それは新宿駅の
郷土の産物 懐(なつ)かしく
若者が冷や汁すすって何想(おも)う
 
 
「神道のお葬式」
 
白木が清らかお払いも
神主さんに守られて
写真のおじさん安らかに
 
 
「山桜」
 
今年も白く清楚(せいそ)に咲いた
後ろに高いクレーンあり
食べれば春の精隠(かく)れ
 
 
「飛行船」
 
飛行船 音もなく
曇り空 灰色黄色の大きな機体
桜の町を見下ろして
 
 
「片栗(かたくり)の花 数千本」
 
ところは北面 筑波山
ピンと反(そ)ってるピンクの花の
雪消えた花畑
 
葉のない春の落葉樹
下はうつむき片栗の花
これだけあってもだあれも採(と)らぬ
 
白い花びらアズマイチゲよ
歌にもなった二輪草小さな花のユリワサビ
見たこと無い花 筑波の春に
 
 
「キブシの花」
 
新芽の目立たぬ山林の
黄緑房の花下がり
春の一声キブシの木
 
 
「日本自動車研究所」
 
桜満(み)ち満ちピンク色
燃料電池の大きさに
驚き歩む白い道
 
 
「高層気象台」
 
大正時代の細道は春の小花が咲き乱れ
筑波山測候所 古い看板展示室
ラジオゾンデを見上げる空は
 
 
「光ファイバー」
 
光ファイバー作るのに
元のガラスの大きさに
これが世界を駆(か)けめぐる
 
 
「大型耐震実験装置」
 
震度7まで手すりにつかまり
広い床(ゆか)踊り出す
初めてそして最後になるよう
 
周(まわ)りの道角(かど)三人で
暑い日差しで撮(と)ったのは
今から遙(はる)か31年
 
 
「宇宙センター」
 
PETボトルのロケット眺(なが)め
テレビドラマで観客増えた
本社眺めて古道歩(あゆ)む
 
 
「三春の滝桜」
 
郡山(こおりやま)からほど近く
売り子もさわやか三春駅
駅舎も新築現代的な
 
臨時のバスは雨の中
三人乗客ていねいな
搭乗員の桜の話
 
道は連なる車の列で
新潟関東遠くから
曲がって進む上(のぼ)り下(お)り
 
垂(しだ)れも吉野も満開の
ここは田村の城下町
雨でもそよぐ鯉(こい)のぼり
 
歩けば見えた滝桜
カメラ雑誌でよく見た姿
後ろに控(ひか)える若桜
 
千年幹(みき)は真っ黒の
こぶごつごつの墨(すみ)絵の枝よ
真下に小さな祠(ほこら)があって
 
枝を支える丸太も古く
垂(しだ)れの花は一重咲き
観客雨空行列を
 
薄墨桜は岐阜の花
ここの桜は滝桜
それでもうっすら陰(かげ)り帯び
 
長い時代を生き抜いた
風格花からたなびかせ
こんなに老(お)いたい滝桜
 
 
「筆リンドウ」
 
筆リンドウの群生は
短く刈られた
柵(さく)の中
 
 
「昼の少女」
 
公園のベンチで一人女学生
木の下 弁当美味(おい)しそう
昨日(きのう)に続いて何想(おも)う
 
 
「新しい靴(くつ)」
 
何度もヒモを調節し
次第(しだい)に足に馴染(なじ)んでく
かかとはすぐに減(へ)り始め
 
 
「川の菜の花」
 
川の堤防(ていぼう) 黄色花
色んな地域に広がった
広がれ花の日本の川に
 
 
「登りたい山」
 
登りたい山 雲隠(かく)れ
夜の雨あがったけれど
行ける所(とこ)まで行ってみようか
 
 
「タンポポの葉」
 
花と綿毛に気をとられ
地面の葉っぱを眺(なが)めれば
類無い形がおもしろく
 
 
「田植え」
 
引っ越した その後連休
小さな農機具 田をかき回し
白黒写真に撮(と)った日は
 
道は曲がった土の道
左は森が続いてた
二人歩いた初めての
 
ここらは何にも変わって無くて
今年も農機具水の中形は大きくなったけど
乗ってる人は同じ人?
 
同じ農道 三脚据(す)えて
二人並んで写真撮(と)り
トラックターしっかり入れて
 
背景は時代の波で変わり果て
年を重ねた私たち
田圃(たんぼ)は何にも変わらずに
 
毎年毎年米を生み
黙ってしっかり根を生やし
田圃見つめる学園都市を
 
 
「迷彩帽子」
 
迷彩帽子をすっぽりかぶり
林の中をさまよえば
キジ鳩(ばと)近く 一メートルも
 
 
「雪の下(ユキノシタ)」
 
花びら二つの白い花 一度で心に染み渡る
葉っぱは雪でも緑色 薬王院のルートにて
一株見つけたユキノシタ
 
 
「御海(おうみ)」
 
筑波山 御海(おうみ) 巨岩の地下水は
万病治(なお)ると伝説の
道は急坂ロープづたいに
 
 
「理髪店に写真を」
 
散髪通った三十年の贈った写真は滝桜
壁に飾ってくれるそう
今度行ったらどんな気分か?
 
 
「コナラとミズナラ」
 
コナラ ミズナラ クヌギの木
違いも知らずに森眺(なが)め
ようやく知る気になった日は
 
 
「雨上がりの登山」
 
夜の雨あがって青空隙間(すきま)から
雨に洗われ筑波山
どんな姿で迎え入れ
 
 
「カンボク」
 
連休の山に点打つ白い花
至(いた)る所で尋ねても
だあれも知らない低木の花
 
 
「中腹の林道」
 
筑波山 中腹回る林道は
登山者の置き車
半周ほども舗装(ほそう)が終わり
 
 
「ノダフジ」
 
登山道終わって林道下り坂
地面に触れる藤の花
手に取り香りを初めて知って
 
 
「関東タンポポ」
 
萼(がく)の反(そ)らない関東タンポポ
それを見つけた場所ならば
自然はしっかり保存され
 
 
「紫(し)ラン」
 
園芸種と間違えそうな
初めて見つけたランの花
場所は団地の遊歩道
 
 
「カーナビ」
 
カーナビは便利だけれど
ゆったりドライブ
妨(さまた)げられて
 
 
「五月のキジ コジュケイ ウグイス」
 
五月朝コジュケイ鳴いた久しぶり
キジもケンケーン目を覚まし
ウグイス鳴いて曇り空でも幸せ満ちる
 
 
「林道」
 
林道歩けば五月(さつき)風
沢の水のどに冷たく
初めての花
 
 
「筑波山の白滝」
 
筑波の中腹森の中
二段に落ちる白滝の
水は変わらぬ二十八年
 
土台だけ残った家跡その時は
今は二階の山荘になり
使っていない白滝の風呂
 
真新しいよガマの石像
林道今は舗装され
小道を入れば白滝の音
 
木の樋(とい)伝う山水の
上段の滝はセメントの樋
手のひらすくい円(まろ)やかな味
 
水落ちどころは大きな岩の
ここは行者(ぎょうじゃ)の滝打たれ
時代は流れど今日も男女の三人姿
 
ロウソク光り肉メロン キュウイフルーツ
滝の下 行者は厳(おごそ)か供え物
ドラもそのうち鳴り出した
 
白滝神社は岩の上
細くて長い石階段の苔は滑らぬ岩覆う
古木の杉は注連(しめ)飾り
 
この盛り上がり草の上あの時のアウトドア
飯ごうコンロ鉄板焼きの
歳はその時三十ちょうど
 
帰りは探すあの時の道
迷い迷って探し当て
今は廃道それでも歩く
 
白滝からの登山道 元は大勢にぎわった
目指した峰は女体山
今はすっかり忘れられ
 
 
「山懐(ふところ)」
 
山懐にくるまれて
暮らすは人の
真の幸せ
 
 
「白い月」
 
五月の夕方まだ明るくて
空にはうっすら雲かかり
丸くはないけど白月(しろつき)うれしく
 
 
「初めての草花」
 
初めて見る花少なくなれば
散歩のコースをお替えなさいよ
そうすりゃまたまた見つかるよ
 
 
「苗(なえ)」
 
雨降り散歩は田圃(たんぼ)道
苗は細々幼(おさな)くて
空を写して風に揺(ゆ)れ
 
 
「大サギ」
 
曇りの沼に大サギ一羽
あまりの白さと長い首
景色から浮かんでしまい餌(えさ)探す
 
 
「那須(なす)高原」
 
何年ぶりかの那須高原は
どこが変わって
何処がいっしょか?
 
 
「那須(なす)」
 
新緑覆(おお)う那須の道
手綱(たづな)取られた馬の背は
大きく揺(ゆ)れて意外に高く
 
 
「霧の山道」
 
山をくねってドライブウェーは
霧はますます深くなり近傍だけの世界現れ
駐車場からもホテル見えなく
 
 
「那須の茶臼岳(ちゃうすだけ)」
 
ロープウェーの駅後にして
砂場を岩場を黄色のペンキをたどって登る
下は雲海地上は見えなく
 
所々に高山植物 岩の隙(すき)間に
硫化水素の白煙の穴
ここは今でも活きている
 
隣の山は朝日岳
形は美形の山肌の
人影目える双眼鏡で
 
続いた岩のその向こう
古びた鳥居(とりい)は木の作り
ケルンに石を積み重ね
 
寂しくないほど登山客
お互いカメラを手助けし
山の上一眼レフが大流行(おおはやり)
 
山頂そこには石の社(やしろ)が
まだまだそれは真新しくて
ヘリコプターで持ち上げた?
 
谷風は吹き上げる白い霧
南月山(みなみがっさん)雲の中
山頂総勢六人の
 
下っていけばずっと下
駅からお客が吐(は)き出され
そのうち側(そば)をすれ違う
 
下から見ればもっこり型の
1915メートル活火山
裾(すそ)野に白樺(かば)従えて
 
 
「おかしの城」
 
初めの頃はなかったが那須に店が増えた頃
白い建物 菓子製造機 色んなお菓子の
その中に見つけたものは方位磁針と温度計
 
 
「雪解け水の水路」
 
牛を見 森見て一走り
古い人家に販売機 屋根は緑に塗り替えて
いつ来ても水はドウドウ冷たく澄んで
 
 
「熱気球」
 
芝生の上に熱気球
色鮮やかででっかくて
それこそ立派な広告塔
 
払った料金1500円
籠(かご)はせいぜい数人乗りの
バーナーごうごうふんわり浮かび
 
思わず手すりを握(にぎ)りしめ
昇る高さは三十メートル
ここは千本松牧場の
 
林も下にもぐり込み
昨日登った茶臼岳
雲にすっぽりくるまれて
 
あっという間の五分間
これで十分 話の種には
ふんわり降りる芝生の広場
 
 
「にんじん」
 
高速道路入(はい)る前 喫茶店
いつも頼んだホットサンドを
古びたスピーカー部屋の配置もそのままの
 
 
「ポピー」
 
花びら極薄ひなげしの花
背高美人の体は細身
風が無くてもとまりはしない
 
 
「加波山(かばさん)」
 
修験者の山 明治時代の加波山事件
ずっと前から登りたかった
車で行けない魅力の峰は
 
自由民権記念碑広場
そこから登りは丸太の階段
急登しばらく息切らし
 
新緑懐(ふところ)はいり込む
会った登山者十数人の
クマザサ茂る自然道
 
尾根の谷風涼しくて
見晴らしきかない山の森
山の鳥歌続く道
 
ウグイス青葉に冴(さ)えわたる
登るにつれて岩石多く
巨岩も葉陰に立ちつくす
 
右手に大きな旗立石が
明治の時代の自由民権
岩の割れ目に竿(さお)立てたのか
 
平均年齢二十四
十数人の命をかけた
加波山事件は数日続く
 
山頂ひしめく社(やしろ)と祠(ほこら)
山岳信仰営々と
今でも社は建て替えられて
 
苔むす岩道 禅定(ぜんじょう)道の
冷えた湿気は身を引き締める
ただの道とは違う道
 
先達(せんだつ)弔う石碑が並び
急な下りは手すりのパイプ
大きさ手頃で使い込まれて
 
鞍(あん)部の神社は二つあり
ここだけにあるお賽銭(さいせん)箱
山頂のには一つもなくて
 
帰りに歩く林道は
自転車 車にオートバイ
ツクバネウツギの花出会う
 
ゆっくり歩いた三時間
五月の心の満ちた山
歩きが必要 加波山山頂
 
 
「山の上の社(やしろ)は」
 
細くて急な登山道
社は山頂 材料運び
その労力の偉大さ思う
 
 
「禁煙の」
 
禁煙始めて二年足らずの
いつのまにかに
禁煙相談受ける身に
 
 
「五月下旬」
 
麦わら帽子の季節になった
光りと影のくっきりと
空気がからっと五月(さつき)風
 
 
「豚菜(ぶたな)の花」
 
今年は豚菜の当たり年
いたるところで群生し
ゆらゆら揺(ゆ)れる黄色花
 
 
「台風近く」
 
銀色タワー
飲み込むほどに
雲強く
 
 
「六月一日」
 
曇れば涼しく
晴れれば暑い
六月一日(ついたち)
 
 
「野ウサギ」
 
じっくり眺(なが)めた野生のウサギ
体茶色で耳幅広で
目玉くりくり草をかむ
 
 
「夕空」
 
今日は夕焼け待ち望む
うっすら残る青空の
夏の気分を味わいたくて
 
 
「写真」
 
理髪店
後ろの壁に桜の写真
私が贈(おく)ったお礼の写真
 
 
「健康診断」
 
年ごとに
ありがたみ増す
健康診断
 
 
「キキョウ草」
 
葉っぱと茎は幼顔(おさながお)
花はくっきり紫の
星形美人のキキョウ草
 
 
「朝」
 
初めての道 山歩き
平地も朝霧
期待込(こ)め
 
 
「筑波山 男(お)の川コース」
 
男の川渓流(けいりゅう)葉影下
二股道は二カ所あり
すべてを歩いてフルコース
 
男の川橋に車置き
谷川沿いの不動尊
お祈りすませて登り道
 
落ち葉が覆(おお)う山道も
踏み跡しっかり残る道
男の川二度も越え進む
 
しばらく踏み跡消えていき
沢道たどる数分間の
再び踏み跡土の上
 
延命水の水場の指標
岩の下から甘い水
今まで幾人救われ続け
 
今日の登りは一年前に
出来たばかりの緩(ゆる)やかな道
所々に赤丸印
 
たどり着いたは薬王院高原
小走りに薬王院に降りる人
ちょっと挨拶(あいさつ)さわやかな
 
御幸ヶ原(みゆきがはら)駅売店で
初めて買ったバッチ付け
搬送路からの男体山は
 
民放テレビの中継塔や
NHKのアンテナ過ぎて
小さな祠(ほこら)はひっそりと
 
昔は人がつめていた男体山の測候所
今日はアンテナ工事中初めて入った建物は
今は無人の通信所
 
下りのコースは研究路からの
ロープの急坂ゆっくり降りて
この道もともとあった道
 
ずっと下って下の分岐(き)で
右へ向かってまた登る
尾根の急登 自然の残る
 
最後は笹(ささ)道倒木越えて
たどり着いたはベンチ横側には電柱新しく
そこは馴染(なじ)みのユース跡コース
 
ユース跡の駐車場
ハーレー乗った男の人に
登山勧(すす)めて彼登り出す
 
男の川コースのフルコース
階段一つもないコース
自然が支配のおもしろコース
 
 
「筑波山のガマ蛙(がえる)」
 
有名だけどなかなか見えず
ついに見つけた沢道で
おっとりとして十センチ
 
 
「ケルン」
 
分岐(き)点にはケルンがあって
一つ小石を積み重ね
ここを辿(たど)った記念ともして
 
 
「笹(ささ)」
 
丈夫(じょうぶ)な笹は山が好き
それでも人に踏(ふ)まれれば
細くてくねる道をあけ
 
 
「再び道を」
 
沢道でとぎれた道をしばらく登り
再び踏(ふ)み跡見つけたときは
安堵(あんど)と喜びわき上がる
 
 
「梅雨(つゆ)」
 
散歩でも
背中に汗の
梅雨の入り
 
 
「雀(すずめ)の食事」
 
ガラス越し雀の食事は時間がかかる
飲み込むまでも楽しんで
終わればぴょんぴょん跳(と)んでいき
 
 
「明治時代の柱時計」
 
久しぶりでの自転車屋さん
磨(みが)いた中古の自転車並ぶ
今も元気なご主人の
 
使い捨て自転車時代にがんばって
技術で生きる二代目の
先代無くなり早十四年
 
店の片隅(かたすみ)動かぬ時計
明治時代の羽鳥(はとり)駅から
ローマ数字はまだくっきりと
 
水圧かけて洗ったときに
取れてしまったステッカー
お店を飾るお宝の
 
 
「間宮(まみや)林蔵の生家」
 
広々田畑の茅葺(かやぶ)き屋根の
側(そば)を流れる小貝(こかい)川
当時の風景あまり変わらず
 
 
「菊芋(いも)」
 
二ヶ月前に双(ふた)葉の菊芋
今は背(せ)の高さ
びっしり茂って地面も見えず
 
 
「背中」
 
背中の汗の感触が
夏が来たこと
教えてくれて
 
 
「お稲荷(いなり)様」
 
拝(おが)んだ後に社を回るおばあさん
尋ねれば
気持ち次第(しだい)と笑って答え
 
 
「遠くの台風」
 
遠くの台風
朝風が元気を増して
豚菜(ぶたな)の綿毛まだ残り
 
 
「つり橋」
 
細くて長いつり橋を
三人並んで写真撮り
初夏の葉っぱと沢の水
 
 
「まちかど蔵」
 
明治時代の砂糖の倉庫
天井高くて煉瓦(れんが)の作り
クーラー付けて喫茶店
 
 
「昔からの町」
 
店の幅ぴしっとそろい
所々はシャッター閉(し)まり
入(はい)れば奥からおばさんが
 
 
「露草とねじ花」
 
梅雨の雨吸い取られ
ピンクと青に
発散し
 
 
「夏至(げし)の頃」
 
夕方散歩は夏至の頃
森の中 夕日が斜めに
ずっと奥まで
 
 
「道」
 
車で何度(なんど)も通った道も
のんびり歩けば何もかも
真(ま)新しくて
 
 
「車のレーダー探知機」
 
十二年間 働き続け
タバコの脂(やに)がこびり付き
暑い車内に耐えて壊(こわ)れず
 
 
「お店の配置」
 
配置が時々変わる店より
数年ぶりでも
変わらないのが嬉(うれ)しくて
 
 
「下横場(しもよこば)のグミの大木」
 
低木グミも五百年
虚(うろ)持つほどの大樹となって
何がしみこむ見上げる枝に
 
 
「ホトトギス」
 
ホトトギス枯(か)れ枝移り姿見せ
カッコウと別の姿勢で鳴き続け
姿お互いそっくりだけど
 
 
「神社の改築記念碑」
 
神社の境内(けいだい)大きな記念碑
文字はくっきり読み取れて
見れば年月 江戸時代
 
 
「ランナー」
 
昼の公園走る人
暑さ増しても
人数減らずに
 
 
「ゆっくり歩く人」
 
ザックを背負い黙ってゆっくり歩く人
久しぶり人追い越して
その人感じる良い老い方を
 
 
「蒸(む)し暑さ」
 
乾いた太陽
それよりも夏が来たこと
じっとり暑さが教えてくれて
 
 
「キョウチクトウ」
 
梅雨の合間の朝日の中で
寝ぼけ眼(まなこ)のキョウチクトウは
ピンクの濃さが空気に溶(と)けて
 
 
「北条の泉子育て観音」
 
本堂 薬師寺 鐘突き堂も
一揆(いっき)と彫られた灯籠(ろう)に
聞けば献灯 個人のものの
 
 
「東城寺」
 
焼けた本堂再建中の
豊富な山水
浴びて鯉(こい)舞う
 
 
「曇り空」
 
この雲がなけりゃ
どんなに暑いのか
雲の威力を感じる季節
 
 
「野ウサギ」
 
昼間の野ウサギ珍しく
額(ひたい)に白い星あって
草食(は)む姿は柔和そのもの
 
 
「霞月楼(かげつろう)」
 
小川芋銭(うせん)の直筆の鳥
東郷元帥(げんすい)明神感の墨濃くて
家内と喜ぶすみれの間
 
 
「夕立」
 
舞台の幕は夕立さんが
空気が変わる
幕前後
 
 
「稲光(いなびかり)」
 
ジグザグ模様の稲光
数度も光る同じ道筋(すじ)
雲のガス抜き気持ちよさそう
 
 
「筑波山神社の御祓(おはら)い」
 
三杯飲んだ御神水
大きな太鼓(たいこ)に体揺(ゆ)すられ
冷房効いた拝殿で頭の上で御祓い受けて
 
 
「温泉ホテル」
 
滝落ちる露天風呂
遙(はる)か彼方(かなた)を見下ろして
知った景色を目で辿(たど)る
 
 
「不動峠」
 
森は深くて日は通らずに
自然の懐(ふところ)くねくね続く
出会った車は二台だけ
 
 
「峠(とうげ)を越えて」
 
ガスが峠を越えてくる
窓いっぱいのパノラマの
左からうっすら障子が引かれていって
 
 
「山懐(ふところ)のソバ」
 
硬くてまだらのざる蕎麦(そば)は
山の東と北同じ
地元の男の手でこねた
 
 
「蟻(あり)の道」
 
白い土道 蟻の道
行きと戻(もど)りが混(ま)ざり合い
頼もしいもの自然の営(いとな)み
 
 
「つぶれない店」
 
いくら世の中不況でも
つぶれない店 関東の
それはそのはず蕎麦(そば)屋さん
 
 
「月見草」
 
今年初めて朝の花
梅雨寒む続く七月下旬
薄い黄色が深く見え
 
 
「金村別雷神社」
 
水面近く社(やしろ)脇(わき)
すべて昼寝の犬五匹
石像多く巨木があって
 
 
「送電線」
 
送電線支える鉄塔そびえ立ち
煙突減った寂しさを
寿命も長く人と変わらず
 
 
「弘道館」
 
庭には古井戸 今残り
江戸の学舎(まなびや)
重々しくて薄暗く若者の汗うかがえて
 
 
「水戸城跡」
 
空堀 土塁(どるい) 本丸門の
あとは広々敷地だけ
今は学舎(まなびや)小中高の
 
 
「ビアパーティー」
 
焼き鳥 餃子(ぎょーざ)にソーセージ
ビールもたらふく飲んだあと
意外に美味(おい)しい焼きトウモロコシ
 
 
「電話で蝉(せみ)の声」
 
新聞社 合格知らせの母の声
合間に伝わる
クマゼミ微(かす)か
 
 
「軽自動車の試乗」
 
急な坂道走ってみても
ターボはいらない660
窓を開けてもエンジン静か
 
 
「弘経(ぐぎょう)寺」
 
千姫の菩提(ぼだい)寺 静か
江戸の立派な鐘楼(しょうろう)に
今は釣り鐘姿無く
 
 
「お寺」
 
何度も車で通った町も
一筋(すじ)入れば何にも知らず
お寺が二つ並んであった
 
 
「大生郷(おおのごう)天満宮」
 
社(やしろ)の脇で拾った財布
神主さんに届ければ
庭園造りの若い人
 
 
「静かなソバ屋」
 
細い道ロッジハウスのソバ屋さん
夏でも囲炉裏(いろり)の重みがあって
緑あふれる梅雨明け日差し
 
 
「戸崎鼻(とざきはな)灯台」
 
小学校の白浜キャンプ
小川流れる砂浜にウニを見つけた洗濯岩に
夜に照らした灯台は
 
細道車で登り切り
階段登れば鳴く猿見えて
白さまぶしい灯台静か
 
今は中腹パラグライダー
だあれもいない戸崎鼻
それでも明るい戸崎鼻
 
 
「鰐(わに)塚山」
 
テレビのアンテナ鰐塚山は
晴れれば小さく数本見えて
車で登れる山と聞く
 
渓(けい)流大勢水遊び
林道しだいに細くなり
ガスが漂(ただよ)う山の森
 
山頂三つもテレビ塔
三角点は一等で
1118メートルの
 
いつかは歩いて登ろうと
登山標識 脇見て下る
山頂八月 風涼しくて
 
 
「高層ビル」
 
三十年前最も高い貿易センター観客三人
現在トップのランドマークは約百人も
ウイークデーどちらも見晴らし大満足の
 
 
「停車3時間」
 
雷 架(か)線をちょん切って
止まった電車は三時間
クーラー切れずに座っておれて
 
 
「台風一過」
 
綿雲青空半々の
つないだトンボが二組浮かぶ
柳の枝も一休み
 
 
「禁煙」
 
一本も吸わなかったよ二年間
止めた日のことくっきりと
混じってきたよ懐(なつ)かしさ
 
 
「車の中の温度計」
 
50度までの ガラスの中の赤い帯
夏の車でちりぢりに
今度は針式70度まで
 
 
「米の花」
 
稲の頭の隙(すき)間から
白くて小さな米の花 今年はずいぶん
遅いけどしっかり育て米の花
 
 
「松の木旧街道」
 
ぽつぽつと背高い松の木残る道
ひっそり通りの古い道
忙しい車に知られずいつまでも
 
 
「雨の森」
 
雨脚(あまあし)かなり強くても
それでも走る男女あり
思ったよりも人が多くて雨の森
 
 
「涼しい夏」
 
涼しい夏も八月下旬
電力不足も助けられ
米の実の入り気にかかる
 
 
「立山黒部アルペンルート」
 
トロリーバスにケーブルカー
ロープウェーを乗り継(つ)いで
室(むろ)堂平のお花畑は雨の中
 
 
「黒部ダム」
 
放水広がる水しぶき
深くて広く流木筏(いかだ)
峡谷(きょうこく)年輪その広さ
 
 
「室(むろ)堂平」
 
イワヒバリ雨の中目の前平気で降りたって
高山の花十種類
雨は横からガス混じり
 
 
「立山ロープウェー」
 
黒部平でコンパスに温度計二組買って
雪渓残る山肌に支柱が無くて高々度
渓(けい)流支流見下ろして大観峰に
 
 
「黒部のトロリーバス」
 
満員押されてやっと乗り
昭和の残る大工事
あとの階段数百段もトンネルの
 
 
「雪渓(せっけい)」
 
目の下に八月末でも雪残る
高さ2000のその威力
景色が下と違う訳(わけ)
 
 
「防水登山帽」
 
買ったところは室(むろ)堂平
雨が多いか今日も雨
売店しっかり防水型を
 
 
「貨車付きケーブルカー」
 
上にホテルもあるのです
ケーブルカー後ろに貨車を引っ張って
立山駅から美女平(だいら)
 
 
「露天風呂」
 
目の下谷川絶壁の
桜の青葉に覆(おお)われて
のんびり温(ぬる)めの露天風呂
 
 
「トロッコ電車」
 
黒部峡谷その鋭さを
トロッコ電車は和(やわ)らげて
質素な駅は満員の
 
 
「欅平(けやきだいら)」
 
トロッコ電車の終点の
山は迫(せま)って谷迫る
小雨混(ま)じりの雲混じり
 
 
「宇奈月温泉80周年」
 
店の間の広場から
打ち上げ花火が腹響き
手で持ち歩く花火初めて
 
 
「八溝(やみぞ)山」
 
山麓(ろく)までは久慈(くじ)川渓流
鮎(あゆ)釣り長竿(ざお)友釣りの
緑と清流空気を静め
 
茨城県では最も高く1022メートル
車で頂上簡単に中腹名水豊富に湧いて
古い神社に白くまぶしい展望城が
 
 
「犬吠(ぼう)埼」
 
崖(がけ)っぷち白い灯台霧笛もあって
崖の草花風もまれ
ハマユウ 野アザミ 待宵(よい)草も
 
灯台登った階段だけを
思い出しつつ今日も登って
風は潮風 体をあおる
 
ここは陸地の島景色
窓に広がる灯台に
鰯(いわし)の刺身と天ぷら似合う
 
この突端は本州一番東寄り
醤(しょう)油がうまい銚子の町で
口に頬張るぬれ煎餅(せんべい)は
 
海と高台絡(から)み合い
乾いた日差しの
潮香る
 
 
「丸椅子(いす)」
 
ふかふか丸椅子店から消えて
プラスティックとアルミ足
合板製へと時代と共に
 
 
「菊芋(きくいも)」
 
菊芋は目立って強くて
九月風
強い日差しに黄色花
 
 
「サボテン」
 
サボテン挿(さ)し木の砂の山
霜よけ木の下考えて
冬を何とかしのげるか
 
 
「九月風」
 
朝は草原九月風
空はどんより
それでも爽(さわ)やか
 
 
「九月の日差し」
 
真昼の九月
木漏(こも)れ日さえも
さえぎる日傘(がさ)がありがたく
 
 
「ツルホの花」
 
ピンクの花穂がすっと伸び
いたるところで九月を告げる
これでも野生の花ですよ
 
 
「この九月」
 
真昼は汗だく日差しも強く
朝夕ひんやり
暗い夜空に月と火星がくっつきあって
 
 
「12年目の車」
 
古くはなったが愛着増して
今でも部品は何とか揃(そろ)う
十二年目の愛車です
 
 
「橋」
 
道路の上のこの橋は
端(はし)の方には草伸びて
めったに人と会わなくて
 
 
「涸(ひ)沼」
 
なかなか近くに行くことなくて
今はヨットにウィンドサーフィン
三十年たちゃ日差しまぶしい運動公園
 
 
「九月の海岸」
 
マリンタワーは高かった
パラグライダー小車引いて
走る砂浜熱(あつ)かった
 
 
「ツツジ公園」
 
大石内蔵助(くらのすけ)ゆかりの跡を
ツクツク法師
九月半ばで赤ツツジ
 
 
「笠間稲荷」
 
笠間稲荷は三大稲荷
江戸の絵文字がさりげなく
軒(のき)下飾る秋日差し
 
 
「笠間(かさま)焼き」
 
笠間焼き大根おろしも趣あって
手作りとげの不揃いが
大根風味を引き立たせ
 
 
「大きな饅頭(まんじゅう)」
 
百五十円どんな饅頭出てくるか
大きな大きなあんこ入り
ここは活気の門前町の
 
 
「送信アンテナ」
 
ずっと前から眺(なが)めてた
ラジオの送信アンテナは
やっとの思いでたどり着き
 
 
「高井城跡」
 
小さな鋭い丘の上
お墓と林と八坂神社と
崖(がけ)ふち飾る紅葉(もみじ)は古く
 
 
「セルフガソリンスタンド」
 
タンクのキャップをトランク上に
ついに忘れて出発し
聞けばそれもよくあることと
 
 
「差し込み式の電気蚊取り器」
 
コンパクト コードが無くて壁にさし
この店あの店どこにもなくて
やっと見つけた喜びに
 
 
「ガマの石像」
 
馴染(なじ)みの小さな神社に奉納
地面が似合う親子ガマ
25センチ大きさの
 
 
「養鶏(けい)場跡」
 
あのとき背景写ってた三十年も前のこと
青のトタンがそのうち錆(さ)びて
今はセメント残るだけ
 
 
「梨(なし)の直売所」
 
神社の前の倉庫が売り場 梨直売所
四十年前始まった おばあさん
梨を作るは年寄りばかりと
 
 
「畑と家」
 
秋の始まり朝日の中で
農家と新築 畑の赤土
ここの空気はほんわか甘い
 
 
「山栗(やまぐり)拾(ひろ)い」
 
肥料は腐葉土 自然に出来た
品種は古来の手つかずの
毎年楽しみ 山栗小さくとっても甘く
 
 
「東筑波ハイキングコース」
 
秋の晴れの日 林道 歩道だらだら坂の
キャンプ場からつつじヶ丘へ
白花 赤花 紫花も
 
 
「マウンテンバイク」
 
小さな沢越え細い道
丸顔大汗ヘルメット
聞けば時には担(かつ)ぐとも
 
 
「山の花」
 
低山 気温はあまり変わらず
草花種類は大違い
やはり人の手 入(はい)らぬせいか
 
 
「イノシシの跡」
 
一坪(つぼ)近く斜面掘られて
そばの木の幹(みき)下部に
鼻こすり付けた土湿(しめ)り
 
 
「内神(うちがみ)」
 
家の敷地に祠(ほこら)あり
床屋のおばさん教えてくれた
それは内神様という
 
 
「十月」
 
からっと日差しを避けさえすれば
汗をかかずに歩けてしまう
明るいうちから虫の声
 
 
「筑波山 蜜柑(みかん)園コース」
 
蜜柑園コース
地図にははっきり載っている
人が少ない自然のコース
 
十月ミカンは緑色
ほんのり色づき黄色み帯びて
観光農園お客待ち
 
梅林からの林道と
T字に交わる角近く
車二台の空き地あり
 
林道交わる登山道
少し下れば右手に社(やしろ)
今日の安全手を合わせ
 
登りは細道 赤松の森
尾根沿いくっきり踏(ふ)み跡見えて
アオキの緑が目立つ道
 
尾根の左に沢音響き
急坂下れば水場あり
右にもうっすら踏み跡あって
 
しばらく登れば大岩四つ
二つ目大岩左にまいて
木の根つかんで登りゆく
 
後の大岩迷いの踏み跡
私も迷って岩越え進む
岩を過ぎればもうすぐだ
 
たどり着いたは自然研究路
そこは地味な展望台
四角の目印 人工石が
 
地図にはぶつかる薬王院コースに
この道おそらく尾根から分かれ
尾根をたどれば今日の道
 
 
「花火」
 
二万発
遠くの農道 車の中で
色とりどりの地平線
 
 
「アキアカネ」
 
山道下り木の橋広場
ハンググライダー秋の青空背景に
空を飾るはアキアカネ
 
 
「ツリフネ草」
 
船を吊(つ)ってる細い糸
日当たりの良い山林の
身を寄せ合って赤い花
 
 
「三つ葉アケビ」
 
森の中 登山道
小休止見上げた木の枝
紫の割れたアケビは誰も届かず
 
 
「ソウシ鳥」
 
秋の山道 聞き慣れぬ
華(はな)やかな声 尋ねれば
籠抜(かごぬ)け鳥のソウシ鳥
 
 
「沼」
 
上着がほしい風になり
渡りの鴨(かも)も
混(ま)じり始めて
 
 
「筑波山 薬王院コース」
 
つくし湖は霞ヶ浦から引いた水
そこから寺までハイキングコース
多数停まれる駐車場 お寺にもあって
 
山門登れば工事の終わった本堂鎮座
三重の塔従えて
大きな草履(ぞうり)は奉納品の
 
本堂拝み竜の口からのど潤(うるお)して
力一杯鐘(かね)を打つ
椎の大木震わして男体山にも届くよう
 
林道からの登山道
岩の上には新しい
祠(ほこら)が目印そこから左へ
 
初めの二股(ふたまた)右たどり
立派の木の橋水はなく
枯れ木切る音後ろで倒れ
 
階段登れば林道交差
岩に腰掛け小休止
前回倒木道ふさぎ
 
今日はきれいに片付けられて
分岐(き)を左に自然道
最近切られた大小木が道を塞いで引き返す
 
きれいに整備の木の階段を
後半息切れ急登の
大昔からの積み石の石重ね
 
ここは呼ばれる薬王高原
右への脇道通ってみれば
しばらく登って本道へ
 
紫花の山トリカブト
十本以上も尾根華(はな)やいで
薬王高原お花畑で四季飾る
 
再び階段ぶつかるところ
大石重ねの
自然研究路これの舗装は昭和45年頃
 
男体山より西の峰 名前は知らない
すっきり形そこをたどった
薬王院コース大昔から続いたコース
 
 
「木こりの夫婦」
 
藪(やぶ)の合間に夫婦で仕事
夫がふるうチェーンソー
人はいるかと妻に声かけ
 
 
「大雨の大学祭」
 
靴は中までびっしょりと
アフリカ料理を傘(かさ)の中
グランド雨でも記録会
 
 
「彼岸(ひがん)花」
 
十月半ばはひんやりと
茎だけ残した
彼岸花
 
 
「蝉(せみ)」
 
十月中旬セミがいた
落ち葉の散らばる歩道の上に
お腹を空にまだ生きていた
 
 
「ターボ車」
 
初めてターボ車乗ってみた
音が全然違ってた
ちょっと遅れてうなり出す
 
 
「キノコ取りの人たち」
 
小雨の朝の山の中腹
長靴 腰籠(かご) 手には長鎌(かま)
木が茂り雨には濡(ぬ)れぬと
 
 
「筑波山 国松コース」
 
梅林から蜜柑(みかん)園
続く林道その峠(とうげ)
ススキの茂る登山口
 
砂利(じゃり)が高さ1メートルの
林道沿いに
車三台置ける場所
 
急な坂道4メートルの
踏(ふ)み跡(あと)しっかり残る道
男体山に直登の尾根道たどる国松コース
 
数十年の山桜
林に混じる草付きの道
それが変わる岩付きの道
 
ケルンが積まれる岩の上
私も拾(ひろ)って積み重ね
男体山に近づけば岩は次第に大きくなって
 
形が良くて大きくて
立派な岩が二つあり
ザックと共に写真撮(と)り
 
急なところはロープが二カ所
立ち入り禁止のヒモもあり
赤丸印もありがたい
 
最後の大岩右に巻き
見えてきたのは舗(ほ)装の側面
真ん中の展望台にたどり着く
 
熱湯注(そそ)いで豚骨ラーメン
箸(はし)を忘れて枯(か)れ枝で
きれいな形 日光の男体山が
 
今日は十月十九日
本当の秋の日が来た雨後の
筑波山さえ深呼吸