橋詩(2)

「橋詩」

橋詩(きょうし)の世界は三行詩
五や七 単位のブロックで
色んなものを橋渡し


<橋詩 南陽彰悟   '01年10月19日から。原則として一日二篇>
 
 
 
 
 
「夕方に」
 
夕方に秋と冬とが出会うとき
秋はじっくり根を張って
葉っぱをゆっくり色づかせ
 
 
「秋の草原」
 
朝日を浴びて草原は
暖かさぽっかりふんわり
抱きしめて
 
 
「インターネットカフェ」
 
手ほどきながらの私のページ
癒(いや)しのページと
君が言い
 
 
「三重奏」
 
朝の秋風震わせて
ホオジロにコジュケイさらに
雄鶏(おんどり)までも
 
 
「自然観察の森」
 
吾亦紅(われもこう)
数年前と同じ場所
何代目かと懐(なつ)かしく
「秋のタンポポ綿毛」
 
朝露に光るその様(さま)
芸術の
背景緑のその上に
 
 
「秋の雨」
 
ぷつぷつぷつと夜の雨
うっすら明るい夜の空
思わず身震い秋の夜
 
 
「森のベンチ」
 
カラスが帰るの見上げた後は
一緒(いっしょ)に歌う
夕焼け小焼けと七つの子
 
 
「思い出茶の花」
 
秋の昼 思い出写真の茶の花を
訪(たず)ねてみれば
今はなく
 
 
「散歩道」
 
思い出の道 散歩道
周(まわ)りはすっかり変わったけれど
神社の鳥居(とりい)は昔の光
 
 
「小道の蛇」
 
森の小道の秋歩き
家内の悲鳴に
驚かされて
「蛇の赤ちゃん」
 
二人で辿(たど)る森小道
赤子の蛇が驚いて
急いでくねり空滑(からすべ)り
 
 
「紫峰(しほう)が真に」
 
紫峰が真に紫に
澄(す)んだ秋風
夕焼け時に
 
 
「十月下旬の虫の声」
 
数は減っても十分に
夜風に透明
響きあい
 
 
「コントラスト」
 
ヌルデの葉の上 赤落ち葉
大きな緑にくっきりと
ヌルデさんにも秋伝え
 
 
「気温」
 
気温とはっきり相関あって
冷える夕闇(ゆうやみ)
鳴く虫 少なく
 
 
「刈られた秋の野」
 
刈られた秋の野しばらく後に
露の含んだ目立つもの
それは黄緑葛(くず)の葉っぱが
「今が一番」
 
半月夜空に白く冴(さ)え
秋風薄着にしみるとき
虫の音一番艶(つや)やかに
 
 
「朝に見て」
 
遠くの山を朝に見て
今日は写真を撮りたくて
下むきゃ残る月見草
 
 
「秋の真昼」
 
秋の真昼は白壁が
生き生き輝く
乾いた風の
 
 
「今日登る」
 
遠くから今日登る山眺(なが)めれば
うっすら霞(かす)んで
神秘さ抱(いだ)き
 
 
「筑波山」
 
記憶の薄れた山頂を
クッキリさせた
紅葉(もみじ)の季節
 
 
「点景に」
 
山裾(やますそ)霞む次の朝
点景姿の私たち
思い浮かべて山稜(さんりょう)辿(たど)り
 
 
 
 
 
 
「ケーブルカー」
 
筑波神社の左手奥に
古くて混じる空き家の茶店
古びた階段しっとりと
 
紅葉(もみじ)の駅は二階建て
眼下を眺めて秋気分
そのうち改札告げる声
 
トンネルくぐれば気温は下がり
切り立つ崖(がけ)のその下を
しばらく交差の二台の客車
 
四つ足動物横切って
ゆっくり止まる終点の
御幸(みゆき)ヶ原は風冷たくて
 
古(いにしえ)栄えた五軒茶屋
今はここにも蔦(つた)はいり込み
ロープウエーに押されてか
 
それでもシーズン客多く
尾根の道筋家族連れ
すれ違いにもにこやかに
 
紫(むらさき)筑波はいつまでも
人の心を引きつけて
世の中変われどくっきりと
 
 
 
 
「ふくらはぎ」
 
朝霧をかき分け進めば
昨日(きのう)の山の岩伝い
思い出させるふくらはぎ
 
 
「秋の水銀灯」
 
水銀灯よ
色づく木立を華やがせ
落ち葉の始まり教えつつ
 
 
「目で辿(たど)り」
 
遠目にも細かくたどれる山の端(は)は
君と並んで息切らし
秋風浴びたそのお陰
 
 
「お年寄り」
 
お年寄りでも岩乗り越えて
杖(つえ)突き登る
秋色の山
 
 
「秋の山」
 
山尾根歩くその周り
雲の合間の日が差せば
一瞬色づく様(さま)変わり
 
 
「真っ白茸(きのこ)」
 
辺(あた)りはまだまだ薄闇(うすやみ)の
ひんやり朝風露吸って
真っ白茸が自己主張
 
 
 
 
 
「十月末日の月」
 
月はもう
白さを増して
冬光(ふゆひかり)
「青松を」
 
赤紅葉(あかもみじ)青松通してみる青空は
黒みを増して深くなり
時々流れるすじ雲の
 
 
「写真は」
 
写真撮(と)り
上げるときにも
また一段と
 
 
「地上に」
 
シジュウカラ
地上に舞い降り
秋の朝
 
 
「くしゃみ一つで」
 
くしゃみ一つで
ぎっくり腰さん
目を覚まし
 
 
「朝の茸(きのこ)」
 
枯れ草を
頭にのせて
茸伸び
 
 
「両手両足」
 
両手両足岩つかみ
息切れ息切れ登りゆく
手触(てざわ)り岩が愛(いと)おしく
「双眼鏡」
 
山洗い空気を洗ったその景色
登った風景浮かばせて二つの点景ロープウェー
交差が見える秋の朝
 
 
「神皇正統記(じんのうしょうとうき)」
 
北畠書きつつ眺めた筑波山
変わらぬ姿を澄んだ空気で
城跡わずかで子供は知らず
 
 
「清滝寺」
 
鈴の帯(おび)下
白猫寝そべる
清滝寺よ
 
 
「探して」
 
虫の音探して夜歩く
今日の夜風の冷たさよ
短く鳴く声うれしくて
 
「朝霧」
 
朝霧薄く黄色のポプラ
すっくとそびえる曇り空
穏(おだ)やか風の秋景色
 
 
「水銀灯」
 
紅葉照らす水銀灯の
白い光に
冬を見た
「草原ランナー」
 
雄(おす)キジ走る草原を
赤顔ますます赤くして
澄(す)んだ空気をかき分けながら
 
 
「町のそば屋さん」
 
駐車場無く古い町並み
小さなそば屋は出前もやって
家族で守る家伝の味を
 
 
「初霜か」
 
黒ずみ垂(た)れる柳の葉っぱ
いつの間にかの
初霜か
 
 
「暖房に」
 
暖房に全身筋肉ふやけてしまい
心の底まで
ふんわりと
 
 
「朝日の」
 
朝日のつぶつぶ頬(ほお)あたり
秋の深まり
ささやきながら
 
 
「夜に」
 
虫の音聞こえぬ秋の夜は
うっすら冬が地をはって
秋と対話を過ごす夜
「白に紅葉(もみじ)」
 
朝に開いた白茸(きのこ)
頭にそっと舞い降りた
それは縮(ちぢ)れた紅葉の葉
 
 
「朝の湯気(ゆげ)」
 
朝日を背に受け湯気立ち上(のぼ)る
どこで生まれたものかと見れば
花の終わったキンモクセイの
 
 
「レーザー光」
 
雲多い日暮れに探す
星影は
深い緑のレーザーの
 
 
「柿の葉」
 
白露の草に落ちてる柿の葉よ
緑 黄色に朱色も混じり
思わず切ったシャッターの
 
 
「双眼鏡の」
 
丸い視野には筑波山
稜線(りょうせん)横切る電線に
朝の雀が陽(ひ)を浴びて
 
 
「身近に」
 
身近に温泉あるものだ
探せば見つかる日帰りの
インターネットのありがたさ
「朝のモズ」
 
山見て雲見て空を見て
キキキと笑うモズの声
立ち去る姿を梢(こずえ)で眺(なが)め
 
 
「松葉の枯れ葉」
 
松葉の落ち葉は目立たぬけれど
冷たい風に積み重なって
しっかり漂(ただよ)う秋景色
 
 
「羽の風に」
 
朝のカラスは舞い降りて
落ち葉も浮かぶ
羽の風
 
 
「黄金の道」
 
記憶の薄れた道辿(たど)る
心ときめく道辿る
乾いた秋の陽(ひ)さんさんと
 
 
「小春日和(こはるびより)」
 
薄日射(さ)す小春日和の
柳の枝は
ゆっくり小さく揺れるだけ
 
 
「冬は」
 
冬はこっそり車の窓に
薄くうっすら張り付いて
夜の間に置き手紙
「中神橋(なかかみはし)」
 
川幅広くて水少なくて
何年ぶりかの橋の上 景色の移った橋の上
曲がりくねった細道に覆(おお)い被(かぶ)さる枝そのままに
 
 
「記念と芸術」
 
記念は狭くて深みあり
芸術広々流れゆく
どちらも生きてる人々に
 
 
「ゆりの里」
 
新しく賑(にぎ)わう小さな温泉は
現代的なシステムでほっとするのは
夕映(ゆうば)え浮かばす山頂の人
 
 
「初霜」
 
朝日の中で溶けてゆく
形を残して溶けてゆく
緑の葉っぱにしがみつき
 
「小川の」
 
小川の散歩はご挨拶(あいさつ)
青鷺(あおさぎ) 小鷺と顔合わせ
ちょっとゴメンとご挨拶
 
 
「鴨(かも)渡る」
 
朝 鴨渡るVの字で
青空渡り
雲渡り
「秋の土手に」
 
枯れ草に混じって緑の高菜(たかな)あり
自転車で少しを集めるおばさんの
周(まわ)りも暖か秋日差(ひざ)し
 
 
「源流」
 
花室川(はなむろがわ)の源流は今まで幾度か憧(あこが)れた
話に聞いて胸ふくらませ
辿(たど)る土手道 秋の中
 
 
「溶け込(こ)んで」
 
朝の山並み溶け込んだ
時には閉じる瞼(まぶた)の奥に
空気に混じる山景色
 
 
「お年寄り」
 
お相手してると気が休まって
こういう風に
年取りたくて
 
「秋のある朝」
 
カラス声とってもノンビリほんわかと
風吹かず
遠くの山も霞(かすみ)の奥に
 
 
「メタセコイア」
 
秋に色づく針葉樹
青空めがけ燃え上がる
古代の樹木の精気(せいき)見た
「墨絵のように」
 
墨絵のように山描く
うっすら淡く
北の秋空
 
 
「夕暮れ雨を」
 
夕暮れ雨を知らせるものは
かさこそかさこそ
落ち葉さん
 
 
「夜の雨」
 
夜の雨
山を引きつけ
肌見せて
 
 
「19階」
 
雨上がり秋の乾いた日差しの中で
見下ろす風景 白光り
地中海での景色にも似て
 
 
「落ち葉を」
 
色づいた落ち葉を集める人の顔
仕事と言えど
満ち足りて
 
 
「農機具に」
 
農機具が引いてる荷台に初めて乗って
意外な速さと振動に
子供心に戻ってしまい
「メタセコイア(あけぼの杉)」
 
夜明けの空のシルエット
ポプラと長年思っていたが訪れ手に取り
メタセコイアの
 
 
「研究学園都市」
 
林と森だけ変化して
ひなびた家並み変わらずに
どちらが良いかは人それぞれに
 
 
「昔からのお店」
 
並んだ缶詰さびていた
台の上にはホコリも積もり
店先主人が座ってた
 
 
「ほろ酔い紅葉(もみじ)」
 
ほろ酔いで落ち葉を踏みつつ
見上げる紅葉
私も染まる心まで
 
 
「オートキャンプ場」
 
細道ロッジも落ち葉が流れ
だーれもいないキャンプ場
コーヒーハウスに人影一人
 
 
「道は」
 
道は歩いて味わって
車で通れば
変哲もなく
「十二月二日」
 
今日の朝風 月替わり
山見る頬(ほお)も
引き締まる
 
 
「ネオンにも」
 
草原向こう
点滅残るネオンの屋根にも
うっすら朝日が近づいて
 
 
「イチョウの葉」
 
春の陽(ひ) 夏の陽 秋の陽を
体いっぱい吸い込んで
こんなに明るい黄色となって
 
 
「雨の朝」
 
山は見えぬと思っても小雨に濡(ぬ)れて
靄(もや)の中
近くの林が山のよう
 
 
「耐ピッキング錠」
 
縦型に構えたものを横型に
いつになったら
慣れるやら
 
 
「種類は違うが」
 
雀と椋鳥(むくどり)餌(えさ)つつく
混じり合っての餌探し
ここは平和な芝(しば)の上
「水たまり」
 
ヒヨドリ群れてアスファルト
喉(のど)渇(かわ)きそろって水飲み慌(あわ)ただしくも
小鳥の世界の秋景色
 
 
「十二月上旬の柳」
 
黄色みがかった柳の葉
年の瀬迫った雨空を
飾る緑も残しつつ
 
 
「今の自転車」
 
車輪の真ん中 発電機
車の真ん中 ギアあって
おまけにランプは自動で点(つ)くの
 
 
「師走(しわす)朝」
 
草むらが
湯気を昇らす
師走朝
 
「緑現(あらわ)す」
 
雨上がり
緑現す
遠い山
 
 
「十二月の陽炎(かげろう)」
 
小川の上の白い橋
レンズで覗(のぞ)くその姿
陽炎りっぱに姿見せ
「霜が」
 
霜降りた草原の上
真っ黒カラスが舞い降りて
口には白い大きな餌(えさ)を
 
 
「筑波山 大御(おおみ)堂」
 
百三十年鐘(かね)戻る
関東越えて全国に
除夜を伝えるNHKの
 
 
「のどかに」
 
雲止まり風止まり
のどかに響く
朝の鳥声
 
 
「観測タワー」
 
昼間に真下で見上げた塔を
夜は遠くで光を眺め
いつでも目に付く懐(なつ)かしさ
 
 
「朝のメジロ」
 
枯れた葉っぱの隙間(すきま)から
黄緑メジロが現れて
青空背景ちょこちょこと
 
 
「冬の白」
 
コンクリートは明るくて
塔 アンテナは白光(しろひかり)
風を忘れる乾いたまぶしさ
「初霜柱」
 
霜柱
さくさく食べる
足の裏
 
 
「十二月の桜」
 
風が無くても冷える日に
桜がちらほら咲いていた
いつもの場所に咲いていた
 
 
「クローバーの霜」
 
まだまだ緑のクローバー
今日の白霜びっしりと
舌でなめ溶かしてあげて
 
 
「夕日が描く」
 
ケーブルカーがランプとなって
山稜(りょう)流れ交差して
夕日が作るランプの炎
 
 
「冬の朝雨」
 
冬の雨 細々と
それでもしっかり
飛沫(しぶき)をたてて
 
 
「雨上がり」
 
濡れて透明空気を透し
冬の星座が冴(さ)え渡る
雲の隙間(すきま)で姿見せ
「十二月のツグミ」
 
グランドに
朝に群れ餌(えさ)を探すよ
濡(ぬ)れた枯れ芝
 
 
「指折りの紫」
 
今日の山色際(きわ)だって
夕日に照らされ紫染まる
こんなに赤みが希(まれ)なほど
 
 
「朝焼け紫峰」
 
東の空は茜(あかね)雲
いつも見慣れた双峰も
朝の紫初めての
 
 
「師走(しわす)でも」
 
雲もなく風もなく
カラスの声もほんわかと
こんな日もある師走朝
 
 
「白鳩(はと)」
 
真っ白草原朝日浴び
遠山眺めるレンズの視野に
白鳩一羽舞い上がり
 
 
「三日月湖」
 
歴史を刻(きざ)む三日月湖
そばには大きな温室あって
新たな鼓動(こどう)がうねりつつ
「師走のホオジロ」
 
師走のホオジロつがいで留まり
短く囀(さえず)る
枯れ草の上
 
 
「八十七歳」
 
車も運転
俳句も作る
元気を与えるお爺(じい)さん
 
 
「冬を伝える」
 
足裏に
冬を伝える
霜柱の音
 
 
「冬光(ふゆひかり)」
 
窓を透して見る三日月は
真っ暗 空に黄色くて
松葉で飾られ冬光
 
 
「波打ちながらも」
 
霜白く草原の上ヒヨドリは
一声鳴いて
波打ちながらも一直線に
 
 
「年月」
 
すべてを飲み込み消化して
忘却の島へと押し寄せ
切なさだけが心に残る
「年末演芸会」
 
今度 停年人たちの
姿が目立つ
忘年会の
 
 
「雪予報」
 
雪の予報の夕暮れは
赤みがかった
雲覆(おお)い
 
 
「雨上がりでも」
 
山霞(かす)み
日本画世界
雨上がりの朝
 
 
「我が家のトップニュース」
 
禁煙がトップを占める
この年は
我が家は穏(おだ)やか良い年で
 
 
「たき火の煙」
 
冬晴れの澄(す)んだ朝風貫(つらぬ)いて
たき火の煙は
折れ曲がる上空直角くっきりと
 
 
「日先神社」
 
三十年前プロペラが
掛かった軒下(のきした)今もそのまま
つるした髪の毛変わらずに
「春の小川」
 
風のリボンを歌った川も
ほとりの小道もセメントに
でもでも留(とど)める深い思い出
 
 
「サンタクロース」
 
さびれた古い商店街の
赤い衣服でカシワを運ぶ
若い跡継ぎがんばれと師走の風が勢いを
 
 
「跨線(こせん)橋」
 
三十年間塗り替えなしの
塗装のはげた跨線橋
教えてくれた酒屋の酒で昇って一杯語りかけ
 
 
「駅前再開発」
 
年末続く家こわし
何十年もの思い出が小さな家にも充(み)ち満ちて
元の形は辿(たど)れないけど
 
 
「冬雀(すずめ)」
 
体温高い雀さん
丸々まると膨(ふく)らんで
揺れる小枝で一休み
 
 
「木立(こだち)を透(とお)して」
 
木立を透して見る山の
青さが引き立つ
年の暮れ
「2002年正月」
 
正月寒波の厳しさも
枝先残る柳のぱっぱ
年明け日差しに小さな春が
 
 
「オナガ」
 
正月の澄んだ空気を貫(つらぬ)いて
くっきり山の真ん中を
飛ぶのは朝のオナガ鳥
 
 
「年は変われど」
 
年は変われど風景は
去年のままに佇(たたず)んで
冬の日差しに包まれながら
 
「曇りの枯(か)れ野」
 
曇りの枯れ野は鋭さ満ちて
飛ぶ鳥さえも
寒々と
「白さ」
 
乾いた季節
白壁の白さまぶしい
冬の青空
 
 
「成人」
 
成人になったばかりの
お正月若さも晴れ着も
まぶしくて
「先輩」
 
筑波山にも見守られ
自然に溶け込む
姿あり
 
 
「赤富士」
 
正月にうっすら夕焼けシルエット
赤みを確かに帯びていて
赤富士生まれて初めての
 
 
「霜打たれ」
 
霜打たれ
緑を残す
草もある
 
 
「曇りを」
 
曇りは歩く足早に
体の芯(しん)から暖まり
冬を忘れる散歩道
 
 
「朝日浴び」
 
夜の雨
朝日を浴びて
まろやか湿(しめ)り
 
 
「リサイクルショップ」
 
重たいものを抱えていって
貰(もら)えるものは百円で
それでも嬉(うれ)しいリサイクル
「ゆっくり飛ぶのは」
 
黒いカラスが白餌(えさ)くわえ
ゆっくり飛ぶのは
寒い朝
 
 
「柳のおめかし」
 
細枝すべてを取り去られ
ごつごつ幹にされたのは
近づく春のおめかしよ
 
 
「風が作った松」
 
白さが光るコンクリートを見上げれば
青のキャンバス広がって
風が作った松の枝
 
 
「物干し竿(ざお)」
 
これさえいろいろ進歩して
伸縮型にステンレス
おまけにアルミの軽量版も
 
 
「朝の蜘蛛(くも)」
 
凍(こご)えてか
朝の蜘蛛さん糸の上
身じろぎもせず生きてはいても
 
 
「正月気分」
 
土日が二回になったなら
正月気分も
薄れていって
「新しいパソコン」
 
液晶画面は明るくて
付いてこないよフロッピ−
これからいよいよXPを
 
 
「日の長さ」
 
日の長さ
一月中旬
延(の)び分かり
 
 
「朝のムクドリ」
 
枯れ野でも
朝のムクドリ
群れ遊び
 
 
「保護員」
 
ヒシクイ守るシルバーさんは
年はとっても威勢良く
プレハブ小屋はやかん湯気噴(ふ)く
 
 
「成人の日」
 
今度祝った人たちが
一生涯を過ごすまで
日本が戦争せぬように
 
 
「狂牛病」
 
おかげで食べ物いろいろと
バラエティにも富んできて
鯵(あじ)のフライも久しぶり
「朝焼けが」
 
鳥が舞台に現れて
松の黒枝飾られる
朝焼け長く続いた冬の
 
 
「手術室」
 
緊張を
紛(まぎ)らわすため
部屋の外 待つ人思い
 
 
「CD-Rを初めて」
 
失敗多いと聞かされて
こわごわ初めて焼いたけど
七枚すべてがうまくいき
 
 
「風のない冬」
 
風のない朝 空気が止まり
震わすものは
小さく高いホオジロの声
 
 
「はつらつさ」
 
はつらつさ
周りのものにも
元気を与え
 
 
「FMアンテナ」
 
二十五年も雨風(あめかぜ)に
支柱はずいぶん錆(さ)びたけど
生活そっと見守り続け
「数年ぶりに会った人」
 
色は少しは白くなったが
近況話し思い出話
あっという間に三十分も
 
 
「昼間でも」
 
冬の青空 飛行機を
双眼鏡で眺(なが)めれば
翼に二つ点滅灯が
 
 
「コードとケーブル」
 
部屋の片隅丸まって
何十年間働き続け
やっと仕事を解放されて
 
 
「柳の小枝を」
 
切られた小枝
昨夜の雨粒並んで留(と)まり
遠くの紫峰もかすんで見つめ
 
 
「寒雷」
 
寒雷の光と雨足激しくて
寒さの力削(そ)がれることが
心に浮かぶ一月末の
 
 
「昨日(きのう)の嵐は」
 
昨日の嵐はどこいった
枯れた松葉の塊(かたまり)に
澄(す)んだ朝空その奥に
「ゲートボール」
 
風の止まった日だまりで
ゲートボールは意地悪ゲーム
スティック持った老人言った
 
 
「紅梅二本」
 
紅梅二本八重咲きの
神社の隣の民家の庭に
こんな時ある一月下旬
 
 
「白霜」
 
切られたサザンカ赤花つけて
花びら受ける白霜を
キジの朝鳴き背景に
 
 
「麦(むぎ)の緑」
 
黒土湿(しめ)るその上に
麦の緑が勢揃(せいぞろ)い
麦の秘密は何だろう
 
 
「枯れ野」
 
枯れ野に仮の道できた
砂と砂利(じゃり)との道できた
枯れ野が変わる前触れの
 
 
「北風止まる」
 
北風止まる土手斜面
そこには緑
春は芽吹いて一月下旬
「冬のホオジロ」
 
朝の青空突き出る松に
顔に墨塗るホオジロさんの
得意顔歌い出し
 
 
「昔からの電気屋さん」
 
個人のお店に入(はい)ったら
奥から出てきていらっしゃい
こんな雰囲気 心が解(ほぐ)れ
 
 
「霜とメジロ」
 
霜でコチコチ草原を
メジロの鳴き声転(ころ)がって
姿も見せて春の色
 
 
「南風」
 
ヒヨドリ大きく波打って
乗ってる朝風
南風
 
 
「残り風」
 
夜通しうなった冬嵐
四枚残った柳の葉っぱ
涼しげ揺れる残り風
 
 
「寒の月」
 
夜空にぽっかり寒の月
じっと見つめて
眩(まぶ)しくて
「霜柱」
 
直角に
曲がった光る霜柱
溶けたわけでなく
 
 
「山の化粧は」
 
白雲 裏から乗り越えて
ゆっくり降りて山化粧
みるみる変わる山景色
 
 
「動くものは」
 
動くもの野鳥だけ
そんな穏(おだ)やか
冬の色
 
 
「昼の散歩」
 
陽(ひ)は照れど
風冷たくて
急ぎ足
 
 
「二月一日」
 
空には白い朝の月
かすめて昇(のぼ)る
煙は暖房
 
 
「歩くと」
 
車では見ていて見てない
景色でも
歩けばくっきり浮かんでき
「笹(ささ)」
 
今朝(けさ)の山形(やまかた)遠くなり
冬風伝えて
笹ふるえ
 
 
「懐(なつ)かしい家」
 
蜘蛛(くも)糸たれる電灯のひも
ソファの上にはカレンダー十五年前日付を保ち
それでも明るい冬の陽差しこみ
 
 
「春の小川」
 
三十年ぶりたどる道歌った歌を声出して
いろいろ変わってしまったけれど
子供の元気さ二人の近さは変わらずに
 
 
「昔の写真」
 
古い写真は色変わり
中身は貴重で思い出が
大きく伸ばそう宝物
 
「梅の香は」
 
梅の香を知らない人へ伝えよう
花を車の中置けば
酔うほど香って春気分
 
 
「白セキレイ」
 
黒々土が掘り返されて
真っ白ぴょこぴょこ
白セキレイの
「歯医者さん」
 
明るくて絵があって
サロン風の歯医者さん
行くのが楽しく痛くても
 
 
「物かたづけ」
 
早起きの
物かたづけの
爽(さわ)やかさ
 
 
「春が」
 
一足先に春が来た
体の芯(しん)からもみほぐされて
心も軽く春のせい
 
 
「朝の汗」
 
朝の運動気分良く
うっすら汗がにじみ出て
二月の朝を忘れてしまい
 
 
「暖冬」
 
冬の星空眺(なが)めても
星はのんびり
瞬(またた)きもせず
 
 
「筑波山」
 
うっすら霞(かすみ)の朝筑波
めがけて飛ぶは
二羽のムクドリ
「こんな日も」
 
今日の夜風は春風の
こんな日もある
二月上旬
 
 
「一足先に」
 
朝日差し
一足先に
春光(はるひかり)
 
 
「複雑気持ち」
 
何十年前思い出し
古い物たち捨てるとき
心はセンチとかき混ぜられて
 
 
「古徳沼」
 
今日の白鳥羽ばたき多く
日差しも明るさ増してきた
春の帰りを体が知って
 
 
「冬季オリンピック」
 
美しい舞台 若者の躍動(やくどう)よ
見る人たちに与える物は
生きる喜び力であった
 
 
「二月の松かさ」
 
二月の松かさ道の上
からからからと干(ひ)からびて
傘を大きく開きつつ
「梅祭りを」
 
今年の梅は溌剌(はつらつ)と
祭りを待たずに
咲き誇(ほこ)り
 
 
「バレンタインチョコ」
 
朝の目覚めのチョコレート愛情こもった文(ふみ)読んで
余韻(よいん)とともに食べるチョコ
円(まろ)やかふんわり後味(あとあじ)残る
 
 
「電気店」
 
昼間の広い電気屋さんは
人がいなくて明るくてあっという間に一巡(ひとめぐ)り
家電の今を頭に入れた
 
 
 
 
 
 
「セキレイ」
 
白か背黒か知らないけれど
セキレイ二羽が青い空さえずりながらのランデブー
まだまだ季節は二月朝
 
 
「魚市場の」
 
魚市場片隅食堂 海鮮丼を
飯は大盛り刺身もつややか
豪快食べて魚見て回る
 
 
「夕焼けを」
 
夕焼けを双眼鏡で覗(のぞ)いてみれば
茜(あかね)の霧のまっただ中に
糸に引かれて迷い込み
「春風と」
 
春風と間違うほどの朝の風
空は青くて
山近付いて
 
 
「春霞(はるがすみ)」
 
うっすら濃淡きめ細かくて
遠くの山も春化粧
まだまだ月日は二月でも
 
 
「旧友」
 
アンテナ見上げて確かめて
郵便受けと古びたロビー
出てきた顔はにこやかに
 
 
「お年寄りは」
 
お年寄りには家主が貸さない
世間知らずの私の頭に
がーんと響いたこの事実
 
 
「白壁に」
 
澄んだ冬の陽くっきりと
白壁とらえた横姿
横目で眺めて形知り
 
 
「冬のうなり」
 
西風強くて冬うなり
地表をかき混ぜ巻き上げて
体の芯(しん)まで感じるものは
「朝のツグミ」
 
朝のツグミの朝ご飯
土を背丈(せたけ)にほおり上げ
遠くのホオジロ聞きながら
 
 
「星空を」
 
星空を見つめることを忘れていたら
心がきっとかさかさの時
見つめりゃ心に天の川
 
 
「段組」
 
段組を覚えた夕は嬉しくて
早速使う
橋詩集
 
 
「生気(せいき)を」
 
体の芯(しん)から熱が出て
冷えた空気で風もなく
生気を感じるそんな朝
 
 
「夜空は」
 
今日の半月おぼろ月
夜空もついに
春景色
 
 
「二月でも」
 
すそ野の消えた筑波山
風なく墨絵の姿見せ
二月末でも春霞(はるがすみ)
 
 
「梅の香りも」
 
民家の細道 日だまりの
こもった香りに花探し
梅に気づいた高(たか)香り
「小さな酒店」
 
細道角の酒屋さん看板古びて文字消えて
主人はとても話し好き         明治の祖父(じい)さんからの店
 
 
「朝ガラス」
 
ぽかぽか日差しの朝ガラス
空気もとろりと溶けていて
鳴き声しっかり力入り
 
 
「牛久(うしく)沼」
 
牛久沼ほとりの土手道
舗装はしてない自然道
淡水真珠の養殖の
 
大サギ青サギ川ウなど
古びて水載せ岸の船
小さな釣り船時止まり
 
妻と歩けば混ざり合う
三十年前夏の日と
思い出空間煌(きら)めいて
 
橋変わり住宅増えても
変わらぬものは水の形と知る二人
変わらぬものは玉の味して心に沈む
 
昔は木の橋 土橋の上で
撮った写真と同じ場所
シャッター切った四回ほども
 
食べたウナギは伊勢屋さん
ここも木造 水の上三十年前うっすらと
四階建てになったのは昭和五十年
 
橋を渡れば北風曇り
肩抱き合って辿(たど)る土手
風避け降りるは農道の早足帰る舗装道
 
子供の野球も早終わり
車でゆっくり土手の上
送電線も昔のままを
 
牛久のウナギの店減って
残るはたったの五軒ほど江戸から
続いた牛久亭 今は場所さえ分からずに
 
 
「筑波梅林」
 
風は止まってぽかぽかの
二月末でも花盛り
紅梅華(はな)やか咲き乱れ
 
展望茶屋も真新しくて
周りを囲むピンク花
お茶のサービス携帯コンロ
 
岩の坂道木屑(くず)がまかれ
ふかふか優しい足の裏
しばらく登れば汗ばむほどの
 
舞台も移り店移り
藤 萩 菖蒲(しょうぶ)も苗植えられて
年中人が集まるように
 
梅茶のサービス毎年の
今年は暖か外で飲み
白花まだまだ三分咲き
 
地元の手作りハムの店
筑波の太鼓(たいこ)に揉(も)まれつつ
花とハムとの混じり合い
 
 
「タバコをやめたら」
 
今年の梅はよく香り
近くの梅も梅林も
去年の八月禁煙のせい
 
 
「ツグミ」
 
山陰消えた冬の朝
野原のツグミが姿見せ
愛(め)でつつ眺める双眼鏡を
 
 
「電動歯ブラシ」
 
電動歯ブラシ進歩して
二年もたてば新型の
歯ぐきと歯とが長持ちすれば
 
 
「鳥の声」
 
雲は低くてどんよりと
そこにキジ声鋭く通り
雄鳥(おんどり)遠くで又のんびりと
 
 
「ヒバリの初さえずり」
 
ヒバリが鳴いた二月末
ずっと漂(ただよ)い目で追って
すーと降りる畑上
 
 
「ジンチョウゲ二つ」
 
ついに咲き出すジンチョウゲ
鼻近づけて頬(ほお)近づけて
小さな春を
「友が来て」
 
十年前と変わらずに
にこにこ笑顔の小太りの
将来と今のこと
 
 
「研究会」
 
久しぶりでの研究会は
海老センかじって和(なご)やかに
四時間半もいつの間にかに
 
 
「上と下」
 
三月一日梅林
木の枝 芝と
花盛り
 
 
「ヒバリ」
 
掘り返された田圃(たんぼ)から
昨日(きのう)と異なる田圃から
飛び立つヒバリは囀(さえず)り上手
 
 
「コンパクトカメラ」
 
人を追っかけピントを合わせ
露出も合わせるコンパクト
いつまでたっても進歩は続く
 
 
「カッパ」
 
カッパの石碑(せきひ)の牛久沼
カッパの話は途絶(とだ)えがち
子供は知ってる? キュウリ好き
「伊賀七(いがしち)」
 
今でも新鮮の五角堂
大きな木作り和時計も
江戸の時代の暖かみ
 
 
「明恒(めいこう)パール」
 
始まったのは二十一年前のこと
淡水真珠の社長さん
話したことは水のこと
 
 
「公民館」
 
伊賀七時計一部屋の民芸館の
風情(ふぜい)あるそばを流れる
谷田川は牛久の沼へとつながって
 
 
「空気も春の」
 
散歩の景色もゆらゆらと
陽炎(かげろう)表に姿見せ
空気も春のうきうきと
 
 
「朝の白セキレイ」
 
黒土の上
泥(どろ)に染まらず白羽は
飛び跳ねつつもなぜに汚れぬ
 
 
「オオイヌノフグリ」
 
真っ青(まっさお)花びら
霜まぶし花閉じ耐える
寒戻り
「まちかど蔵(くら)」
 
水戸黄門も伊達政宗も
通った折れた細い道
今に伝える江戸の蔵
 
 
「亀城(きじょう)」
 
真新しくて東の櫓(やぐら)
お堀の水面春の色
猿さんの頬(ほお)赤々と
 
 
「博物館」
 
昔の機織(はたお)り藍(あい)染めの
今に伝える町の女(ひと)
帰りにもらった綿の種
 
 
「古い町並(まちな)み」
 
店幅同じ道幅同じ
角角曲がった道歩き
店主に道聞き声聞けば町の魂感じられ
 
 
「谷田部(やたべ)の旧道」
 
人影絶えた店並みの
閉まった店も数多く所々に元気よく
黄緑大福 草餅をこの味続いた百二十年
 
 
「愛宕(あたご)神社」
 
急な階段手すり付き
小さな社(やしろ)に広い境内
ほうき跡近所の人の心伝わり
「栄通り」
 
米屋酒屋に薬局と食料品も
電気屋と医院と歯科が
和菓子もあってほっとして
 
 
「般若(はんにゃ)寺」
 
古い釣り鐘(がね)そのままに
以前はあった茅葺(かやぶ)きの家
残るもの残らぬものも美しく
 
 
「軽自動車」
 
種類も増えて大きくなって
装備もいろいろ自動化されて
値段も結構高くなり
 
 
「販売店」
 
接客態度も店により
ドライなところと親切な
売り上げずいぶん変わるだろうに
 
 
「牛久シャトー」
 
真っ白明治の建物に葡萄の姿が描かれて
古びた酒樽(さかだる)記念館
板垣退助ここで飲む
 
 
「銅鐘(どうしょう)」
 
平安の時代の鐘の音聞きたくて
ごくごく軽く突いてみた
君と二人で永遠の音を
「大聖(だいしょう)寺」
 
春の日浴びて人一人小さな八十八カ所も
自由に突ける昭和の鐘(かね)を
メタセコイアも震えるほどに
 
 
「老人の夢」
 
夢は昔の背景で
団地もなくて山ばかり
一緒に話したお年寄り
 
 
「七十七歳」
 
鉄道マニアのご老人新駅新線出来たなら
カメラ携(たずさ)え飛び歩く
元気の秘訣は好奇心
 
 
「朝の光」
 
葉っぱの照(て)りに春を見た
いやいや光をよく見れば
それは立派に初夏の味
 
 
「ぼけの花」
 
匂いにひかれてジンチョウゲ
隣にひっそりぼけの花
白と紅との色暖かく
 
 
「ツグミ」
 
明るい芝生のツグミさん
ちょちょと歩いて空見上げ
何を一人で考えていて
「椅子」
 
椅子の塊そこから一つ二十年前借りてきた今日はその椅子塊へ
戻され椅子は何想う
 
 
「春の霧雨(きりさめ)」
 
からから乾いた春の精
目にははっきり見えないほどの
霧雨満ちる春の朝
 
 
「ツグミとムクドリ」
 
ツグミは一人でいることが
ムクドリいつでも多人数
どちらも良いのさそれぞれで
 
 
「八重の紅梅」
 
今年は早くも過ぎ去った
残った紅梅食べてみた香り伝わり
部屋に戻って後味染(し)みた
 
 
「フキノトウ」
 
フキノトウ見つけた喜び目をやれば
雄キジさん春に浮かれて
長散歩しっぽは水平保ったままに
 
 
「スモモ」
 
白い花びら食べてみた
春の刺激の新鮮さ
口に運んだもう一つ
「灰色チュウヒ」
 
白く映(は)えてる上半身を
野焼きの黒の草原に
揺れるレンズの視野の中
 
 
「朝の声」
 
遠くで響く車音(くるまおと)
キジの声カラスの声も明るくて
メジロの問いかけ今年は初めて
 
 
「今年の花は」
 
桜の開花は記録的
一度も雪は降らなくて
三月中旬開花の知らせ
 
 
「スミレ」
 
三月中旬スミレが咲いた
北風止まり日当たり良くて
五つも六つも一度に咲いた
 
 
「ソメイヨシノ」
 
桜の花が大きく泳ぐ
双眼鏡の青空の中
今日の北風うなりを立てて
 
 
「送別会」
 
懐(なつ)かしい顔リボンを付けて
話せば昔を思い出し
花束手にして拍手を受けて
「朝桜」
 
襟裳岬(えりもみさき)を歌いつつ
歩く桜はヒヨドリが
伴奏付けて もの悲し
 
 
「春雨(はるさめ)」
 
昨日(きのう)の桜は土埃(つちぼこり)
今日の暮れには春雨の
花びら自然を驚いて
 
 
「ミックスな味」
 
ソメイヨシノを辛夷(こぶし)の花に
そっと重ねて口はこぶ
それは西洋お菓子の風味
 
 
「大池(おおいけ)の桜」
 
代替わり桜は今は高校生の
空気は澄(す)んで筑波山
写す水面(みおも)をカワセミ低く
 
何にも変わらぬ道辿(たど)り
校庭なつかし金次郎
タワーは残る八分目までが
 
店閉めた酒屋の軒先酒の箱
雑貨の店は戸閉めて久し
檜(ひのき)は葉っぱに花付ける
 
静かな溜(た)め池魚の輪一つ
ここの地名は山口そのもの
道細く山へと消える
 
ブリーダー今は空き家の
檻(おり)のこる
犬の遠吠えいつの日か
 
古びた石段何も変わらず
しばらく話す娘さん
鬼子母神(きしぼじん)は変わったと
 
灯籠手洗い社(やしろ)もいっしょ
桜の老木親しく迎え
掲げた古絵は三十年もそのままに
 
裏残る防空壕(ごう)の穴二つ
回りの林はすっぽり消えた
明るくなった鬼子母神
 
大きな墓地は十年前に
整地はされたが墓はなく
飾っているもの桜の木
 
時代の急流ここには無くて
山懐(やまふところ)の日だまりの
仏が与えた散歩道
 
 
 
 
 
 
「百年桜」
 
幹(みき)違う黒々むくむく幹違う
花いっしょ清らか色めき薄ピンク
年取って気持ちは二十歳の桜の木
 
 
「どぶ川桜」
 
町の真ん中 新川の
辺(ほとり)の桜の花冴(さ)える
花びら間の水の色墨の色へと浄化され
「山桜」
 
吉野の山は山桜
古い歌のはこの花で
真っ白清楚で朝風ふるえ
 
 
「小雨(こさめ)の夜桜」
 
うっすらと赤みを帯びた空の下(もと)
滴(しずく)をたたえた山桜
小雨に息して白光り
 
 
「福岡堰(ぜき)の桜」
 
水面浮かぶ散り桜
土手の散歩は花天井(てんじょう)の
昔ながらのカラオケ集(つど)い
 
 
「金屏風(きんびょうぶ)」
 
今日の夕日は金屏風桜の花を引き立てて
逆光の体を透(す)かした美しさ
変化の速い色舞台
 
 
「花を並べて」
 
ソメイヨシノに山桜スモモの花は小さくて
三つ並べて手のひらに
これが大きい順の花
 
 
「満月桜」
 
枝いっぱいの桜花(さくらばな)
隙間(すきま)に満月入れてみた
去年も今年も満月のこんな贅沢春の夜
「葉よりも」
 
花の数
葉よりも増えて
山桜
 
 
「友送り」
 
桜が盛りの曇り空
友を見送り自転車の
花びら転(ころ)げる春の午後
 
 
「ウグイス桜」
 
桜満開 道が真っ白染まるほど
ウグイス見に来て艶(つや)やか声を
コジュケイまでも浮かれ出し
 
 
「向上庵(あん)」
 
山襞(ひだ)奥の木立の間
不揃(ふぞろ)い階段登り詰め
枝垂れ柳の老木が主になってる庵鎮座
 
 
「四月一日」
 
朝風が
花びら転(ころ)がす
朝日浴(あ)び
 
 
「池の魚のお花見は」
 
辺(ほとり)の桜は花びら浮かべ
群れなす小魚浮き上がり
花びらすっと漂(ただよ)わせ
 
 
「花の目覚め」
 
春の寝坊の山桜
朝風揺(ゆ)らして
キジの朝鳴き
 
 
「春霞(がすみ)」
 
空青く山消えて
春が来たよと
春霞
 
 
「山桜」
 
葉書の形に花付けて
昨晩散らした花びらと
朝の姿を写真に収(おさ)め
 
 
「空気感」
 
菜の花土手の橋の上
空は青空春の日が景色はうっすら霞んでて
これが暖か空気感
 
 
「花びらどこから」
 
ひとひら花びら土の上
どこの桜か見渡せば
遠くの遠くの朝風乗って
 
 
「菜の花の土手」
 
花室川の土手の内 黄色の花が
風なびく誰が種をまいたやら
澄(す)んで一途(いちず)なその心
 
 
「北アルプス」
 
澄(す)んだ空気に雪化粧
北アルプスを見下ろして
さっと見渡し申し訳なく
 
 
「福井の桜」
 
日本海注(そそ)ぐ川両岸は
桜の祭りの真っ最中の
雪解け水はひんやりと
 
 
「永平寺(えいへいじ)」
 
巨木の杉に囲まれて鐘(かね)は静かに
太鼓に合わせた読経(どきょう)の音色
テンポは速くて若者好み
 
 
「座禅草」
 
永平寺
花咲いてぴったりした場所
座禅草
 
 
「七百年の杉」
 
湯飲みに書かれた永平寺
熱いお茶握(にぎ)りしめ
そそり立つのは杉姿
 
 
「東尋坊(とうじんぼう)」
 
飛騨(ひだ)山脈が海刺(さ)さり
波にもまれて現れた
柱状節理の魂は
 
 
「安宅(あたか)住吉神社」
 
弁慶関所を包み込み
巫女(みこ)さん語る講談調の
目つき真剣松林
 
 
「安宅(あたか)の関跡」
 
関は海中沈んだとこれは俗説切り捨てる
白い看板 義経 弁慶 調べ役
松風香る海の陽(ひ)は
 
 
「今年は一斉に」
 
八重桜 ハナミズキ サクランボ
今年は早めにそろって咲いた
北海道の春のよう
 
 
「雀も」
 
春は雀も恋季節
低く飛んでは
もつれ合い
 
 
「花まき人は」
 
花室(はなむろ)川の土手の内
菜の花黄色が果てしなく
どんな人? 播(ま)いた人
 
 
「サクランボ」
 
少し縮(ちぢ)れた白い花
桜が終わって時を得て
葉っぱの緑と爽(さわ)やかに
 
 
「ツツジも」
 
ついにツツジも赤い花
今年の春は早すぎて
夏との切り替えどうなるのかな?
 
 
「四月雨」
 
若草伸ばす四月雨
しとしとしとと
溌剌(はつらつ)と
 
 
「春の夕焼け」
 
花 花 花で忘れてた
西の夕焼け忘れてた
見れば見るほど自然の恵み
 
 
「サボテンのお嫁入り」
 
十四の年でお嫁入り
手塩にかけたサボテンの
新しい部屋うるおいを
 
 
「はるかぜ風車」
 
オランダ風車は花曇り
湖ヨットに手を振って
赤黄ピンクのチューリップ
 
 
「山吹(やまぶき)の花」
 
朝の元気の山吹色の
八重の花びら今年も咲いた
この色もらったお日様からよ
 
 
「カワセミ」
 
飛ぶ宝石のカワセミは
水に飛び込み空振りしても
羽の水振り払いちょっと気取って枝の上
 
 
「ホオジロ」
 
朝の梢(こずえ)の朝風に
歌舞伎のお化粧鳴き続け
一筆啓上奉る
 
 
「数分映画」
 
春の夕焼け林上(はやしうえ)
鼓(こ)動とともに明るさ変わり色変わり
秒速変化の大画面
 
 
「羽根車」
 
雄(おす)キジ二羽も見た朝は
遠くに目立つのぼりの柱新しく
くるくる回る羽根車
 
 
「松と強風(つよかぜ)」
 
松の木持ってるはっきりと
強風押し寄せ踊り出す男踊りで赤松の木は
自分の性格意志をあらわに
 
 
「春風」
 
朝の耳元音を立て
山は霞(かす)んで
鳥の音(ね)運ぶ
 
 
「ソーラーカー」
 
屋根は青色太陽電池
幅は一人で二人乗り
音は静かでなめらかに
 
 
「ラジオゾンデ」
 
水素で膨(ふく)らむ二メートル
ゾンデと黄色のパラシュート
秒読み流れ 走って放つ若い人
 
 
「係留気球」
 
遠くで時々眺めてた黄色い楕円紐付けて
機械はぐるぐる回ってた
風向き合わせて人載せて
 
 
「耐震実験」
 
テニスコートの広さの台が
震度四 五六となり体全体衝撃つきぬけ
手すりにつかまりようやく立って
 
 
「加速器」
 
春の日の白い光の研究所
時代とともに大きく変わり
昔なつかし煙突とリングの緑が
 
 
「山ツツジ」
 
ピンクの花は時代に消され
意外なところに残ってた
広々野原の研究所
 
 
「宇宙センター」
 
放送衛星こんなにも大きいのかと
無重力水色光の美しさ
古い細道ドームありここが一番心に染みて
 
 
「橋だけ残り」
 
用水埋められ橋だけ残り
古い細道辿(たど)ってみれば
昔の空気の森姿(すがた)
 
 
「車で」
 
千現 桜と案内し
私も初めて見る所(とこ)も
そろそろ馴染(なじ)む回りの景色に
 
 
「花車(はなぐるま)」
 
車のボディーに張り付いた
ピンクの花びら八重桜
自然が作った花車
 
 
「雄(おす)キジ」
 
間近で見れば雄キジは
赤と緑の色の強さに
自然のものとは思われず
 
 
「田の水入れ」
 
ひたひた田圃(たんぼ)の水入れが
耕し跡を浮かばせて
春の日差しを吸い込んで
 
 
「朝の草原林(くさはらばやし)」
 
草原林の音楽会はウグイス ホオジロ
カワラヒワ ドバトにカラスにキジの声
おまけに犬の遠吠えも
 
 
「地質標本館」
 
工技院から産総研へ銀杏(いちょう)も
大きく建物隠しテニスコートが懐かしく
歴史を刻む標本館は厚生棟のすぐそばの
 
 
「歴史を表すもの」
 
建物いくつか増えたけど
こんもり木々が重みをまして
歴史を一番感じさせ
 
 
「葛(くず)の蔓(つる)」
 
エンジンうなり草刈り機
何でも刈り取るけたたましさよ
これに葛蔓立ち向かうその雄々しさは
 
 
「朝の雄(おす)キジ」
 
朝風冷たい春曇り
草原頭をもたげて見てる
雄キジ飛ばずに藪(やぶ)へと消える
 
 
「閉店するスーパー」
 
閉店売り尽くし紙と放送両方で
十七年前思い出す
映画もあった屋上を
 
 
「誕生日」
 
バラを買い
甲にキスして
誕生日
 
 
「片栗(かたくり)の花」
 
カタクリ探しに行く山見れば
山肌よく見え晴れ上がり
ウグイス ホオジロほめて鳴く
 
 
「回転展望台」
 
カタクリの花は終わりで風冷たくて
展望台からシャープな景色
砂積もるコーヒーカップを茶店で買って
 
 
「雪入ふれあいの里」
 
ネコヤナギ茂る道行き池に着く
そこは絶壁底の池 波紋一つが広がって
中心占めるはカルガモ一羽
 
 
「リサイクルショップ」
 
思い出いっぱい詰まったものを
救ってくれる
リサイクル
 
 
「田植え」
 
今年の田植えも真っ盛り
夫婦二人の田植えはのどか
セッカひーひーちゃちゃちゃ
 
 
「三十年前の田圃(たんぼ)」
 
君と散歩のあのときに田植えをやってる
所に出た 今日も何にも変わらずに水が張られてカエル声
 
 
「ウグイス」
 
子犬は忙(せわ)しく鳴き続け
つやつや声のウグイスは
谷渡り声なだめつつ
 
 
「城ヶ島」
 
白い町並み白灯台の
海の香りの染(し)みこんだ
白秋歌碑のそばに立ち
 
 
「三崎(みさき)港の朝」
 
ぴーぴーひょろろピーヒョロロ
朝明けトビが勢揃(ぞろ)い
電線止まり海見つめ
 
 
「横須賀(か)」
 
町のベンチに銅像座り
三笠は今でも生々しくて
白人と黙って座る女の子
 
 
「エビス ガーデン」
 
動く歩道は延々続き正面見える煉瓦屋の
つまみの豊富さその安さ
飲むのは濃い味エビスのビール
 
 
「牛久の大仏」
 
ギネスブックに載っている
牛久の大仏大きいよ色もくすんで重みまし
青空背にして威圧与えず
 
 
「フラワーパーク」
 
花尽(づ)くし今年の連休締めくくり
丘登り乗り物増えた園内は
花と間違うフラダンス
 
 
「松の花粉」
 
松の花粉はおいしそう
うっすら黄色の五月晴れ
車もおしろい付ける日は
 
 
「水玉」
 
草の水玉 目が行く朝は
初夏の始まり
雨粒でさえ
 
 
「五月の夜風」
 
日は暮れて薄明かり
五月の夜風を身に当てる
涼しさ感じて春終わり
 
 
「朝雲」
 
紫山(むらさきやま)をすっぽりと
柔らか朝雲流れゆく
これが山さん顔洗い
 
 
「朝ヒバリ」
 
薄日さす朝ヒバリ朝
ウグイス ホオジロ鳴く草原を
奮い立たせるヒバリ声
 
 
「カワラヒワ」
 
雨の散歩の梢(こずえ)の影は
雨を気にせず明るく歌う
黄色の斑(はん)点カワラヒワ
 
 
「ショベルカー」
 
双眼鏡で朝山眺(なが)め
初めて見つけたショベルカー
雲山下り洗われて
 
 
「サッカースタジアム」
 
ワールドカップが始まれば近寄ることが
難しいテレビで見る前みたいもの
行ってみるなら今のうち
 
 
「ワールドカップ 2002」
 
ホテルは建て増しそびえ立ち
新道突抜く五月森カップの旗はその道飾り
回りの道は突貫工事
 
ホテルの吹き抜け国の旗
直通バスも遠くから
ワールドカップの二十日前
 
「新館と旧館」
 
君と通った一階の西洋料理は
今何に今は居酒屋チェーン店
本のコーナー今銀行の
 
隣にできた新館はワールドカップの
高層の屋上丸いヘリポート時代の波の
まっただ中のその名はホテルセントラル
 
 
「懐(なつ)かしい道」
 
郊外型のチェーン店新しい道呼び込んで
旧道見にくくなったけど
何にも変わらぬ水辺(べ)の道は
 
 
「あまりに」
 
あまりに物が見えすぎりゃ
階段怖くて上れない
手すり掴(つか)まりそろりと登る
 
 
「コスモスと春ジオン」
 
今年は五月にコスモス咲いた
ヒバリ囀(さえず)るその下に
ピンクの強い春ジオン
 
 
「予科練記念館」
 
特攻前の直(じき)筆は
紙新しく
墨新しく
 
 
「ムナグロ」
 
田圃(たんぼ)の千鳥のムナグロは
オーストラリア シベリア旅行
土手のヨシキリ鳴いて迎えて
 
 
「蒸し暑さ」
 
階段上がって蒸し暑く
五月中旬
梅雨気分
 
 
「阿見(あみ)飛行場」
 
丘に向け曲がりくねった道抜けて
可愛(かわい)い飛行機勢揃(ぞろ)い
ほんわりのどかな飛行場
 
 
「雀も」
 
久しぶりでの五月晴れ
すがすがしすがすがし
雀も飛ぶよ青背景に
 
 
「焼き肉屋さん」
 
焼き肉屋さんの海鮮フェアー
これなら気にせず
盛り上がり
 
 
「三十一年」
 
いろいろ苦労はかけたけど
これから楽しみ何十年も
今日の夕焼け青空を君にまとめて贈りたい
 
 
「白いスーツケース」
 
柊(ひいらぎ)タグが付いているスーツ
ケースは僕たちの生活全部知っている
持ち続けよういつまでも
 
 
「五月のコスモス」
 
夏のコスモスあったけど
五月のコスモス十輪も今年の気候
四月暑くて五月冷え
 
 
「足場がとれて」
 
改修の二ヶ月半の足場とれ
部屋に五月の緑の光
緑の風ともつれ合う
 
 
「アマ鷺(サギ)」
 
田植え終わってアマ鷺の
白と亜麻色 緑に冴(さ)えて
餌ついばみも優美さ流れ
 
 
「普段の店」
 
普段着馴染(なじ)みのいろんな店を
スナップ写真で引き伸ばし
いずれはなるよ宝物
 
 
「蒸(む)し暑さ」
 
今年初めて蒸し暑さ
遠くの山も蒸されて霞(かす)み
夏が顔出す薄日の中に
 
 
「天袋(てんぶくろ)」
 
天袋
入れたら最後出すことなくて
我が家の立派なタイムカプセル
 
 
「小鷺(こさぎ)」
 
田圃(たんぼ)の上の空低く
小鷺は飛ぶよ向かい風
風に煽(あお)られしばらく静止空中で
 
 
「白い砂利(じゃり)道」
 
青葉吸い鳥声吸い込み
野原の空気
白い砂利道 夏運ぶ
 
 
「大(おお)ヨシキリ」
 
霞ヶ浦の堤防は
大ヨシキリの競い鳴き
シベリア向かったシギ千鳥
 
 
「撮影会」
 
日差しは強いが汗ない風は
ポピーが手を打つ
モデルさん
 
 
「屋上提灯(ちょうちん)」
 
車多くて人列(ひとれつ)無くて
古い町並み一回り大きな駅ビル見上げれば
明日からオープン ビアガーデンも
 
 
「ある店」
 
細い道 古びた店には
飾り帯 ガラスの中に二つある
家主はとうに居なくなり
 
 
「ヒバリ」
 
これほど明るい五月晴れ
それでも山は霞(かす)んでて
草原てかてか眩(まぶ)しいよ
 
大きな石ころその上は
頭髪たてた雄ヒバリ
口を閉じずに囀(さえず)り続け
 
私と目が合いしばらくすれば
歩き出したよ草陰に
ヒバリの顔も五月の光
 
歩いて帰る背中の方に
ヒバリがゴムの羽しならせて
囀りながら舞い上がる
 
それもたったの一分間で
黙って下る五月晴れ
ほんとに野原が好きな鳥
 
 
「鯉(こい)のぼり」
 
柱は二ヶ月立っただけ
大きなクレーン車引っこ抜き
ほんとに可愛い初孫だろう
 
 
「生きることが仕事」
 
「これからは生きることこれこそ仕事」
白髪の還暦の顔
穏(おだ)やかに
 
 
「ゴイ鷺(さぎ)」
 
田植え終わって一ヶ月
ゴイサギじっと苗(なえ)囲まれて
餌(えさ)もとらずに風楽しんで
 
 
「二十九度」
 
ボディショップは裏道の
新聞張られた黒車体
五月末でも八月気分
 
 
「市街化調整区域も」
 
畑に家が増えてきた
田園風景動きだし
大きなうねりのまっただ中の
 
 
「写真の展示」
 
私の作品 下の方
とっても見やすく
我が子のように
 
 
「大型スーパーの閉店」
 
電気街これもスーパーあったせい
十七年間思い出し隅から隅まで見て回る
玄関ドアの取っ手の細さ
 
 
「ユーモア村」
 
忍者屋敷とアリス館
見ないうちにも年月流れ
かすかに残るそば食べたこと
 
 
「撮影会」
 
参加したカメラマンさん
熟年目立ち
写真の趣味も老齢化
 
 
「カセットケース」
 
オーディオカセット整理した
一度も聴かない物あろう
一番残しておきたい物は今は亡き人の声
 
 
「三十度」
 
今日の暑さは三十度
湿度は低くて爽(さわ)やかで
それでも散歩は止めにしょうよ
 
 
「柳行李(やなぎごうり)」
 
死語になりつつ長年持った
天袋(てんぶくろ)主となっても何十年か
今日はお別れ思い出入れて
 
 
「ワールドカップ日本戦」
 
ルールはよくは知らないけれど
思わず叫(さけ)び手をたたき
これがカップの威力かな
 
 
「新婚旅行の帽子さん」
 
スーツケースは真っ白の帽子はピンクの
リボン付き手紙と共に入れられて
我が家のスタートシンボルの
 
 
「大鷺(だいさぎ)」
 
メタセコイアの沼歩く
真っ白大鷺のっしのっしと
おまけに低く飛んで見せ表情見せる長い首
 
 
「からっと日差し」
 
からっと日差しの梅雨の前
爽(さわ)やか風に強い陽は
生きる喜びまき上がり
 
 
「桔梗(ききょう)草」
 
水色星の花付けて
初めて見つけた桔梗草
新しい花何年ぶりか
 
 
「梅雨はまだ」
 
薄曇り
もわっと空気の
夏気分
 
 
「結婚記念樹」
 
君は言ったね 切られる前にあの柳
私たちを呼び寄せたのよ
半年前に写真を撮った
 
 
「三本足のカラス」
 
ケヤキの樹齢は八百五十年
一ノ矢神社の言い伝え
今はサッカーシンボルマーク
 
 
「葦(あし)原」
 
沼の浅さは変わらぬのかな
葦原形はずっと変わらず
木の杭(くい)だけが消え失せて
 
 
「昼休みの公園」
 
走りに散歩にご飯食べ
赤ちゃん連れた母親多く
水鳥泳ぎ鯉(こい)さわぐ
 
 
「馴染(なじ)みの理髪店」
 
大きな店が閉店したよ
ブルーベリーの観光農園
四方山話(よもやまばなし)でくつろいで
 
 
「スライド映写会」
 
馴染(なじ)みの友と集まって
見るのは茅葺(かやぶき)き白川郷も
久しぶりでの映写会
 
 
「梅酒」
 
今年の梅は大きくて
夕食時の氷と共に
君漬(つ)けた 買った物より風味あり
 
 
「地震」
 
どーんと来たよ直下型
上を見渡し落ちる物無く
動かずじっと次の来るのを
 
 
「ねじ花」
 
梅雨の季節のねじ花は
芝生の上のピンク花
ためるは露(つゆ)の涙花
 
 
「縁石」
 
君 父と一緒に並んだ縁石を
カメラぶら下げ長歩き
木々は大きくなったけど
 
 
「キョウチクトウ」
 
梅雨の曇りと対照的な
キョウチクトウの赤い花
葉っぱも分厚く夏気分
 
 
「木々(きぎ)の道」
 
人の世のオアシスそれは木々の道
太古の時代に染み込(こ)んだ
脳の中心奥深く
 
 
「梅雨散歩」
 
透明傘さし水たまり
どこを通ろう考えながら
田圃(たんぼ)の水路も音たてて
 
 
「キジバトの巣」
 
小さな松の高枝に
質素な巣ありキジバトの
雛(ひな)は孵(かえ)って静かに待って
 
 
「ホコリ」
 
長年積もったほこりにも
時代を辿(たど)るものあって
愛着誘う拭(ふ)きながら
 
 
「雨上がり」
 
暑い日差しと雨上がり
公園木々も行水(ぎょうずい)の
さっぱり顔のすがすがしさよ
 
 
「二十四時間ガソリンスタンド」
 
朝早く夜勤の人と話したら
一時間十台くらいのお客さん
二時や三時はやはり少なく
 
 
「掃除」
 
何十年もたまったホコリ
これには一番ティシュ紙
濡(ぬ)らして拭(ふ)いて捨てりゃよい
 
 
「孫(まご)柳」
 
記念の柳の孫(まご)柳
逆光それでもよく撮(と)るために
君と並んだ曇り空
 
 
「森のオートキャンプ」
 
シーズンオフの森の中
ひっそり開く喫茶店 君と飲むうち
クマン蜂ゆったり入る部屋の中
 
 
「老婆と」
 
おばあさんとの立ち話
話題は昔の道はどこ?
幅まで教えてくれました
 
 
「メタセコイアの木」
 
秋には紅葉針葉樹でも
初夏には黄緑初々(ういうい)しくて
おまけに姿が個性的
 
 
「梅雨合間(あいま)」
 
ピンクのねじ花ヒルガオも
おまけに開いたキノコまで
梅雨の合間の深呼吸
 
 
「たんぼ道と森の道」
 
田圃(たんぼ)の道は開放感を
しっとり落ち着く森の道
どちらの道もお気に入り
 
 
「四駆(よんく)」
 
乗せてもらったジープのような
十五センチの段差も平気
荒れ野も走るうねりつつ
 
 
「パーラーあひる」
 
公園の沼の辺(ほとり)の喫茶店
雨の日はお休みの店
今日は小亀が甲羅(こうら)干し
 
 
「尾長(おなが)」
 
東の鳥の尾長さん
尻尾が長くて一生懸命
翼(つばさ)羽ばたきゆるゆる飛ぶよ
 
 
「メガネ」
 
メガネもいろいろバラエティ
枠(わく)あり枠なし半分だけの
ガラスのレンズはほとんど無くて
 
 
「梅雨のねじ花」
 
ピンクの色で楽しませ形でもっと
右巻きまっすぐ左巻き
変わり種 右から左へ途中で変わる
 
 
「梅雨の花」
 
背高のっぽの豚菜(ぶたな)さん
風にゆらゆらヘラオオバコは
どちらも太陽近づきたくて
 
 
「星空の」
 
星空の橋詩を書きたい
もう何日も星を見てない
梅雨(つゆ)の夜
 
 
「古いリサイクルショップ」
 
朝の店 娘一人開店前の
いろんなものに囲まれて
エアーポットをただで引き取り
 
 
「林の雨」
 
葉の音知らせる林雨(はやしあめ)
木漏(こも)れ日と漏れた小雨の
もつれ合い
 
 
「梅雨合間(あいま)」
 
梅雨に隠され真夏さん
雲の上ではもう盛ん
おでこに熱気が直(じか)届き
 
 
「夏の公園」
 
蒸し暑さそれでも減らない
走る人
むしろ人数増えたほど
 
 
「声かけられて」
 
知らない人に声かけられて
散歩の姿も
景色に馴染(なじ)み
 
 
「ムクドリ」
 
ムクドリの編隊お互い交わって
新たに飛び去る
二つの群れに
 
 
「山桃」
 
一センチ赤くてつぶつぶ
山桃は最近知った今熟(う)れ盛り
味は酸っぱくグミのよう
 
 
「予科練記念館」
 
君泣いた
写真に遺書に
ナレーション
 
 
「電気店の洗濯機」
 
二槽(そう)に自動にドラム型
我が家は未(いま)だに二槽型
トータル時間は短いそうだ
 
 
「縁(ふち)なしメガネ」
 
デザイン重視は
強度が弱く
あっという間に曲がってしまい
 
 
「柳」
 
梅雨の終わりが近づけば
枝垂(しだ)れ柳も
芝まで伸びて
 
 
「雲と風」
 
雲と風
遠くの台風
伝わって
 
 
「飛行機と台風」
 
台風近づく空の旅
何とかセーフ
数時間前
 
 
「台風前の夕方」
 
ヒマワリ咲いて麦刈(か)られ
夕風涼しく
三日月 雲間(くもま)
 
 
「雨風に」
 
台風の雨風に窓の外側
クモの巣は
しっかり耐えて明るい空に
 
 
「新しいソバ屋さん」
 
田圃(たんぼ)の真ん中埋め立てて
目立つデザイン木造の
中の明かりが夕暮れに
 
 
「飛んでるカブト虫」
 
梅雨空高く角を立て
羽は激しくゆっくり回り
松の高枝間(あいだ)に消えた
 
 
「懐(なつ)かしい漬け物石」
 
銀紙付けて押入の奥ひょっこり出てきて
ずっとずっと昔の石が
ザクロの木の下そっと置き
 
 
「梅雨は」
 
ホオジロ ウグイス囀(さえず)る中に
双峰(そうほう)上だけ雲の中
こうして梅雨は明けたのか
 
 
「コンピュータウィルス」
 
何度も聞いてたウィルス君が
メールと共にやってきた
私にとっては初めての
 
 
「青のキャンバス」
 
青のキャンバス雲描く
色まで変わる次々に
これが楽しみ梅雨の明け
 
 
「芝生(しばふ)の色」
 
朝光(あさひかり)
芝生の色も
梅雨の明け
 
 
「赤いマンゴー」
 
赤いマンゴー贈ってきたよ
種は小さく肉厚で
売ってる物よりずっと甘くて
 
 
「早起き」
 
早起き気分に充(み)ち満(み)ちて
羽ばたかず雄キジ走る
上(のぼり)り坂
 
 
「宮崎県サーチエンジン」
 
宮崎へ
帰巣本能
思いこめ
http://webmarket2000.nu/navi/navi.cgi?user=1636     (宮崎県サーチエンジン)
「布捨て」
 
包みに混ざった中からも
君のネグリジェ
すぐ分かり
 
 
「山百合(やまゆり)」
 
木立の葛(くず)の葉かき分けて
真っ白 点々 黄色線
九州に帰れば嗅(か)げないこの香り
 
 
「夕日」
 
梅雨上がり
赤松 紅(くれない)染め上がり
給水塔も染め上げられて
 
 
「ヒグラシ」
 
中庭の
納涼祭のビアパティーは
飛び入りヒグラシ大声で
 
 
「風のない夕方」
 
柳静かで雲緩(ゆる)やかに
青空 黒雲 茜(あかね)雲
穏(おだ)やか夕暮れ夏景色
 
 
「コガネムシの愛」
 
月見草 花びら陰に重なって
じっと動かず愛誓(ちか)う
背中輝き一番の
 
 
「夏の朝」
草花盛(ざか)り
セミ鳴いて
自然は暑さに負けないで
 
 
「七十代の疑似体験」
 
関節付けるサポーター
背中に重しメガネ付け
年寄り思いが自然に芽生え
 
 
「七月末の浜」
 
監視台 海の家すっかり整い
涼風(すずかぜ)冷たく波荒く
遊泳禁止の曇り空
 
それでも水着のギャルたちは
砂浜遊ぶ声たてて
太股(ふともも)白く日焼け無く
 
風景すっかり秋の浜
日川浜(にっかわはま)も慣れてはいるが
初めてみせる砂の顔
 
 
「蝿(はえ)毒草」
 
少し涼しい夏散歩
木陰に群れて白い花のっぽの枝に小さくて
初めて覚えた名前です
 
 
「故郷から」
 
メロンに里芋 温州(うんしゅう)ミカン
故郷の産物 生協の
こんなパックは嬉(うれ)しいな
 
 
「ツツジの汗」
 
花の終わったツツジから
暑い日差しの汗匂う
花はそれほど香らぬけれど
 
 
「ミノルタ SRT-101」
 
お店のデモ機で見つけたよ
私の青春汗にまみれた
薄くて重くて懐(なつ)かしく
 
 
「ソファ運び」
 
二つは足に車輪あり
後ろ持ち上げ押していき
階段ごろごろソフトに落ちて
 
 
「発泡酒」
 
またまたお安くなりました
変化に富んだ味わいで
新商品が楽しみの
 
 
「スカイネットアジア航空」
 
ベンチャー飛行機スタートし
いつに乗るかは分からぬけれど
ずっと続けと期待を込めて
 
 
「ヒグラシ」
 
寒冷前線通り過ぎ
ヒグラシ かなかな声澄んで
暑い日々にも一息ついた
 
 
「夏の青空」
 
風止まり
白みがかった青空は
たっぷり含んだ水蒸気
 
 
「クローバーの種」
 
暑い日差しに焼かれて黒く
片手いっぱい摘(つ)み取って
まくは築山(つきやま)朝涼しくて
 
 
「霞ヶ浦の帆曳(ひ)き舟」
 
なかなか見えぬ帆曳き舟
白いふくらみ大きな帆
網を引く綱長くて多く
 
数人人影手を振って
周(まわ)りのヨットは小さく見えた
後ろは霞(かす)む筑波山
 
風車も見える高層ビルも
米国工場半導体の
そんな変化の世の中も
 
素知らぬ顔の
帆曳き舟
これで良いのさ霞ヶ浦は
 
NHKのカメラマン
甲子園での紹介の
ビデオを担ぐ三人組の
 
生まれて初めて見た姿
人工物とは思えずに
湖面に湧(わ)き出た水の精
 
 
「少女は」
 
インターネットの施設部屋
少女二人は何見てる
それはサッカー ベッカムを
 
 
「原爆記念日」
 
増えぬよう
消えぬよう
これが願いの原爆記念日
 
 
「コンパクトカメラ」
 
半切に引き伸ばしても
画質それほど落ちなくて
立派なものだコンパクト
 
 
「カラスの芸」
 
見慣れたカラスも見ていれば
高いお空で飛んでる蝉(せみ)を
空中ぱくりと捕(と)って見せ
 
 
「禁煙一周年」
 
思い立ったは理髪店
ミントのお菓子を買い込んだ
コンビニ棚(たな)を思い出す
 
父の遺言あれから六年
ようやく禁煙踏み切った
一年色々あったけど
 
部屋がすっきり整って
香りに敏感取り戻し
痰(たん)がめっきり無くなった
 
手持ちぶさたは今残り
香りのパイポは持ち歩く
これが現在一年目
 
 
「夕の公園」
 
耳痛い程アブラゼミ
ミンミンとつくつく法師が
一歌(ひとうた)葉陰
 
 
「暑くても」
 
沼の夕方陰深く
夕日の当たる葦原(あしわら)に
ダイサギ カルガモ好んで集(つど)う
 
 
「緑のドングリ」
 
緑のドングリ真夏の日陰
三つもぎ取り運ぼうよ
大きな通りの反対側に
 
 
「ラジオゾンデ」
 
松枝隙間(すきま)の青空は
湿度少ない夏の色ラジオゾンデの白風船は
日曜ゆらゆら八時半
 
 
「三十年ぶりの佐貫(さぬき)」
 
三十年ぶり見た神社
二年前建て変わり
氏子(うじこ)も出した四十万円
 
駅から歩いた細道は田圃(ぼ)は消えて
家建ち並び
思い出すのは道曲がり
 
伊勢屋のウナギは子も引き継いで
張りのある声
いらっしゃい
 
ウインドサーフィン速くて遠く
パラグライダーまで森の上
今残る釣り堀だーれも人影無くて
 
今度は運転君がやり
葛(くず)の葉茂る土手の道
目指すは半島 赤神社
 
葦(あし)と水田緑色
農道車一つもなくて
稲穂はたれる八月の
 
神社の周りは夕日陰
対岸ウナギ屋明るく映(は)えて
数は減ってもまだ健在の
 
白サギ多く沼の水
三十年前送電塔を
よぎった数羽の子孫かな?
 
 
「沖縄フラッペ」
 
久しぶりでの涼風(すずかぜ)に
沼の大シギ葦原(あしわら)の
黒糖味は夏気分
 
 
「ソーメン」
 
ソーメンと白いご飯と
菊の花
お盆迎える君と僕
 
 
「山」
 
馴染(なじ)みの景色を持つことは
良い友持つのに等しくて
しばらく見なけりゃ寂(さび)しいものよ
 
 
「今年のセミ」
 
今年はセミの多い年
ベランダ網に洗濯物に
へばり付いては一休み
 
 
「夕焼け」
 
夕焼け見るなら田圃(たんぼ)道
稲穂の垂(た)れた緑道
ぱったり会った懐(なつ)かしい人
 
 
「雲」
 
朝夕の涼しさが
真昼の青空
すじ雲作り
 
 
「ツバメの夕食」
 
稲穂の上はツバメさん
食卓風に揺れながら
おなかいっぱいスーイスイ
 
 
「眠り草」
 
父の墓 母が呼んでた眠り草
暑い日差しと砂利にも負けず
お墓に顔出すクサネムさんは
 
 
「八月中旬」
 
虫の音(ね)探して草むらに
遠くのセミ声一帯流れ
かすかに一声コオロギの
 
 
「セミの声にも」
 
セミの声にも表情あって
リズムゆっくり眠たげの
朝のミンミンお寝坊さんは
 
 
「上高地(かみこうち)」
 
梓(あずさ)川渓谷うなるバスの音
遙か下方の緑水
マイカー通れぬトンネルは
 
立ち枯れ大木水の中
ボートはゆっくりとけ込んで
出来て間もない大正池は
 
赤屋根丸太の帝国ホテル
森と水とに埋もれつつ
空沢白く森を切る
 
たどり着いたは唐(から)松の
水平枝の指すところ
穂高連峰雪渓載せて
 
奥穂高
ちょっと見せては
流れる雲の
 
梓(あずさ)の水の冷たさは
両手を洗い顔洗い
見える景色も水洗う
 
満員つり橋
カッパ橋
出来て五年の新しさ
 
野沢菜お焼きを口いっぱいに
これがお昼の
山と川
 
八月二十日は上高地
辺(あたり)りの気分は
秋のもの
 
車いすでのお年寄り
穂高見上げて
安ら顔
 
 
「信濃の善光寺」
 
真っ暗通路の善光寺
腕と腰とを掴(つか)まれて
そろりそろりと壁伝い
 
木像つるつる何百年も
頭撫(な)で撫で
この手触(てざわ)りは
 
 
「浅間温泉」
 
山と町との間(はざま)にあった
町を見下ろす薬師堂
白猫抱(いだ)くお賽銭(さいせん)箱
 
 
「開智学校」
 
蓋(ふた)付きの
机なつかし
展示室
 
 
「松本城」
 
カラス城人の脂(あぶら)の染み込んだ
大木丸太の柱組(はしらぐみ)
これは国宝アルプス背にして
 
 
「古代蓮(はす)」
 
食用ガエルのボーボーが
今年も咲いた大賀ハス
大きなピンクは仏の花よ
 
 
「トレッキング靴(くつ)」
 
エアークッション付いてはいるが
それほど変わらぬ履(は)き心地
平地を歩くは軽さ一番
 
 
「菊芋(きくいも)」
 
道沿い菊芋
真っ白ホコリの葉っぱの上の
黄色の花は鮮(あざ)やかな
 
 
「おばあさん」
 
森の公園ベンチの上に
いつも座(すわ)ったおばあさん
ズックは時代の先端の
 
 
「散歩」
 
同じコースの散歩でも
昼と夕では会う人異なり
セミの声声ツクツク法師
 
 
「桂(かつら)の木」
 
丸形ハートの葉っぱは可愛(かわい)い
公園沼に日陰を作り
しっかり守る新都市記念館
 
 
「八月末の夕」
 
雲の上入道雲が明るくて
まだまだセミが勝っているが
一つの立木は虫の音勝り
 
 
「85円ショップ」
 
限度はなかなか見えなくて
気づけば今は八十五円
これで立派なチリ箱買える
 
 
「本籍地」
 
今は目立つよエノコロ草が
時代が変われば景色も変わり八月末に
変わらぬものは白いそのままU字溝
 
 
「八月末日」
 
朝の空 青空に
秋のすじ雲その上に
まだまだぽっかり入道雲が
 
 
「九月一日」
 
秋は朝夕染み込んで
しだいに真昼に攻め上り
夏と秋とのからみ合い
 
「高エネルギー研」
 
あのころ飯場(はんば)が立っていた
杭打(くいう)ちいくつもそびえてた
煙突すでに出来ていた
 
三人並んで写真取り
歩道の敷石真新しくて
あの日も暑い夏だった
 
煙突すっくと立っていた
曲がっているが避雷針
加速器リングの土手緑
 
君と並んで写真撮り
このたびは一般公開見学者
三十年後も暑かった
 
マイナスイオンの水素ガス
発生させて加速して
源(みなもと)地下の実験室の
 
丸くて高い展望室は
緑の中に点々と
放射光B-ファクトリーも延々と
 
地下の粒子のスピード忘れ
広々敷地は葛(くず)茂り
休息小屋にも近づけず
 
白い景色の高エ研
知識の乾きのオアシスの
くっきり澄(す)んだ筑波山
 
 
「沼の雛(ひな)」
 
二羽の雛泳いでる
体は黄色でくちばし肌色
何の子供か楽しげで
 
 
「今年も」
 
今年も稲穂が熟(う)れしだれ
鳥が高くを
秋の空
 
 
「彼岸(ひがん)花」
 
林ににょきにょき咲いていた
葉っぱがないのですっと伸び
ツクツク法師と話してた
 
 
「秋を知る」
 
真昼雨
肌に冷たく
秋を知る
 
 
「待った雨」
 
暑い日差しにからからの
里芋(さといも)葉っぱも黄色くなって
冷たい雨さんもっと降れ
 
 
「ショベルカー」
 
しとしと秋雨ショベルカー
あっという間に溝(みぞ)出来て
ツルハシとんと見なくなり
 
 
「朝の虫」
 
鈴虫コオロギかねたたき
朝露飲んだその声は
夜通し歌った疲れなし
 
 
「菅生(すがお)沼」
 
鳥見に通ったあの頃は
賢いツグミが見つめてた
ゆったり浮いたコハクチョウ
 
アオサギ見たのもゴイザギも
初めて見た鳥 菅生沼
そのころの携帯電話は弁当箱程
 
葦(あし)茂り木立うっそう沼周り
木の橋立派に出来たけど
展望風呂も出来たけど
 
大勢変えない気配りが
人の心を落ち着かせ
水鳥たちを集めつつ
 
平将門(たいらのまさかど)終焉の
綱火(つなび)伝える一言主神社
歴史を刻む菅生沼
 
 
「稲刈(か)り」
 
久しぶりでの田圃(ぼ)道
済んだ稲刈り四分の一で
ドバトが群れて落ち穂拾いか
 
 
「灰皿」
 
父の遺言禁煙を
灰皿買ったはその後で
六年間も使ってた
 
タバコをやめて一年たった
蓋(ふた)はすぐさま沈んでいった
本体ゆらゆら流れて行った
 
その橋思い出 渡戸(わたりど)橋は
父が座った手すり下
周りは数台稲刈り機
 
 
「九月風」
 
ススキの白穂が頬(ほお)撫でられて
木陰の私に届くとき
クールミントの九月風
 
 
「虫の声」
 
カネタタキ鈴虫いては聞こえない
コオロギは鈴虫歌う合いの手を
高音は耳の奥まで浸みわたる
 
 
「ピンクの花」
 
ピンクの花びらキョウチクトウに
しとしと秋雨
辿(たど)り着き
 
 
「部屋のコオロギ」
 
朝の部屋コオロギ歌い
いつの間に
ブレザー着てる秋気配
 
 
「関城 跡」
 
関氏は自刃南朝の
吉野に逃れる北畠(きたばたけ)
周りはうっそう大宝(だいほう)沼の
 
攻めの坑道 今残り
周りは秋の梨畑
筑波の山は近く澄み
 
親王送った高台は
水田見下ろす遊園地
今も変わらぬ秋景色
 
土塁(どるい)は残る社(やしろ)立て
風雨に耐えて幾歳月も
今は木立に埋もれつつ
 
関氏の墓は城跡に
沼に迫った奥にある
虫の音漂う歴史舞台を
 
 
「雨のジョギング」
 
小雨に負けず男女のジョギング
傘さし走る女の子
私は歩きの逆コース
 
 
「九月下旬」
 
爽(さわ)やか夕風
コオロギ鳴いて
本場アルプス水ゴクリ
 
 
「黄色」
 
虫の音夕暮れ満月ぽかり
菊芋(いも)黄色
ますます冴(さ)えて
 
 
「栗拾(ひろ)い」
 
遠くの雄鳥(おんどり)高らかに
朝の鈴虫切なくて
刺(とげ)にさされて栗拾い
 
 
「平将門(たいらのまさかど)誕生の地」
 
’76年大河ドラマの時だった
銅像立って屋台も並び
古いお寺も人の波
 
お寺に上がればテープが流れ
将門も飲んだ井戸水
老婆が勧めた
 
しばらく経(た)ってお寺が焼けた
銅像だけがぽつんと残り
寂しい風の寺の跡
 
将門巨大な石碑が出来て
真ん中書かれた絵のそばに
風と雲と虹と
 
小さいけれど再建された
お寺は古い仏具を備え
若い母親子供と遊ぶ
 
周りは住宅押し寄せて
変わらぬものはお墓だけ
豊田館(とよだやかた)の南端
 
平安時代の風雲児
今の若者その心情と
重ね合わせて筑波山
 
 
「長塚節(たかし)の生家」
 
別れ別れた田舎道
今はそのまま整体院の
銅像わらじの旅姿
 
 
「平将門の胴塚」
 
カヤの大木根もあらわ お寺本堂
その真後ろに檀家の娘が手入れして
将門胴塚今もなお 所は岩井の延命院に
 
 
「国王神社」
 
将門(まさかど)座像がご神体
カヤぶき屋根は趣(おもむき)深く
将門祭りは岩井市あげて
 
 
「新治(にいはり)村の腰掛け石」
 
その昔 小野(おのの)小町が腰掛けた
三段岩は竹林 そばには沢水澄んでいて
筑波連山昔のままの秋の緑の片隅に
 
 
「石岡市の国分寺」
 
将門(まさかど)が攻めて燃やした国分寺
今は町中裏通り
賽(さい)銭箱無い奥ゆかしさよ
 
 
「公園」
 
セミの代わりに人増えた
走る人増え歩きも増えた
おまけに水鳥雛(ひな)増えた
 
 
「柳の挿(さ)し木」
 
朝の小雨はしとしとと
森を歩いて柳の挿し木
帰れば草の実ズボンに五(いつ)つ
 
 
「来年の手帳」
 
今は盛りのキンモクセイの
どっさり並んだ本屋さん
見れば早くも来年の
 
 
「三石(みついし)森林公園」
 
舗装の林道くねくね登り
車も会わず人も見ず
センター建物木づくりの
 
ここには無いよ自動販売機
水飲み水道石作り
急な坂道ときおり巨石
 
道の片壁 萩(はぎ)の花
葛(くず)の花びら見えないけれど
ファンタグレープ似た香り
 
君と手つなぎ大きく振って
大声歌う夕焼け小焼け
歌声とぎれりゃツクツク法師
 
山降りて円明院は人もなく
一休さんの可愛い石像
年月を経た藤棚は
 
丘下り見えた屋敷は
シャチホコの母屋も門も塀(へい)までも
何かと思い立ちよれば
 
山も里 空気はすでに秋香り
観光果樹園バス止まり
旬(しゅん)を迎えた千代田町
 
 
「牛皿200円」
 
一年ぶりに食べた牛(ぎゅう)
コクが体に吸い込まれ
これから当分食べずとも
 
 
「十月初め」
 
澄んだ空気の十月初め
真昼の日差しは夏そのもので
水鳥波紋(はもん)は秋のもの
 
 
「盆栽」
 
秋の盆栽展示会
手塩にかけた老松は
何年ものかと尋ねたく
 
 
「モンキチョウ」
 
秋風に
ジグザグ飛んでも花辿(たど)る
朝の爽(さわ)やか紋黄蝶
 
 
「カネタタキ」
 
虫の音少ない朝露に
名前と音色(ねいろ)を覚えた秋は
心に停(と)まるカネタタキ
 
 
「柔らか」
 
鈴虫は
疲れた頭で聴くが良い
柔らか増してふんわりと
 
 
「花火」
 
毎年見ている車で二人
新作花火が今年も冴(さ)える
ヒーターなしでも寒くなく
 
 
「夕暮れ」
 
冷えた空気のコオロギは
ころころころと
磨(みが)かれて
 
 
「モニュメント」
 
県立公園モニュメント
巨大なアーチのステンレス
たたいてみればビーンと楽器に
 
 
「柳の新芽」
 
挿(さ)し木して十一日目の秋空に
新芽ふんわり清々(すがすが)しくも
秋の魂(たましい)宿して伸びよ
 
 
「秋空」
 
朝の秋空雲もなく
青色空気が舞い降りて
体をすっと通り抜け
 
 
「十月丘歩き」
 
まだまだ強い日差しの中で
ツクツク法師と虫の声
木陰(こかげ)で休めば風冷たくて
 
 
「ビルマ釈迦(しゃか)堂」
 
お寺の景色は忘れていたが
おばさん説明生き生きと
白塗り釈迦堂かすかに覚え
 
 
「二十数年ぶりのトンカツ屋さん」
 
お新香なかったことだけ覚え
塩かけ食べるトンカツに
お新香しっかり付いて来た
 
 
「ぽっちゃん湖」
 
万博終わって十七年
今もにぎわう ぽっちゃん湖
万博知らない世代も増えて