橋詩(1)

「橋詩」

橋詩(きょうし)の世界は三行詩
五や七 単位のブロックで
色んなものを橋渡し


<橋詩 南陽彰悟  '01年1月19日から、原則として一日二篇>
 
 
「しばらく」
 
ネットニュースから
しばらくは
お別れよ 定年までか
 
 
「茶殻(ちゃがら)」
 
茶殻は体でものを言い
ほのかな香りで
語りかけ
 
 
「小雪」
 
窓の外にはちらほら小雪
部屋の灯(あか)りに灯(とも)されて
小雨と違うはふわふわと
 
 
「雪の汗」
 
雪の汗きらきらと
空を羽ばたき舞い上がり
朝日を浴びて乾いてて
 
 
「積雪」
 
白くて塵(ちり)の一つなく
歩けばさくさくさくさくと
こんな清純ほかに無い
 
 
「眉月(まゆづき)は」
 
松の上にはほのかに薄く
朝焼けを育(はぐく)んで
いつの間にかに姿消し
 
 
「新道」
 
新しい道 雪残り
まだまだ看板無いけれど
周(まわ)りの景色に見とれてしまい
 
 
「残り雪」
 
雪の芝生はしっとりと
なにもかも吸い込んで
愛嬌振りまく雪だるま
 
 
「静寂(じゃく)」
 
静寂は
微(かす)かな物音
あってこそ
 
 
「朝のサボテン」
 
逆光輪郭(りんかく)きらきらと
しぶとく生きる冬の日を
新芽も伸ばす頼もしさ
 
 
「雪は」
 
雪は大空吐(は)く息が
北風さんに凍り付き
はらはらハラと舞い降りて
「尖(とが)った」
 
トイレ中
ヒヨドリの寒さに尖った
声一つ
 
 
「残り雪」
 
朝の雨暖かく
残り雪 白さにしとしと降り注ぐ
生まれる前に戻しつつ
 
 
「雪の予感」
 
雪の予感を風伝え
ジャケット欲しい部屋までも
明日の朝楽しみで
 
 
「アスファルトに」
 
ふわふわ雪は躊躇(ためら)いがちに
うっすら染める
アスファルト
 
 
「雪とみぞれ」
 
はらはらはらと入れ替わり
雪とみぞれがご挨拶(あいさつ)
秋の予報と裏腹に
 
 
「撮影会」
 
ノースリーブのモデルさん
雪残るビルの合間の
プロ目指す熱気が溶かし
「残り雪」
 
生まれたときは散り散りに
日陰でそっと
身を寄せ合って
 
 
「冬の朝日」
 
朝日の影は穏やかで
丸みを帯(お)びて
細長く
 
 
「冬の空気は」
 
冬の空気は引き寄せる
遠くの山の青消して
真の姿を作り出す
 
 
「ふくふくと」
 
二月近づき
赤みを帯びた杉の木は
ふくふくふくと膨(ふく)らんで
 
 
「冬の夜雲」
 
冬の夜雲もほの赤く
夜風の冷たさ
裏腹に
 
 
「残り雪」
 
残り雪さん松の下
天より白い
暗闇(くらやみ)の
「冬の雨」
 
冬の雨ぱらぱらと
空気を清め
清々(すがすが)しさを
 
 
「二月の雀」
 
裸の柳に雀二羽
動きが新鮮
曇り空
 
 
「兄弟星」
 
大きな星はお姉さん
小さな星を見守って
側(そば)には明るい冬の月
 
 
「まるまると」
 
冬の雀はまるまると
日向(ひなた)を求めて
ぴょんぴょんぴょんと
 
 
「ピリ辛ラーメン」
 
額(ひたい)の汗を拭(ふ)きながら
赤みを帯びた味噌味の
体の芯(しん)は夏気分
 
 
「間近で」
 
ヒヨドリは
間近で迷う
留まり場所
「月の暈(かさ)」
 
月の周りに暈さして
おぼろ顔でのお月様
こんな日もある冬の夜
 
 
「朝の雲」
 
雲にぽっかり丸い穴
高い薄雲顔出して
互いに手を振りすれ違い
 
 
「立春」
 
日溜(だ)まりの風止まる土手斜面
緑増し
春さんここに立ち始め
 
 
「モグラの土盛り」
 
上の柳の蕾(つぼみ)さんまだまだ小さく固いけど
下のモグラの土盛りは
色と香りが春のもの
 
 
「梅近い」
 
梅近い そう思う
心は何時(いつ)しか
温(ぬく)もって
 
 
「春目覚(ざ)め」
 
二月の雨はぽつぽつと
薄い水面
春目覚め
「霙(みぞれ)」
 
雲さん時には涙ため
雪を濡(ぬ)らして
降りてくる
 
 
「朝日に」
 
毎日続いた曇り空
朝日に顔向け一呼吸
体の芯(しん)まで暖まり
 
 
「二月の夜」
 
一杯のお茶だけで
ぽかぽか長く暖まり
ほのかに感じる春の近づき
 
 
「枯葉」
 
トイレの中からキンモクセイは
葉陰に二つ黄色花
近寄り見れば虫食い枯葉
 
 
「二月の流れ」
 
小さな流れは澄(す)んでいて
底の光りは煌(きら)めきながら
こんなところに春目覚め
 
 
「二月の空」
 
飛行機雲も折れ曲がり
遊んでみせる
二月空
「冬の活気は」
 
もうもうと無定型
吹き上げ湯気は寒さを忘れ
そこに見たもの冬活気
 
 
「春準備」
 
柳の新芽はまだ固く
ほんのり頬(ほお)染め
春準備
 
 
「水玉と羽」
 
白鳥星屑(くず)舞い降りて
冬の夕日の妖精が
地上できらきら遊ぶ場所
 
 
「二月の桜」
 
桜の芽さんは尖(とんが)って
寒さに耐える
強い茶の
 
 
「鍋焼きうどん」
 
食べ物の温(ぬく)もりが体暖め
ピリ辛よりも
心地よく
 
 
「白い朝」
 
曇りの太陽真っ白け
雲の模様も薄明かり
風も止まって白い朝
「春の星」
 
うっすら雲でも見える星
赤みを帯びて大きくて
力強くて春の星
 
 
「冬の嘆(なげ)き」
 
裸の柳は細々と
微風(そよかぜ)向かって
嘆くのは
 
 
「白鳥は」
 
心は白を強めつつ
白鳥は日にちが経(た)つほど
羽白く
 
 
「影絵」
 
子供の頃の匂いして
ぼやけた犬を
吠(ほ)えさせる
 
 
「冬の道」
 
カラからカラと乾いてて
曲がりくねった細い道
白さを辿(たど)る冬の道
 
 
「止まった空」
 
止まった空は曇り空
まるまる太った椋鳥(むくどり)が
一筋鋭く素速くて
「真冬どき」
 
真冬どき
大汗流れる真夏花
暫(しば)し眺めて冬忘れ
 
 
「反射が」
 
机の反射それさえも
眩(まぶ)しさ増した
二月朝
 
 
「暖房の風」
 
体は確かに緩(ゆる)んでき
頬(ほお)の表面暖まり
春風とはっきり異なる暖房の風
 
 
「おぼろ朝日」
 
うっすら雲さんぼんやりと
お日様大きさ膨(ふく)らませ
おぼろ朝日は春近い
 
 
「暖冬予想も」
 
寒さ厳しく雪多く
暖冬予想も外(はず)れたが
暫(しばら)く聞かない温暖化
 
 
「埃(ほこり)さえ」
 
昼間は見えない埃さえ
クッキリはっきり浮かばせる
朝日はほんとに優しくて
「二月の裏道」
 
風が回って南風?
二月の大きなうねりの中に
春の飛沫(しぶき)が混じる日は
 
 
「朝の眉(まゆ)月」
 
真っ暗背景その中で
赤みを帯びて暖かく
そのうち譲る朝焼けに
 
 
「日暮れても」
 
日暮れても昼の温(ぬく)もり
漂(ただよ)うように
春は時々顔出して
 
 
「夜明け雲」
 
黒雲広く空覆(おお)い
青空囲った朝焼けを
北へ北へと足早に
 
 
「うっすらと」
 
散歩の後でうっすらと
背中汗ばみ心地よく
こんな日現れ二月でも
 
 
「木の葉も」
 
木の葉も眩(まぶ)しく朝日を放ち
二月の明るさ
電話は告げる合格通知
「街灯」
 
蛍光灯の街灯も
ぼやけつつ
ほんのり滲(にじ)む春の色
 
 
「松葉の」
 
松葉の隙間(すきま)の朝日さん
満月にも似て
春作り
 
 
「二月のU字溝」
 
寒風届かぬその底で
春は何時しか芽生えてた
緑青々 春の草
 
 
「二月の柳」
 
二月の雨粒枝に載せ
蕾(つぼみ)はまだまだ固いけど
細枝軽やか春気分
 
 
「三歩進んで二歩下がり」
 
春は近づく波打ちながら
三歩進んで二歩下がり
歩みは困難伴って
 
 
「風が止まれば」
 
幼い新芽はハコベかな?
風さえ止まれば
春は来ていて
「だんだんと」
 
だんだん朝日は早起きに
活気を帯びて
春近い
 
 
「電気ストーブ」
 
二十度越えて
色も落ち着く
二月末
 
 
「嘴太烏(はしぶとがらす)」
 
嘴太ガラスは高い場所
自慢のクチバシ白光り
じっと動かず朝日見つめて
 
 
「二月も」
 
何時の間(あいだ)に二月も明日(あす)まで
梅の花待ちきれず
早(はや)満開に
 
 
「春の準備」
 
二月末日朝焼けは
ホンワカぼんやり一面に
春の準備を早くも始め
 
 
「春のページ」
 
春のページを眺(なが)めれば
いつの間にかの
春気分
「三月の雨」
 
冬の別れの涙雨
別れはいつも切なくて
地下に宿(やど)って新芽を眺め
 
 
「星の国」
 
ぱらぱらと柳の新芽に
雨粒宿り
そこは風揺れ星の国
 
 
「牡丹(ぼたん)雪」
 
三月朝は牡丹雪
樅(もみ)の木黒ずみ背景に
ゆっくり踊る白い肌
 
 
「はかないものは」
 
はかないものは美しく
朝の牡丹(ぼたん)雪 昼はなく
一時(ひととき)に懐(なつ)かしく
 
 
「産毛(うぶげ)」
 
柳の固殻(かたから)見定めて
少し開いた三月は
産毛に柔らか春日差(ひざ)し
 
 
「冬は」
 
透(す)き通るピンクの花びら
サザンカ何処(どこ)に?
いつの間にかに冬去って
「朝の椋鳥(むくどり)」
 
三羽の椋鳥追いかけて
一羽も続く高いとこ
何を遊ぶか精一杯
 
 
「エアコンの」
 
エアコンの低い唸(うな)りも耳慣れて
残り少ない冬気配
夜の周りもぽかぽかと
 
 
「松葉は」
 
去年の枯葉を下に付け
朝日にそよぐ緑の葉
春は近いと嬉(うれ)しげに
 
 
「幸福」
 
自分に素直(すなお)に生きること
これが人生一番の
生き甲斐(がい)幸福楽しみが
 
 
「水銀灯は」
 
街路灯
車の屋根にも
灯(ひ)を作り
 
 
「冬の朝日」
 
冬の朝日はうっすらと
百倍大きく膨(ふく)らんで
ほんわか照らす白い壁
「喉越し」
 
水の喉越(のどご)し
心地よく
思えば過ぎた雛(ひな)祭り
 
 
「朝日の姿」
 
丁度の雲のお陰です
朝日の姿がクッキリと
雪より白い女神あり
 
 
「春も三分の」
 
緩(ゆる)んだ空気に絆(ほだ)されて
三羽も一度に初囀(さえず)りの
春も三分の散歩道
 
 
「赤松の朝」
 
朝日にほんわり頬(ほお)を染め
冷たい風にゆっくりと
静かな朝に一人いて
 
 
「霙(みぞれ)」
 
夜の霙を部屋から眺め
寒さ分からず
想うこと夏の氷菓子
 
 
「青空朝日に」
 
青空朝日に照らされて
細く細くと雪が降る
残り雪から舞い降りて
「遠くの山も」
 
遠くの山も雪化粧(げしょう)
三月中旬はいるのに
冬はまだまだ力があって
 
 
「松葉さえ」
 
松葉さえ
雪を受け止め
春の雪
 
 
「三月中旬」
 
水銀灯もその上の
お月様 眺(なが)める色は
暖色微(かす)かに深み増し
 
 
「半影の」
 
澄んだ空朝日の輝き眩(まぶ)しくて
白壁映るぼやけた影は
春の滲(にじ)みを写し出し
 
 
「撮影会」
 
雪残る梅園の五分咲きは
梅とモデルと並んで立てば
梅は控えめ後ろに下がり
 
 
「朝の雪」
 
寝ぼけ眼(まなこ)のふわふわと
風さん遊んでくれなくて
ゆっくり沈む春の雪
「百円ライター」
 
同じ値段でこうまで立派
百円ショップで
買うものは
 
 
「白い月」
 
松の枝先
雪残り
白月丸く青空に
 
「最後の」
 
これが最後の親睦会は
別に変わったこともなく
ものの終わりはこんなもの?
 
 
「背伸びして」
 
昨日(きのう)の雪も消え去って
春の背伸びの
柳さん
 
 
「仏の座」
 
畑一枚春模様
びっしりピンクの小さい花よ
一足先に四角の春が
 
 
「冬のカンナ」
 
大きなカラカラ葉を下げて
鋭角作る茎の中
春の力はまだ見えず
 
「今日の夜風」
 
今日の夜風は緩(ゆる)んでて
去年の夜桜
見たときの感触さっと過(よ)ぎってた
 
 
「羽を反(そ)らして」
 
松葉陰 羽を反らして烏(からす)舞い
二羽が後追う
春近い
 
 
「朝の雉(きじ)」
 
薄曇り
四十五度で空にらみ
座り続ける雄(おす)の雉
 
 
「お酒は」
 
お酒さん
気心しれた人たちと飲むのが一番
ほのかな香り
 
 
「オナガの散歩」
 
オナガの散歩はぴょんぴょん散歩
長い尻尾(しっぽ)が
ピンと伸び
 
 
「スタート」
 
土筆(つくし)さん大きくなって
目に留(と)まり
ふらふらと風に乗るのはモンキチョウ
「見に行こう」
 
柳の新芽を見に行こう
緑の三ツ葉を反(そ)らしつつ
産毛(うぶげ)に包まれこわごわと
 
 
「看板は」
 
大きな面に小さめの
気分一新眺(なが)めれば
九日後の日浮かんでき
 
 
「地下からも」
 
芝生は緑にまだら色
春の芽生えは
地下からも
 
 
「三月末の梅」
 
三月末の梅の花
花散り満開それぞれで
艶(つや)やか声のウグイスは姿を見せず藪(やぶ)の中
 
 
「誕生日」
 
生まれたときもこんな日か
曇っていても
体の中もほんわりと
 
 
「インターネットカフェ」
 
薄暗く
いつもの画像も
どぎつくて
「三月末の雨」
 
老人一人雨の中
ぽたぽた雨に濡(ぬ)れながら
厳しさ無くて柔らかく
 
 
「うきうきと」
 
朝日の線のその中で
たばこの煙も
うきうきと
 
 
「様々(さまざま)」
 
蛍光灯は
一年保(も)たずに切れるもの
何年経(た)っても切れないものも
 
 
「新芽の味」
 
柳の新芽を食べてみた
あっさり薄味
ほのかな香り
 
 
「二分咲きの」
 
三月末に二分咲きの
ソメイヨシノは
二十歳(はたち)の気概
 
 
「まねをして」
 
今年もヒヨドリまねをして
桜の花びら食べてみた
ぴーぴー小声で鳴いてみた
「三月末の雨」
 
今日の雨 冬雨か春雨(はるさめ)か?
大粒雨は何も気にせず
季節の境はいつも動きが
 
 
「雨に濡(ぬ)れ」
 
三月末の寒(さむ)雨に
咲いたばかりの桜の花は
身を引き締めて露飾り
 
 
「ビールと夜桜」
 
水銀灯で染められた
夜桜夜も覚(さ)めていて
三日月と宵(よい)の明星ほろ酔いかげん
 
 
「牡丹(ぼたん)雪と桜」
 
先ほどの牡丹雪にも負けないで
三日月従え夜桜は
露ためしっかり微笑(ほほえ)んで
 
 
「木蓮(もくれん)と牡丹雪」
 
初めての牡丹雪 一目惚(ぼ)れ
昨日(きのう)は白肌つやつやと
恋して焦(こ)がれて茶色になって
 
 
「イメージが」
 
昨日(きのう)の桜のイメージが
寒い朝にも
芯(しん)を暖め
「夜桜こらえて」
 
夜桜こらえて見なければ
赤みがますます膨(ふく)らんで
ぼんぼりよりも天登り
 
 
「春は」
 
ヒヨドリ桜に隠れつつ
ぴーぴーはしゃぎ天国の
心騒ぐは蜂だけでなく
 
 
「雨の夜桜」
 
雨の夜桜食べてみた
しっとりしっくり舌(した)馴染(なじ)み
暗い夜空を赤らめて
 
 
「ウグイスも」
 
ウグイスも
桜浮かれて
声弾(はず)み
 
 
「花寒」
 
夜の花には厳しいが
次の日曜満開が
続く期待に胸膨(ふく)らまし
 
 
「剪定(せんてい)」
 
枝を切られて柳の木
痛さこらえて
春準備
「十九度」
 
夜になっても部屋の中
籠(こ)もる空気は
春含み
 
 
「ウグイスの」
 
ウグイスの
声聞き育つ
柳の新芽
 
 
「保(も)ちそうな」
 
週末も明日(あした)に迫り
薄明かり見る夜桜は
安心させて
 
 
「葉を出して」
 
ソメイヨシノも葉を出して
白い花びら話しかけ
緑と白のハーモニー
 
 
「満月と満開」
 
満開夜桜 隙間(すきま)から
ぽっかりまん丸 黄色月
こんな贅沢(ぜいたく)春の夜は
 
 
「山桜」
 
山桜
葉っぱは花で
白化粧
「夜には冴(さ)えて」
 
ソメイザクラより
夜には冴えて
山桜
 
 
「松笠(かさ)」
 
パイプの中の松笠は
冬の雪風感じずに
さあ春だ ぽっと投げたは藪(やぶ)の中
 
 
「夜桜は」
 
夜桜は
昼よりずっと艶(あで)やかで
舌の感触渋み増し
 
 
「春うらら」
 
通り過ぎ
驚くキジバトばたばたと
それに驚く春うらら
 
 
「夜まで」
 
夜までも筋肉緩(ゆる)み
春は染(し)み込む
角(すみ)の角まで
 
 
「スミレが」
 
スミレが咲くのは松の下
雀の槍(やり)を従えて
下も向いてと薄紫の
「震(ふる)えず」
 
今日の夜風は涼しくて
震えず見上げる
夜桜は
 
 
「モグラの花見」
 
モグラの土盛り点々と
真夜中宴会盛り上がり
サツキの蕾(つぼみ)も赤ら顔
 
 
「残り少ない」
 
葉っぱも緑に様(さま)変わり
今日は夜空に月もなく
残り少ない山桜
 
 
「地面を見れば」
 
桜ばかりと見上げていたが
地面を見れば
春湧(わ)いて
 
 
「ストーブ」
 
ストーブ赤々夜照らし
春の空気を暖める
今年の冬も名残惜(お)しいと
 
 
「春も深まり」
 
残り少ない山桜
柳の黄緑小さな葉っぱ
すくすく伸びて豊かになって
「春の夜空」
 
今日の夜風はなま暖かく
星は見えるよ二つだけ
うっすら雲も見える空
 
 
「ふわふわと」
 
小指でそっと触るだけ
ふわふわ舞うよ花びらは
今年も終わりの山桜
 
 
「楽しむほどに」」
 
星をゆっくり楽しむほどに
春進み
瞬(またた)く姿を長々眺(なが)め
 
 
「染(し)み込んで」
 
今日の朝空 黄砂(こうさ)無く
ウグイスの声
つやつや染み込み
 
 
「四月下旬は」
 
夜水の音も心地よく
水面の灯(あか)りも軽やかに
そんな季節の四月末
 
 
「春の雀」
 
春の雀は尻尾をたてて
ぴちぴち鳴くのは
雄雀か
「蛍光灯」
 
黄緑柳を照らすのは
春より深く新芽を見せる
遠くの部屋の蛍光灯よ
 
 
「竹富(たけとみ)島」
 
竹富島は花盛(ざか)り
原色見知らぬ花満ちて
極楽一番近い島
 
 
「珊瑚礁(さんごしょう)」
 
水の心が微笑(ほほえ)むと
黄色の魚が身を翻(ひるがえ)し
緑に染まる別世界
 
 
「南の島」
 
草の葉木の葉が異なれば
波が沖合砕(くだ)ければ
気分も心もなだらかに
 
 
「海の温(ぬく)もり」
 
珊瑚礁
澄(す)んだ海水手のひら浸(ひた)し
南の海に一体化
 
 
「水牛」
 
島によく合う乗り物は
ゆっくり進む牛車トコトコ
優しいお目目の水牛の
「サトウキビ」
 
見知らぬ草木の合間には
タバコとバナナとサトウキビ
野菜は並ぶ本土産
 
 
「珊瑚(さんご)」
 
珊瑚の世界は目に留まらずに
世界は一色青緑
島をも造る力持ち
 
 
「島の人」
 
白い日差しに黒々と
体も小太り
優しい眼差(まなざ)し
 
 
「島の道」
 
島の小道は白かった
真上の太陽ぎらぎらと
それに答える南の花よ
 
 
「島の海水」
 
南の島の海水は
とっても幸せのびのびと
珊瑚(さんご)と魚と戯(たわ)れて
 
 
「小島」
 
小島は年寄り老人の島
海好き若者住み着いて
世代交代引き続き
「南の葉っぱ」
 
南の葉っぱは分厚くて
強い日差しにてかてかと
水分飛んでも大丈夫
 
 
「島の花」
 
南の花はなぜ赤い
強い日差しにぎらぎらと
答えて負けずに原色の
 
 
「曇りでも」
 
空はうっすら曇り空
それでも緑の
南の海は
 
 
「島のスーパーマーケット」
 
島にも有名スーパーが
百円ショップも入(はい)ってて
本土の気分も流れ込み
 
 
「珊瑚礁(さんごしょう)」
 
沖合遠く砕け散り
飛沫(しぶき)が作る浅海は
激しさ後の穏(おだ)やかさ
 
 
「島の星」
 
南の星は雲合い間
海の遠吠(とうぼ)え
答えて瞬(またた)き
「砂に詩を」
 
ピンクと白の浜昼顔は
南の白い砂浜を
キャンバス代わりに詩を書いて
 
 
「南の島には」
 
花屋を一つも見なかった
それでも島は花乱れ
島全体がお花屋さんで
 
 
「地球を」
 
珊瑚(さんご)はとっても力持ち
南の海の島造り
人の手よりも力持ち
 
 
「カクテル」
 
カクテルの珊瑚礁(さんごしょう)
それは珊瑚の色でなく
周(まわ)りの暖か水の色
 
 
「椰子(やし)の木」
 
海風にざわめく椰子の木
手を振るは
沖合一つのウィンドサーフィン
 
 
「南の星は」
 
南の星は何見てる
月明かり白い浜辺の
星の砂
「小島」
 
海と雲とに飾られて南の小島は緑線
水平線にクッキリと
それでも行けば楽園の
 
 
「水着」
 
南の白砂浜辺には
ビキニとパラソルよく似合い
だーれも居ないワンピース
 
 
「ランボーの詩」
 
ランボーがくっきり立つのはきっとこの島
何とつぶやき
何を叫(さけ)ぶか?
 
 
「島の小道」
 
小道は人影絶えて真っ白
乱射の漂う空気の中で
会うのは自転車 物見客
 
 
「島の水」
 
蒸し暑さ白い太陽
珊瑚の精を吸い込んだ 緑の海を吸い込んだ
この水が喉(のど)から私を飲み干(ほ)して
 
 
「小島の家は」
 
屋根は丸まり煉瓦(れんが)色しんと静まり老人静か
珊瑚(さんご)の垣根に囲まれて
埃(ほこり)の立たない珊瑚道家々つないで白光り
「島の車」
 
民宿 牛車 ワゴンのバスが
狭い道筋うなりを立てて
島の車は営業車
 
 
「泳ぐ若者」
 
波のない沖合泳ぐ若者は
下向きゃ珊瑚の熱帯魚
息をする度(たび)椰子(やし)の葉眺め
 
 
「椰子(やし)の親」
 
藤村(とうそん)が実から描いたその空気
南の島から巻き上がり
その幹(みき)子供が深呼吸
 
 
「島の学校」
 
校庭水やり小学の
小中校と一体で
南の日差しに負けず光って
 
 
「島の民謡」
 
牛車にひかれて聴く歌は
白い小道に漂(ただよ)って
ジャミセン喉(のど)も古楽器
 
 
「風の色」
 
島には色んな色満ちて
道々流れる風の色
どんな色かと迷ってしまう
「島のジュース」
 
ぴっちり冷えた南のジュース
名前も初めて島の妖精
喉(のど)元過ぎれば私の一部に
 
 
「島には」
 
島に唸(うな)りがあったとすれば
椰子の木撓(しな)らす
怒濤(どとう)の海風
 
 
「島の水たまり」
 
強い日差しに晒(さら)されて
ぬかるみ気付かぬ真白の
珊瑚が作るくねる道
 
 
「マングローブ」
 
川と海とに挟(はさ)まれて
自然の音色のひたひたと
フォークは刺さる珊瑚(さんご)の砂に
 
 
「島の虹」
 
小島にうっすら虹が架(か)かれば
星砂が虹の道筋(みちすじ)
散歩して
 
 
「島の若者」
 
島の若者日焼けして
四月ですでに半ズボン
海が育てた人間味
「島のベール」
 
島に朝霧うっすらと浜辺の白砂とけ込んで
この世のものとは思われぬ
ベールをなびかす赤い花
 
 
「島の蝶(ちょう)」
 
この島ねぐらの虫たちは
楽園味わい
楽園築(きず)く
 
 
「島の雨」
 
大粒元気な島の雨
原色花の色洗い
浜辺の白砂清めつつ
 
 
「島の高速艇」
 
スクリュウの波飛沫(しぶき)
船の背よりも高く舞い
驚き逃げる熱帯魚
 
 
「南の島の星砂」
 
しゅーと降(お)り立つ星の王子様
周(まわ)りの白砂集まって
星の形でお出迎え
 
 
「小島には」
 
白い小道は海香り
犬や猫には気付かなかった
その代わり大きな水牛優(やさ)しい目
「島の波止場」
 
波止場(はとば)の隅(すみ)で若者一人
横顔黒々赤銅色の都会風のTシャツで
じっと眺める緑の踊りを
 
 
「島の鳥」
 
熱帯林の奥深く見知らぬ鳥は鳴き続け
白い陽(ひ)の見知らぬ草木が
答えて震(ふる)え
 
 
「星砂」
 
天から大粒雨降れば
星砂かさこそさざめき合って
一緒(いっしょ)に作る水中花
 
 
「南雪(みなみゆき)」
 
雪を知らない白砂よ
あなたは生まれた南の島に
海から育った南雪
 
 
「海風」
 
島には海風染(し)み渡り
妨げる山一つなく
人の心も海景色
 
 
「島のバナナ」
 
園と言うよりも
畑に並ぶ台湾バナナ
暑い日差しにそよぐのは収穫助ける大きな葉
「浜辺の店」
 
珊瑚(さんご)の海には若者がちっとも気にせずハブクラゲ
ちらほら食べる氷菓子
浜辺のお店は車です
 
 
「天から」
 
海から育った
この小島
天からふんわり舞い降りて
 
 
「コントラスト」
 
真昼の白道何処(どこ)までも
大きな水牛真っ黒け
白を引き立て南の写真
 
 
「雷」
 
南の大きな雷さんが
落ちる場所に困ります
平和で平らなこの小島
 
 
「花びら」
 
南の大気を吸い込んだ緑の海に浮かべる花は
黄色の島の花びらか
つやつや真っ白 百合(ゆり)の花
 
 
「飛沫(しぶき)」
 
白波は遙(はる)か彼方で砕け散り
飛沫のかからぬ
真っ白浜辺(はまべ)は
「椰子(やし)ガニ」
 
椰子ガニのこのこ上(のぼ)り詰め
夜風に吹かれて涼しげに
下を眺(なが)めて海の月
 
 
「南風」
 
島見ずに長い旅した南風
小島でほっと溜息(ためいき)を
鳥 花 水牛吸い込み和(なご)む
 
 
「嵐」
 
波止場(はとば)の建物珊瑚(さんご)でできて
島の椰子(やし)の木大きく撓(しな)り
島影さえも見えなくなった
 
 
「花」
 
南の花は白い道 枝一面に花つけて
牛車の中にもご挨拶(あいさつ)
落ち着く民謡とけ込んで
 
 
「時間」
 
島の時間はゆったりと
眠たげに
馬車より似合う水牛歩(あゆ)み
 
 
「本土の」
 
本土にいくらお金をかけても
手を加えない小島には
どうしようもなくかなえない
「人の声」
 
南の島には木霊(こだま)無く
白い小道が反射して
大きく吸い込む熱帯林よ
 
 
「八重山蕎麦(そば)」
 
蕎麦は蕎麦でも薄黄色
そば粉は入(はい)ってないけれど
白い日差しにぴったりの
 
 
「珊瑚」(さんご)」
 
人がもし生まれ変われば
珊瑚になって
南の海を作りたい
 
 
「花火」
 
この島で花火を揚(あ)げる
何処(どこ)の浜辺もお好きなように
熱帯魚 お花に蝶(ちょう)に 人までも
 
 
「雲」
 
海を眺(なが)めて流れてきたが
小島に気づき
微笑(ほほえ)みながら立ち止まり
 
 
「石塀(いしべい)」
 
珊瑚(さんご)の石塀少しずつ
金槌(かなづち)一つで作り上げ
白道飾る末代までも
「牛」
 
広い牧場に牛一つ
磯(いそ)の香りを
感じつつ
 
 
「シャボン玉」
 
吐息(といき)をゆっくり熱帯魚
七色大きなシャボンとなって
珊瑚(さんご)の白砂見上げる中を椰子(やし)の葉っぱで一休み
 
 
「観光客」
 
島巡(めぐ)る観光客は
自転車 バイクをレンタルで
ゆっくり歩くの趣(おもむき)あって
 
 
「小島の人は」
 
外の人には土地売らず
私も欲(ほ)しい気はするけれど
これでよい今の小島が好きだから
 
 
「小島の家」
 
丸い瓦(かわら)に守り神
怖い形相(ぎょうそう)しているけれど
よく見りゃかわいいレンガ色
 
 
「胡椒(こしょう)」
 
空港のお店で売るのは胡椒の瓶(びん)で
初めて嗅ぐよな香りして
長く味わう小島の石垣
「ゆらゆら」
 
三十センチ芝生(しばふ)の上に
鮮やか黄色の面造り
ゆらゆら揺れる風もないのに
 
 
「タンク」
 
島には井戸が一つもなくて
古びたタンクが今残り
島の歴史を語りつつ
 
 
「島の細道」
 
くねくねと小島の細道
森の中
体の汚物(おぶつ)を吸い取って
 
 
「薬草」
 
島には伝統知恵あって
毒クラゲ刺されたときも
木の葉の汁(しる)で
 
 
「橋」
 
島と島には橋無くて
この世界 自然だけ
虹の架(か)け橋あればよい
 
 
「地下掘れば」
 
小島に深い穴掘れば
何処(どこ)まで続く珊瑚礁(さんごしょう)
何処まで続く太古(たいこ)の時代
「島のお墓」
 
島のお墓は燦々(さんさん)と
丸み帯び横長の
前の空き地は充(み)ち満ちる野草の花よ
 
 
「島の塵(ごみ)」
 
ふと気付く島の林に塵山なくて
島の人 捨てないまでも
南の海の観光客も
 
 
「朝日」
 
海から顔出す朝日に乗って
蝶(ちょう)小鳥
光りを滑(すべ)り小島に降り立ち
 
 
「日の出 日の入り」
 
朝日も夕日も水平線の
遮(さえぎ)る小山もありません
昼間はいつもお日様と
 
 
「海風」
 
海の香りのそのままに
小島を優しく撫(なで)でまわし
人の心もさらされて
 
 
「深い井戸」
 
この小島 底ない深さの井戸あって
魂(たましい)渇(かわ)きを
潤(うるお)わせ
「テレビアンテナ」
 
島の瓦(かわら)はレンガ色
アンテナそこには見あたらず
しっかり守る島景色
 
 
「島の内面」
 
島の内面心に描き
想像力の足りなさを
ひしひし感じる思い出の島
 
 
「絡(から)み」
 
緑の波間に揉(も)まれつつ
細い白道 森の中
心の絡みも小島にて
 
 
「あぐら」
 
短パンツあぐら座(すわ)りの乙女(おとめ)あり
並べるものは細工物
違和感感じぬ南島(みなみじま)
 
 
「霧」
 
小さな霧でも島隠す
透(す)かして見えるは潮騒(しおざい)の
島の香りは何色の?
 
 
「塵(ごみ)置き場」
 
島には塵置き見あたらなくて
分からぬところで
島人守る自然の美
「梅雨(つゆ)」
 
本土はいよいよ梅雨景色
小島はとっくに夏の空
水牛平気で細道曲がり
 
 
「昼寝」
 
昼寝するならハンモック
椰子(やし)の太幹(ふとみき)結びつけ
ゆらゆら揺れる海風に
 
 
「インターネット」
 
インターネットは小島まで
地球がはき出す水飴(みずあめ)の
ゆっくり隅々(すみずみ)顔見せて
 
 
「朝日を」
 
海辺の老木椰子(やし)の木は
曲がった腰をピンとたて
この島朝日を初めに見ようと
 
 
「そば屋さん」
 
島のそば屋は庭の中
口数少ないおじさんは
島育ち テレビ見つめて店番を
 
 
「蒸し暑さ」
 
蒸し暑さ気分ゆったり落ち着かせ
母の胎内(たいない)居たときの
遠い記憶がよみがえり
「島の妖精」
 
島の妖精森深く
夏夜の浜辺に現れて
月の光を身にまとい
 
 
「煙」
 
島の煙はタバコの煙
海風森に連れてって
すっと吸い取る熱帯林が
 
 
「ココア」
 
ココアが育った南島(みなみじま)
香りはふるさと喜びで
味もはしゃいで飛び回り
 
 
「島の芸術」
 
小島は芸術満ちあふれ
自然が織(お)りなすものすべて
すべて連なるハーモニー
 
 
「雲」
 
雲はぽっかり海の上
島の少女に見とれてしまい
風から落ちて島に降り
 
 
「雲(続)」
 
小島に降りたふわふわ雲は
胸は高鳴り散り散りと
うっすら海辺の霧となり
「小さなバナナ」
 
島の葉の下バナナの房は
海と話して
色付き答え
 
 
「疲れたときは」
 
白砂熱く寝ころんで
何もなくても砂風呂の
遠くで砕ける波揉(も)まれ
 
 
「昼寝」
 
小島は昼寝がよく似合う
家並み巡(めぐ)る真昼の道は
穏(おだ)やか老婆の横顔照(て)らし
 
 
「雨」
 
南の雨は大粒激しく
雲去れば
雨の姿の陽(ひ)の光
 
 
「ジュース」
 
自動販売機眺めてみれば
南しかない
もの目立ち
 
 
「凧(たこ)」
 
潮風乗って凧昇り
凧さん見晴らす
すべての珊瑚(さんご)
「月」
 
真っ暗海にお月様
椰子(やし)かげ黄色のウサギさん
椰子の実餅(もち)混ぜせっせせっせと
 
 
「北風と南風」
 
北風と南風とががっぷりと
小島の上でぶつかった
互いにもつれて天空へ
 
 
「風のない日」
 
風のない島真昼どき
チョウチョは王様気の向くままに
森の中には音もなく
 
 
「島の人は」
 
島の人一日限りの観光客も
やわらかやわらか柔和な顔の
島の自然が作る顔
 
 
「竜巻(たつまき)」
 
大きな竜巻よろよろと
南海遙(はる)かやって来て小島は回る何回も
小さな青の熱帯魚椰子(やし)の実ちょこんと腰掛けて
 
 
「垣根(かきね)の」
 
垣根は原色花盛(ざか)り
水牛触れつつ
細道曲がり
「立て札」
 
癒(いや)しの小島に立て札あった
姿を見ない老人たちの
心の想いが滲(にじ)み出て
 
 
「体を」
 
島で体をこわしても
いろいろ草が揃(そろ)ってて
自然に任(まか)せりゃそれでいい
 
 
「雨」
 
大粒の雨エネルギー
橙(だいだい)瓦(かわら)をふるわせて
一気に冷やす小さな島を
 
 
「戦争」
 
こんな平和なこの小島
砲弾一つ飛んでこず
防空壕(ごう)もいらなくて
 
 
「南」
 
南は
憧(あこが)れ
この響き
 
 
「梅雨明けて」
 
小島は青空白い陽(ひ)が
草木も鳥も
汗流し
「日時計」
 
真ん中椰子(やし)の木針になり
周(まわ)りは珊瑚(さんご)と島の花
お見事これが日時計に
 
 
「水牛」
 
真昼どき
車を離れた水牛はのんびり木陰で一休み
今日のお客に目を細め
 
 
「水牛さんの独(ひと)り言」
 
このところさっぱり海を見てないなあ
夜になり波の音
牛車も海を回ればいいのに
 
 
「社交家」
 
毎日変わる観光客を
続けて見てる水牛は
島一番の社交家で
 
 
「花」
 
牛車の駅の門に立つ
どこから来るのか分からぬ客に
恥ずかしさ小島の花はよく耐えて
 
 
「コンピューター」
 
この小島
コンピューターは
ひっそりと
「うっすらと」
 
うっすらベールが天から降りて
小島が変身
それは満月波の上
 
 
「小道」
 
小道を辿(たど)り浜遊び
見知らぬ道を辿っていけば
そこにはさっきの牛車駅
 
 
「交通信号」
 
信号この島もちろん無くて
ゆったりぼんやり歩いていても
車なんかは邪魔しない
 
 
「舗装道路」
 
メインストリート
珊瑚(さんご)の砂の白光り
これは贅沢(ぜいたく)黒道よりも
 
 
「水」
 
島の老婆はぽつんと言った
水は大切薬より
ここの島にも時間の流れ
 
 
「ルール」
 
この島ルールは看板に
観光客にも分かるよう
誰にも分かる大らかさ
「火事」
 
小島の火事は移らずに
分厚い葉っぱが火を消して
何もなかった海風吹いて
 
 
「小島にも」
 
南の女神は忘れずに
小さな小島も恵み受け
雨降り風吹き霧与え
 
 
「雪」
 
この小島雪がぱらぱら降ってきて
少しだけ少しだけ
島の花びら白粉(おしろい)ほどに
 
 
「暑さ」
 
うだるようなこの暑さ
心をもみもみ
気だるくさせて
 
 
「霰(あられ)」
 
南の分厚い緑の葉っぱ
霰に打たれて頬(ほお)膨(ふ)らませ
負けるものかと膨らんで
 
 
「木陰」
 
椰子(やし)の木陰は昼寝場所
遊び疲れた子供たち
憂(うれ)いを込めた若者の
「雨」
 
南の雨は大粒で
雲去れば
あっという間にジリジリ照(で)りに
 
 
「乙女」
 
小島の乙女は白砂走る
空を見つめて真っ直ぐに
心の中に何走る
 
 
「一番星」
 
一番星は真上から
眉月(まゆづき)一つ無い空で
くまなく照らす森の中まで
 
 
「青い刺身」
 
南の海は色とりどりの
青い刺身を葉陰で食えば
体が透(す)けて青光り
 
 
「釣り竿(つりざお)」
 
島では釣り竿見なかった
何故(なぜ)かな?
遠くの私は分からずに
 
 
「竜巻」
 
巻き上げながら熱帯魚
のらのら近づき
島まで遂(つい)にブン回し
「おにぎり」
 
夏雲早足流れ過ぎ
大きなおにぎり頬張(ほおば)れば
椰子(やし)の実 見下ろし羨(うらや)ましくて
 
 
「点」
 
椰子(やし)の木陰で居眠りすれば
点が現れ虹の下
みるみる大きく飛行機に
 
 
「人の声」
 
小島の言葉は儚(はかな)くて
大声出しても
木霊(こだま)無く
 
 
「島の植物」
 
お腹いっぱい陽(ひ)の光
分厚い葉っぱでパクついて
いつも満腹幸せそうに
 
 
「トンボ」
 
大きな大きなトンボさん
南の大海風任せ
島は一瞬磨(す)りガラス
 
 
「炭酸ガス」
 
小島が大きく背伸びして
大きな長い欠伸(あくび)した
それを吸い周りの珊瑚(さんご)は大喜びで
「カモメ」
 
空飛ぶカモメは振り返る
小島の浜を一心に走り続ける男の子
背中に黒々橋詩と書かれ
 
 
「黄昏(たそがれ)」
 
海は眠気の霧覆(おお)い
昼の動きはうすら闇(やみ)
おっとり照らすお月様
 
 
「島の葉」
 
島には葉っぱが色づいて
花を象(かたど)る赤い色
数枚併(あわ)せて丸い花
 
 
「ビール」
 
ビール片手に寝ころべば夕日はすでに
海の下海風吹かれ波音聞けば
つまみは何(なん)にもいらなくて
 
 
「台風」
 
珊瑚(さんご)は互いに肩組み合って
椰子(やし)の木隣に手を伸ばし
珊瑚(さんご)の家は戸を閉(と)ざす
 
 
「北極星」
 
ぴしっと北を指し示す
椰子(やし)の葉合間の星光り
南の虫も声細め
「水牛」
 
お客をゆったり楽しませ
木(こ)陰で休む水牛は
島一番の外交官で
 
 
「白砂」
 
よいしょよいしょと白砂掘って
顔を埋めれば
南の香り体いっぱい吸い込んで
 
 
「南端」
 
島の南端浜立てば
ほんわりと何かを告げる
南風
 
 
「星砂」
 
小舟を緑の波間に浮かべ
篩(ふる)いを載せて波任せ
白砂蒔(ま)けば星の砂
 
 
「蜘蛛(くも)糸」
 
海辺の椰子の木蜘蛛糸垂(た)らし
途中に掛(か)かったハイビスカスよ
くるくる舞うよ波の音
 
 
「熱気」
 
熱気は小島をすっぽりと
心の皺(しわ)を揉(も)みほぐし
島の人たち長生きさせて
「空気」
 
夏の空気は赤い花
風に揺れても赤い花
周(まわ)りを包んで花照らし
 
 
「水牛」
 
私の楽しみ一番は
牛車を真昼に引いた後
ホースの行水(ぎょうずい)何よりの
 
 
「ホテル」
 
小島はホテルはいらなくて
小舟で通(かよ)えば波遊び
何時何時(いついつ)までも何時までも
 
 
「葉擦(ず)りの音」
 
葉擦りの音は夕焼けに
海を渡った風さんと
島の精とのひそひそ話
 
 
「新風」
 
小島の老人家籠(こ)もり
眩(まぶ)しい若者観光客に
激しい刺激を避けつつ和(なご)む
 
 
「島の家」
 
島の家 何時(いつ)できた?
珊瑚(さんご)は支える何年も
石の家屋(かおく)と同じほど
「太陽」
 
南の太陽三つある
真夏の海辺を燃えさせて
若者たちに情熱を
 
 
「島の夜」
 
静かな島の真夜中は
島の隅々(すみずみ)何処(どこ)にでも
波の息吹(いぶき)が届いてしまい
 
 
「草地」
 
小さな島でも広々と
たった一頭
島の心を大きな体で
 
 
「空気」
 
空気は同じ何処(どこ)のでも
でもね何処かが異なるよ
この小島
 
 
「深呼吸」
 
島が大きく深呼吸
膨(ふく)らむお腹(なか)の臍(へそ)からは
南の花と熱帯魚
 
 
「船」
 
小型のお船は高速で
ひっきりなしに運んでく
島の活気はお船のおかげ
「うっとり」
 
島の北端(はじ)うっとりと
南端うっとりと東端うっとりと
何から何まで綿飴(わたあめ)の
 
 
「食事」
 
島の食事は特産の
スパイスとても良い香り
特に真夏がよく似合い
 
 
「生み出す」
 
小さな島の周(まわ)りの飛沫
夏の日差しで霧となり
島の生み出す白雲(しらくも)高く
 
 
「夏元気」
 
真夏の空気はぱんぱんに
エネルギー内に秘め
分けて貰(もら)おう夏元気
 
 
「時報」
 
島の裏から船汽笛(きてき)
のんびり気分の時計無し
島の草花食事時(どき)
 
 
「消しゴム」
 
大きな消しゴム流れ来て
島全体を擦(こす)って消えた
それでも島はそっくりそのまま
「黄色の花嫁」
 
波の合間に揺られて花は
白浜ひっそり辿(たど)り着き
隣の島からお嫁入り
 
 
「美しいもの」
 
この島は
美しく美しいもの溢(あふ)れてて
眺めなくても美しさ
 
 
「海」
 
海は確かに生きていて
知らないだけの
別宇宙
 
 
「夕日」
 
夕日は夏の海の上
昼を収(おさ)めて
大きな大きな小島より
 
 
「木の下」
 
木の下潜(もぐ)ればツタの茎
日陰でじっと成長し
いつの間にかに大木覆(おお)い
 
 
「ほろ酔い」
 
夜の白浜ほろ酔い気分
意識しなくて千鳥足
笑って見送る熱帯魚
「海の雲」
 
青い魚が欠伸(あくび)した
黄色い海草吐息(といき)を漏(も)らし
うっすら色づく夏の雲
 
 
「島の音」
 
真夏の太陽ちりちりと
海風淀(よど)んでふうふうと
島の花 はあはあと
 
 
「蝶(ちょう)」
 
蝶は日陰を探して飛んで
見つけた場所は
花びらの陰
 
 
「朝日と夕日」
 
朝日と夕日同時に照らし
この島変わり
お伽(おとぎ)の色映え
 
 
「曇り」
 
曇りの夏はオアシスの
島が静かに休むとき
微(そよ)風島を覆(おお)うとき
 
 
「テレビとラジオ」
 
テレビもラジオも見られるけれど
無くても暮らせる
この小島
「リサイクル」
 
島の自然はリサイクル
人が居なけりゃ
いつまでも
 
 
「福与(ふくよ)か半月」
 
真昼の日差しと裏腹に
夕の涼風(すずかぜ)送るのは
暗いお空の福与か半月
 
 
「朝」
 
寝ぼけ眼(まなこ)の南の花に
そっと頬(ほお)撫(な)で
雌しべに触れて
 
 
「夕焼け」
 
海の波お空も真っ赤(か)
黒みを増した小島さん
ほんのり頬(ほお)染め安らぎ眠り
 
 
「ぼやけた」
 
ぼやけた視界で見る小島
透(す)かして届く光りには
大きな花も混(ま)じってて
 
 
「月のない夜」
 
今日の海には月はなく
この世は音に満ちあふれ
光りと無縁のこの小島
「息」
 
空に向かって息吐(は)いて
光りに押されゆらゆらと
珊瑚(さんご)の砂にまとわりついて
 
 
「声」
 
叫びはあるが吠(ほ)えるもの無く
遠くで見れば
植物性の
 
 
「渦巻き」
 
白砂渦巻き天昇り
黒雲渦巻き地に下り
海面覆(おお)う白霧に
 
 
「缶(かん)ジュース」
 
島の木陰で飲むのがよいか
真夏の陽の下飲むのが良いか
いずれにしてもトロピカル
 
 
「小雨(こさめ)」
 
小雨は降る降る途中で消えて
辿(たど)り着いたは白砂の
弦(げん)をぴんぴん弾(はじ)きつつ
 
 
「古代蓮(はす)」
 
華やかピンクの古代蓮
古代の生活意外にも
艶(なま)めかしくて浮き浮きと
「真昼」
 
島の真昼は食事時
動きが止まり
風止まり
 
 
「夏の湖」
 
二階まで飛沫(しぶき)がかかる双胴船の
ヨットを繰(く)るを間近で見下ろし
飛び跳ね進むスクーター
 
 
「仏の花」
 
仏の花は蓮(はす)の花
大きな大きな桃色の
仏心(ほとけごころ)が少しは分かり
 
 
「詩作」
 
コンスタントに書き続け
明かりが見えて
他のを見渡す
 
 
「線」
 
この小島 線を引くならどこが良い
真ん中東西
似合ってて
 
 
「火照(ほて)り」
 
若者たちの浜遊び
小島は芯(しん)まで熱気がこもり
星の微光で島冷やす
「スニーカー」
 
花付けた珊瑚(さんご)の石垣
夏の陽が白く染め上げ
細道走るはスニーカー
 
 
「節煙」
 
車の中ではタバコは吸わぬ
これが節煙
第一歩
 
 
「ぽつぽつ雨」
 
ぽつぽつ雨は言いたげで
リズムで伝える
天の思いを
 
 
「墨(すみ)」
 
追われた蛸(たこ)さん墨を吐き
海面離れて漂えば
島はすっぽり夕景色
 
 
「チューインガム」
 
チューインガムも進歩が速く
コンビニ並ぶ何十個
いろいろ効能歌いつつ
 
 
「夏の味」
 
夏はぬか漬け
新鮮野菜を揉みほぐし
活躍は酵母と酸っぱい乳酸菌の
「ミント」
 
味か香りか混然と
タバコをやめた体には
すっと染(し)み込む鮮明に
 
 
「蒸(む)し暑さ」
 
ほんとに夏が好きならば
雨上がりじっとり染み込む蒸し暑さ
これの味分からなければ
 
 
「島のクシャミ」
 
月のない夜小島がクシャミ
珊瑚(さんご)離れる熱帯魚
吸い込む息で涼風隅々(すずかぜすみずみ)
 
 
「夕暮れ」
 
黒っぽいもの眠りについて
次は灰色
ずっと起きてる白いもの
 
 
「夾竹桃(きょうちくとう)」
 
盆の始まりその朝に
滑(なめ)らかピンクの花茂り
祖先を迎える暑い日も
 
 
「夕暮れの」
 
夕焼けは見えないが
赤みを増した
日暮れどき
「汗と」
 
汗とミントの組み合わせ
日なたと木陰の組み合わせ
移り変わりの組み合わせ
 
 
「裏道」
 
日が落ちて細い裏道歩いてみれば
忘れた日々が顔を出し
実りが溢れる時代を超えて
 
 
「秋は紛(まぎ)れて」
 
八月中旬朝夕風に
秋の息吹(いぶき)は
確かに混じり
 
 
「コンビニで」
 
夕刻散歩は涼風(すずかぜ)に
それでも滲(にじ)む汗さんは
ちょっとコンビニさらさらと
 
 
「赤とんぼ」
 
カンナの花は橙(だいだい)の
今朝(けさ)の色染め
赤とんぼ
 
 
「水の温(ぬる)み」
 
夕闇に水の温みを
肌で知り
心で知った忍び寄る秋
「逆光」
 
逆光に目を凝(こ)らし
見える景色は
命を帯(お)びて
 
 
「ミント」
 
ミントは美味(おい)しいタバコより
これなら続けて
気にせずに
 
 
「編隊」
 
朝の柳は風踊り
ムクドリ編隊低く飛び
細枝避けて身を屈(かが)め
 
 
「夏」
 
汗かかず
熱気がこもる身のうちに
これが真夏の底力
 
 
「撮影会」
 
真昼のビルの合間にも
乾いた風が迷い来て
モデルさん達 爽(さわ)やかさ風と
 
 
「秋葉原」
 
真夏の熱気を路(みち)流し
パソコン携帯増えたけど
何(なんに)も変わらぬ心意気
「喫煙所」
 
タバコをやめて十日たち
ベンチに座る喫煙所
ここでの話が面白く
 
 
「初鳴き」
 
松の夕方初鳴き聞いた
つくつく法師に誘われ見れば
雲の姿も筋形(すじかたち)
 
 
「二年たち」
 
柳の切り株二年たち
周りの木立もふさふさと
自然にすっぽり新芽も育ち
 
 
「霧雨」
 
台風の気配はどこかと
霧雨に夏の虫の音
落ち着いて
 
 
「中心」
 
大気をふるわす台風も
中心真ん中 眼(め)に入れば
空もうっすら青みを帯びて
 
 
「コンテスト」
 
帰ってこないプリントも
そのうち戻るプリントも
うっすら思いを染み込ませ
「朝露」
 
昨日(きのう)の台風残したものは
早起き朝の
葉の滴(しずく)
 
 
「糠味噌(ぬかみそ)」
 
糠味噌を染め上げる
赤サビだらけの
鉄くず成りたく
 
 
「八月下旬」
 
台風大きな掃除機で
列島すべてを大掃除
どこでも見える秋晴れの
 
 
「もうすでに」
 
昼の暑さに気をとられ
夜の空気はもうすでに
秋の虫さん元気よく
 
 
「雨雲」
 
雨雲は
空が重くなりすぎて
一挙に進めるダイエット
 
 
「酎(ちゅう)ハイ」
 
生まれて初めて飲んでみた
新発売の酎ハイを
甘ったるくて 気分一新飲む方が
「朝の蝉(せみ)」
 
赤松に蝉を探して
涼風(すずかぜ)と
みんみんみーんも木の鳴き声に
 
 
「ヨット」
 
水も暮れ空も暮れ
小さなヨットが群れなして
白帆だけくっきりと
 
 
「醤油(しょうゆ)」
 
ひなびた湖畔のレストラン
キャベツを変える醤油の味に
銘柄尋ね求めゆく
 
 
「軽井沢」
 
苔(こけ)日陰 針葉樹ヤブ蚊(か)無く
強い日射しに風爽(さわ)やかで
ジーンズギャルがのし歩き かってのギャルも伸び伸びと
 
 
「露二つ」
 
朝のコオロギふるわすものは
ピンと伸ばした薄羽と
細い葉っぱの露二つ
 
 
「虫の音(ね)」
 
淀(よど)みなくつながる音に
しばらく独唱
場所を変え
「八月三十一日」
 
朝夕秋が顔のぞかせて
土の乾きを
静める朝雨
 
 
「八月末の夜」
 
草原(くさはら)虫の音満ちあふれ
夜でも白い空の雲
秋と夏との波打ち際(ぎわ)で
 
 
「七色」
 
蜘蛛(くも)糸も
七色光る
秋の朝
 
 
「九月の夜祭り」
 
周(まわ)りにいれば虫の声
遠くのねぶたも駆けつけて
真夏の夜風が巻きあがり
 
 
「祭り」
 
ローストビーフをパクツキながら
近くで始まる
ベリーダンスを離(はな)れて眺め
 
 
「パレード」
 
フラダンス ベリーダンスに沖縄踊り
Tシャツだけの二十歳の群衆
熱気と元気がひときわ爽(さわ)やか
「シオカラトンボ」
 
曇りの朝日の白光(しろひかり)
シオカラトンボは何聞き惚(ほ)れる
それはまばらな朝コオロギの
 
 
「雨粒」
 
オレンジカンナの朝の雨
何を写すか覗(のぞ)いてみれば
花びらお肌と白い空
 
 
「秋空」
 
高くとまったシオカラトンボ
羽透(す)かし
青空映(うつ)し白雲映し
 
 
「稲の匂い」
 
刈り取り半分秋の稲
匂いくっきり日を浴びて
田圃(たんぼ)の一番華(はな)やぐときは
 
 
「秋の花」
 
葛(くず)の香りに誘われて
菊芋(きくいも)黄色の鮮やかさ
そばにはひっそり萩(はぎ)の花
 
 
「秋の夜風」
 
気温を下げる虫の声
昨日と違う秋の風
虫と風とが相まって
「クローバー」
 
六年前に種まいた
大きな草が刈り取られ風にそよいで
細々つながる長い道
 
 
「赤松」
 
大きな赤松虫食いの
切り倒されて輪切りにされて
虫の音あふれるその中に松の香りが主人公
 
 
「吾亦紅(われもこう)」
 
九月の朝の吾亦紅
レンズを寄せて見つめれば
確かに深い紅(くれない)の
 
 
「小雨(こさめ)の夜」
 
小雨でも
秋の虫鳴き止(や)まず
羽濡れて潤(うるおい)い秘めて空に向け
 
 
「台風の」
 
余波は柳を踊らせて
黄色の豚菜(ぶたな)を目だたたせ
ツクツクホウシを絶え間なく
 
 
「嵐の前夜」
 
嵐の前の夜の雲
ほんわり白く西急ぐ
虫の音(ね)流れの背に乗って
「蝉(せみ)とカラス」
 
蝉は飛び立つ赤松の枝
じーじー声をカラス追いかけ
ジグザク飛んで逃げまどい
 
 
「台風の朝」
 
朝の虫の音いつものままで
雨も降らずに
黒雲のスピードだけが教えつつ
 
 
「台風一過」
 
黒雲と茜(あかね)の雲とのせめぎ合い
虫は少しも傷つかず
昨日(きのう)の夜の続きを奏(かな)で
 
 
「飛行機テロ」
 
ドラマと現実混じり合う
同じ空でも今日の朝
雲は動かず青空の下
 
 
「秋の夜」
 
台風後の星は澄(す)み
台風耐えた虫の音は
風のない夜 秋の夜
 
 
「秋の深まり」
 
黄色の豚菜(ぶたな)も綿毛つけ
ころころコオロギ滑(なめ)らかに
風がなくても涼しくて
「湿度」
 
九月の雨はしっとりと
暑さヒンヤリ
感じさせ
 
 
「玉光(たまひかり)」
 
花の目立たぬ小さな草は
葉っぱいっぱいコロコロと
昨夜の雨が花飾り
 
 
「松とキジ」
 
松の横枝雉(きじ)留まり
濡れた両羽身繕(みづくろ)い
朝にぽっかり日本画の
 
 
「ほろ酔いの」
 
ほろ酔い響く虫の音は
水音消して
大きくうねり
 
 
「台風の風」
 
松の枝さん掃除して
枯れた松葉をアスファルト
一足早い秋景色
 
 
「閉めきった」
 
閉めきった
部屋の中まで
虫の声
「剪(せん)定師」
 
芝生には松の小枝が散らばって
見上げてみれば台風は
見事な見事な剪定師
 
 
「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」
 
山間(やまあい)の三角田圃(たんぼ)に実った稲は
畦(あぜ)道埋める赤い花
見送られ刈り取られ
 
 
「秋雨(あきさめ)前線」
 
秋雨前線
残したものは
緑の芝生の白茸(しろきのこ)
 
 
「誰のため」
 
秋の虫さん誰のため
体の芯(しん)から湧(わ)きだして
鳴き続けたくて鳴き続け
 
 
「サラウンド」
 
夜の虫の音 全方向に
朝はコオロギ鳴きあって
前 横 後ろとところ変え
 
 
「高音で」
 
雌(めす)よぶ声の高音は
虫でなくても
情熱迫(せま)り
「藪(やぶ)の香り」
 
刈られた藪をふかふかと
朝に歩けばふくよかな
藪の香りに目を覚(さ)まされて
 
 
「雲の合間の」
 
雲の合間の星光(ほしひかり)
大きいけれどぼんやりと
地上の虫の音聞きながら
 
 
「山栗(やまぐり)」
 
タイヤに踏まれて実をだして
小ぶりの山栗のびのびと
とっても甘くて買うのより
 
 
「藪(やぶ)の跡(あと)」
 
足下(あしもと)ふかふかふんわりと
しだれ柳と合歓(ねむ)の木さんが
辺(あた)りの風景見渡して
 
 
「キジの家族」
 
キジの家族の朝ご飯
四羽そろって雌日芝(めひしば)食べて
羽で飛ばずに駆け足逃げる
 
 
「夜の雨」
 
九月の雨は夜の雨
ガラス戸たたく雨しずく
音で伝わる雨気分
「巣作り」
 
キジバトが小さな松の葉陰から
林の下に繰り返し
行って戻るは巣作りか
 
 
「広告写真」
 
ユニクロの大きな写真
どこでもある顔
親しみやすさもユニークで
 
 
「段差を持って」
 
段差を持って秋気分
ホオジロちちちと口ごもり
カラスの声にも秋が来た
 
 
「コスモス畑」
 
秋晴れの山は近くて
河川敷コスモス一面広々と
夕日を浴びて山と花
 
 
「鳶(とび)」
 
秋空のどこが一番青いかを
見渡す中に
鳶高く一直線を
 
 
「丸みを帯びて」
 
閉め切った部屋の中
聞こえる虫の音
丸みを帯びて
「秋の湖」
 
乾いた空気が水面覆(おお)い
白いボートが切り裂いて
そこに見えるは秋の山
 
 
「スニーカー」
 
朝の散歩は草むらの
スニーカー通して指知る
秋の露
 
 
「九月末」
 
真昼夏
日暮れは秋の
九月末
 
 
「独唱」
 
九月の末日あと四日
独唱目立つ
朝のコオロギ
 
 
「響く」
 
車より
街道(がいどう)響く
虫の声
 
 
「朝の鈴虫」
 
朝の鈴虫細々と
露の葉っぱを
震(ふる)わせて
「田圃(たんぼ)」
 
周(まわ)りは刈り取り皆終わり
雑草抱える稲穂あり
生き生き映(は)えるその共存は
 
 
「キジの朝ご飯」
 
育った子供も伴(ともな)って
お互い距離は保ったままで
それぞれつつく雌日芝(めひしば)を
 
 
「九月末のキンモクセイ」
 
蕾(つぼみ)は薄いクリーム色で
いついつ香るか待ちわびて
部屋まで流れて見れば橙色(とうしょく)花開き
 
 
「秋のもの」
 
朝の青空柿かじり
風さん雲も
秋のもの
 
 
「車の暖房」
 
朝夕は
車の暖房手を伸ばす
こんな日もある九月末
 
 
「春を」
 
草原に
春を見つけた
九月末
「雨音と虫の音」
 
ぽつぽつぽつぽつりーんりん
雨音虫の音 二重奏
小部屋の中までキンモクセイが
 
 
「朝雨」
 
遠くの山に雲降りて
裾(すそ)がめくれりゃ
秋の紺(こん)
 
 
「秋の夜雨」
 
この前のキジの家族はどこ眠る
まだまだ緑の葉は多く
十分乾いた塒(ねぐら)もあろう
 
 
「栗拾(ひろ)い」
 
モズの初鳴き見上げれば
雲の合間は秋の空
足下(あしもと)気づいて栗拾う
 
 
「アンテナポール」
 
台風いくつも耐え抜いた錆(さび)止め塗られたアンテナポール
多くの風と対話して
塗料のとれたグラスファイバー筒形(つつがた)の
 
 
「紫峰(しほう)」
 
柿をちぎってかじりつつ
澄んだ朝日に遠くの山は
赤みを帯びた紫がかり
「満月」
 
松の枝
どこに満月のせようと
足を運んで決める位置
 
 
「朝露」
 
芝を歩けば朝露が
ソックス透(とお)して
秋教え
 
 
「山栗(やまぐり)」
 
人の手かけずに育ったものは
小さいながらも丸々と
買ったものより甘さ広がり
 
 
「朝雨」
 
朝雨に
原っぱ立木を
傘(かさ)にして
 
 
「子孫かな」
 
元居た家を秋の日に
黄色のコスモス咲き誇り
私の蒔(ま)いた子孫かな
 
 
「朝霧」
 
元居た家を訪れりゃ
朝霧ほんわり辺(あた)りを包み
夢の国から呼び戻し
「撮影会」
 
夏が顔だす秋の日に
バラの合間のモデルさん
棘(とげ)を避けつつほほえんで
 
 
「思い出写真」
 
思い切っての広角で
パンフォーカスの
情報量を
 
 
「柳の大樹」
 
柳の大樹は自信が溢(あふ)れ
草原構える三脚や
私たちにも力を与え
 
 
「自然」
 
人がゆっくり休んでいれば
自然にかえる
藪(やぶ)がゆっくり飲み込んで
 
 
「虫の音続く」
 
今日の夜空は赤らんで
風は寒くて雨混じり
それでも虫の音衰えず
 
 
「赤ハツタケ」
 
手にとって
二人(ふたり)老婆も笑(え)みこぼれ
秋の芝生の露に濡(ぬ)れ
「星の光に」
 
星の光に冬光(ふゆひかり)
夜風はまだまだ
秋風だけど
 
 
「今年の枝は」
 
柳のてっぺん今年の枝は
秋の雨風(あめかぜ)観衆に
植物踊りはやはりこの枝
 
 
「団栗(ドングリ)」
 
団栗二つを手のひらに
くるくる転(ころ)がし秋気分
帽子があるのと無いのがそろい
 
 
「ホオジロ」
 
雨上がり朝の空気を通り抜け
ホオジロ二羽が
鳴きあって
 
 
「十月中旬」
 
虫の音は
二ヶ月たって
深みを増して
 
 
「秋雀(すずめ)」
 
秋晴れ朝の雀さん
いつもよりずっとずっと高い塔
鳴き声朗(ほが)らか元気よく
「冬は」
 
初めは星に冬が来た
風もなく今日の夕べは
鉛直にふんわりふんわり降りてきた
 
 
「雄鶏(おんどり)の声」
 
雲のない丸い秋空
雄鶏の声
立ち上(のぼ)る
 
 
「栗のイガ」
 
スニーカー側面通して
足痛く
そこには割れた栗のイガ
 
 
「秋の午後」
 
秋晴れの午後の三時は
風も時間も止まってしまい
のんびりのんびり陽が移動
 
 
「夕焼け」
 
一日 快晴秋の日は
夕方西に雲わいて
夕日と共に秋の日飾り
 
 
「茸(きのこ)探し」
 
遠目には
タンポポ落ち葉も
茸さん
「パラグライダー」
 
降りる場所には旗幟(はたのぼり)
空には二つ悠々(ゆうゆう)と
ここは近くに山無いはずに
 
 
「練習」
 
雲のない草原で
一筆た 一筆た ホオジロ二羽で鳴きあって
秋の深まり醸(かも)しだし
 
 
「年輪」
 
最近切られた赤松の
朝露まみれて数えたら
私の年と比較して
 
 
「夕暮れ風に」
 
夕暮れ風に冬の顔
遠くの山は秋の色
モズも姿をあらわにし
 
 
「土の優(やさ)しさ」
 
土の優しさ味わいたいなら
森の小道に分け入って
足の裏側感じれば
 
 
「秋ヒバリ」
 
ただの一羽の秋ヒバリ
春と変わらず囀(さえず)って
刈り取り終わった田の上を
「朝寝坊」
 
風無く雨降り今日の朝
静かに垂(た)れた柳さん
ゆっくりゆっくり朝寝坊
 
 
「夜の雨上がり」
 
日が暮れて雨上がり
外灯踊る道の上
コオロギ伴奏コロコロと
 
 
「朝空」
 
一面雲の朝の空
それでもいろいろ表情が
雨を見送る宴(えん)会の
 
 
「冷雨に」
 
冷雨に一日打たれても
虫の音消えずに鳴き続け
健気(けなげ)な虫さん心打たれて
 
 
「朝のススキ」
 
朝の光の若ススキ
そこから飛び散る
秋の精